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LNEWS2024年問題アンケート調査分析

2023年04月07日/コラム

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7割が対策中、運賃交渉に奔走
一歩踏みこんだ連携・協業進む

LNEWSは物流の2024年問題について、読者を対象に対応状況や具体的な対策についてアンケート調査を行った。調査結果によると、回答者の7割以上が何等かの対策を実行・計画しており、最も多かったのは「運賃交渉、輸配送コストの見直し」で2割強、一方で懸念事項としては「人材・人手不足」がトップだった。人手不足は業界全体の課題だが、運賃確保や労働環境の改善は物流事業者だけでは実現が難しい。とはいえ、2024年は待ったなし。労働時間を短縮するために地域・業種の枠を超え、一歩踏み込んで連携・協業する動きもみられた。

アンケートの調査期間は2023年3月1~13日、LNEWS登録者を対象にメール配信で実施、351件の回答を得た。回答者の業種は物流事業者・子会社が50%、荷主が35%、このほか行政、IT・情報等。企業規模は、中小企業が最も多く37.8%、上場企業は31.4%、非上場企業が30.8%。

2024年問題とは、働き方改革関連法によって、2024年4月1日から「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることにより生じる物流業界の諸問題のこと。具体的には、トラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されるほか、2023年からは時間外労働時間が60時間を超える超過分の割増賃金がこれまでの1.25倍から1.5倍になる。具体的な対策を行わなかった場合、国の試算では2024年には輸送能力が約14%(約4億トン)不足、その後も対策を行わなかった場合、約34%(約9億トン)不足すると試算されている。

Q1. 2024年問題対策、7割が計画中または実行中

<対策状況概況>
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まず、「2024年問題」の対策状況については、「具体的な方策を計画中」が163件(47.4%)で最も多く、「実際に方策を実行中」が85件(24.7%)で、全体の約7割が計画・実行していることが明らかとなった。一方で「全くしていない」は96件(27.9%)だった。企業規模でみると、「実行中」という回答は上場企業が最も多く、「計画中」または「全くしていない」は、中小企業が最も多かった。

<対策状況(業種別)>
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業種ごとの内訳をみると、対策を「計画中または実行中」と回答したのは物流事業者が最も多く、次いで荷主(製造業その他)、同(卸・小売・サービス業)、物流子会社、IT・情報、設備・デベロッパーと続く。

<対策をしない理由>
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「全くしていない」理由については、「何からすればいいかわからない」が最も多く54.9%で、半数以上を占めた。次いで「必要がない」26.7%、「対策をする余裕がない」12.8%と続く。対策をしない理由としては、問題意識の低さや、業界構造に起因する理由があげられた。

■「対策をしない」理由

・担当部門の問題意識が薄い(荷主:製造業その他)
・配送会社に配慮するも相手方の意識も低い(荷主:卸・小売・サービス業)
・元請業者が対応しない限り、自社内で対応するのは不可能(物流事業者)
・製造会社なので路線便各社の対応に基づく必要がある(荷主:卸・小売・サービス業)
・経営陣が必要ないと判断(日配業者)

Q2. 2024年問題対策、物流事業者は「運賃交渉」に奔走

<計画、実行内容>
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2024年問題対策について「計画中または実行中」と回答したなかで、最も多いのは「運賃交渉、輸配送コストの見直し」で全体の21.4%(複数回答)。次いで「労働時間の管理」が16.9%、「関係会社、パートナー企業との連携」12.2%、「雇用の強化、人材育成等」10.6%などとなっている。一方で、「AIなどスマート技術の導入」は5.4%、「倉庫作業の自動化」は6.9%となっており、比較的少数だった。

■「運賃交渉、輸配送コスト」の見直しについて、業種ごとに具体的な取組みをみると、物流事業者は荷主、顧客へ運賃改定を交渉・実施する動きが多くみられた。

・荷主へ高速道路の実費精算の要請。運賃改定要請(物流事業者 中小)
・運賃値上げと待機時間削減交渉(物流事業者 非上場)
・単純な運賃値上げでは上げれば運べるのかというプレッシャーになる。燃料高騰、人件費高騰部分に関する値上げは実施(物流事業者 上場)
・数年前から給与体系を変更し残業時間に左右されない評価給とし、運賃交渉、荷役交渉は常に行っている」(物流事業者 上場)
・各顧客へ10%値上げを実施(物流事業者 上場)
・倉庫の集約による構造改革(荷主 非上場)
・他の業者への切り替え検討(荷主 非上場)
・木曜・日曜日休配、週3日配送を実施し、物流費の見直しを実施中(荷主:卸非・小売・サービス 上場)
・チャーター車の積載量アップ、拠点間移動時は基本満載運行(荷主:製造業その他 非上場)
・荷主の立場で、従来のサービスレベルを維持することが困難であること、仮にそれを維持するためには追加のコスト負担が見込まれることを経営幹部にレクチャー中(荷主:製造業その他 上場)

■「労働時間の管理」では、労働時間を可視化するもの、また待機時間の改善や輸配送の効率化などの回答があった。

・通信型デジタコ導入(物流事業者 中小)
・全従業員の労働時間把握、管理(1分単位)(物流事業者 中小)
・拘束時間遵守に向け待機時間改善交渉中(物流事業者 上場)
・倉庫待ち時間の削減(荷主:製造業その他 上場)
・トレーラーでのスイッチ輸送(物流事業者 中小)
・地場仕事の強化(物流事業者 中小)

■「関係会社、パートナー企業との連携」では、地域や業種を超えた連携や協業がみられた。ハード・ソフト両面において、一歩踏み込んだ交渉や、課題解決に取り組んでいる。

・M&Aの強化(物流事業者・中小)
・新拠点を契約に加え、中継拠点の協力会社を調整中(物流事業者 中小)
・拠点設置を中小企業で提携していく(物流事業者 中小)
・顧客と連携して長距離輸送分に関する新拠点設定を計画(物流事業者 上場)
・協業できるところはライバル関係なく提携をスタート(物流事業者 上場)
・委託物流会社との検討会会議の実施(荷主:製造業その他 非上場)
・協力会社とワークショップ開催、互いの改善点(効率化や自動化、工数削減)のアイデアを出す取り組みを実施(荷主:製造業その他 上場)

■その他

・モーダルシフト、W連結トラック導入等による長距離輸送の削減、効率化(物流事業者・上場)
・大口・長距離輸送に関しては、船舶および鉄道輸送を導入を計画(物流事業者 上場)
・長距離輸送についてRORO船の活用検討(荷主:製造その他 上場)
・冷凍食品のモーダルシフト(荷主:製造その他 非上場)
・異業種共同物流の推進(IT・情報 中小)
・省人化システム(物流事業者 上場)
・出荷オーダー締切時間の見直し(物流事業者 上場)

Q3.「人材、人手不足」懸念するも、対策は後手に

<2024年問題の懸念事項>
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また、2024年問題の影響について、最も懸念していることを尋ねたところ、「人材、人手不足」が最も多く96件、次いで「経費、賃金など金銭的な圧迫」が62件、「荷物が運びきれない」が59件、「荷物が送れない、届かない」48件となった。

業種別でみると、物流事業者では「人材、人手不足」が多く、荷主(製造業その他)では「荷物が送れない、届かない」が、荷主(卸・小売・サービス業)では「人材、人手不足」と「経費、賃金など金銭的な圧迫」がそれぞれ最多となった。

一方で、Q2.の2024年問題の対応策として、「雇用強化、人材育成等」をあげた企業は10.5%(4位)。具体策としては、「雇用強化、ジョブローテーションによる業務の偏りの解消」(物流事業者)、「倍の人数を求人に出している」(同)「自社HPのリニューアルやSNS活用、Webオンライン教育の導入」などのほか、「中途採用の強化」(物流子会社)、「大型免許取得の推進(自社ドライバーの育成)」(荷主:卸・小売・サービス業)など、業種を問わずドライバー確保に注力している様子がうかがえた。

その他、主な懸念事項は以下の通り。
・安定的な車両の確保ができなくなること(物流事業者)
・発送作業集中によるミス(IT・情報)
・運賃及び長尺重量物の荷物の送れない届かない積み残し(物流子会社)
・運送業者のパフォーマンスダウンとコスト変動(荷主:製造業その他)
・一時的にブラック企業にドライバーが移動する。正直にやっている事業者が追い込まれる可能性がある(物流事業者)

Q4. 国の支援で求めることは「法律面の整備」が圧倒的

<国に求める支援>
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国の支援では何が必要か、という質問に対して、最も多かったのは「法制面の整備」(54.9%)、次いで「金銭面での支援」(26.7%)、「人員面での支援(外国人対応等)」(12.8%)の順。物流事業者、荷主をはじめほとんどの業種で「法制面の整備」を求めるという回答が多くみられた。

国も本腰、2024年を商機に

働き方改革関連法とは、正式名称を「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」という。 違反した事業者は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」を科される可能性があり、物流に携わる企業は、これまでの商習慣や仕組みを改善するための取り組みが必要となる。

2024年4月まで1年をきっているが、アンケートでは、これを商機と捉え対策を実行する企業、何からすればいいかわからないという戸惑いの声、地域や業種の枠を超え一歩踏み込んだ交渉や連携を行うなど様々な回答があった。2024年問題を解決する方法は1つではないが、人手不足を懸念しながらも、足元の運賃交渉や労働時間管理に取り組む傾向がみてとれた。労働環境の改善は雇用促進に繋がるものでもある。

コロナ禍を経て、物流は社会インフラの1つとして、その重要性が見直されている。国では3月31日、岸田総理が第1回目の物流の革新に関する閣僚会議を開催。2024年問題に対し、府省の枠を超えて取り組み、6月上旬をめどに緊急に取り組むべき抜本的・総合的な対策を政策パッケージとして取りまとめることを明らかにした。

■内閣府/2024年問題、岸田総理「6月上旬めどに総合対策」指示
https://www.lnews.jp/2023/04/p0407501.html

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