富士通と日本貨物鉄道(JR貨物)は3月11日、持続可能な鉄道交通社会の実現を目指して協業し、鉄道車両のメンテナンス業務を支える「車両管理システム」を全国の鉄道事業者向けに共同で展開すると発表した。
同システムは、JR貨物の鉄道車両メンテナンスにおける課題とノウハウをもとに富士通が開発したもので、メンテナンス業務の省力化と作業品質の平準化を実現することができる。
具体的には、鉄道車両や部品の状態、メンテナンス計画から状態確認、処置対応の記録などの情報を一元管理し、現場で行う検査内容の記録業務をタブレットなどを活用して電子化することで、鉄道車両のメンテナンス業務の省力化、検査データに基づく検査周期の最適化を実現する。
また、検査記録表の基本様式作成機能により、検査種別の新規追加や検査項目の変更が柔軟かつ容易にでき、新しい法令や新型車両に対する追加対応などの迅速化を実現。加えて、次回検査期限の自動計算やアラート機能なども実装しており、作業品質の精度向上に寄与することができる。
同システムは、標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」をコンセプトとしており、ベースとなる基本システムのマスタに個社ごとのデータを設定することで展開を図る。富士通がシステムの導入を行い、JR貨物が自社の稼働実績をベースに車両情報の初期投入や、検査記録表の基本様式作成支援など、システム導入時のサポートを実施する。これにより、個社向けにシステムを一から開発することなく、短期間でリーズナブルなシステム導入を可能にするとともに、導入企業の負担を軽減し、システムの運用定着化を実現する。
JR貨物は、トラックによる貨物輸送のモーダルシフトの担い手として、多くの人的リソースを必要とする鉄道車両のメンテナンス業務の省力化を模索していたところ、富士通とともに同システムを開発。紙ベースの検査修繕情報の電子化と、システムによる検査情報の一元管理によって、大幅な管理業務の工数削減、システムの一貫性の確保による法令違反の予防、定期検査周期の見直しによるメンテナンスコストの削減など、高い導入効果を実証している。
両社は、JR貨物の事例を鉄道事業者の共通施策であると捉え、同システムを共同展開することで、鉄道車両のメンテナンス業務を省力化し、鉄道業界の労働力不足等の課題解決に寄与していくとしている。