各々参加の事情は異なるが次世代物流に本気
―― そもそも、各社と組んだ理由とは。
秋葉 GROUNDとアッカ・インターナショナル、Hacobuについては当然ながら各々事情が異なります。GROUNDの場合ですと、例えばロボット会社に多額の出資をして影響力を持つということは当初から考えていません。ロボットとマテハンの違いはAIを持つかどうかということだと考えれば、AIは収集したデータをかませれば持続的な発展を遂げます。しかし、ロボットのハードの部分はあるとき全く別の発想・技術革新で一変してしまう可能性があります。その開発・生産設備を整えるのに、影響力を持った出資をしていれば、我々はそこに縛られてしまうのです。そこで、ある意味緩衝材的な役割としてGROUNDという会社と組んだわけです。
―― 商社やマテハン会社といった選択肢は。
秋葉 普通に考えると商社の選択肢もありますが、総合的な力はあったとしても、物流に関してどれくらい意識して、次世代の物流オペレーションを考えているのかはわかりません。マテハン会社さんも自社で販売する商品を多く抱えています。
―― 自動搬送ロボットの会社もこのところ多くなってきました。
秋葉 GROUNDの宮田社長は楽天物流時代を含めて、欧米での物流事情にも詳しく、物流に関しては深い知識を持っています。自ら立ち上げたGROUNDで彼なりにチョイスしたのがGray Orangeのバトラーでした。つい最近も、ニトリさんの西日本通販発送センターでファーストユーザーとして国内初導入しました。自動搬送ロボットを世に認知せしめる意味で期待すべき企業です。今はまだ認知の段階ですが、本格化する前にGROUNDとしては次の一手を打ってほしいと思っています。
―― Hacobuについては。
秋葉 出資した要素はいくつかあります。我々は全く新しいことをしようと考えているので、例えば運送会社なり物流事業者がこういうシステムがあったら良いだろうと考えてその経験値の上で開発している会社だったなら組むことはなかったと思います。佐々木社長は物流の外側の人間で、ある時たまたま物流会社のコンサルをしていた時に、その物流会社が全くシステム化されてないことに驚き、そこでこの世界に入ってきたわけです。
―― 同様の会社もありますが。
秋葉 佐々木社長は365日、物流のことばかり考えている人です。他社製品と見た目のシステムは同じかもしれませんが、そのトップがどのような考えでどれだけ真剣に考えているかは非常に重要です。我々は全く新しいアプローチで次世代物流を構築しようとしていますから、このような企業と組むことは大きな意味があります。さらに、大企業と違って、ベンチャー企業の場合、トップの考え方は現場と一致しますからね。
――アッカ・インターナショナルについては。
秋葉 アッカ・インターナショナルは全株式を取得しました。100%だと加藤社長がやる気をなくすのでは、という意見がありましたが、全く逆です。アッカは撮影から始めて、ささげ業務、ALICEというシステム開発などを行っています。加藤社長とは1年ほど前から頻繁に会って話をしてきましたが、そこで私が感じたことは「先が見えた」ということです。先が見えたというのは、開けたというニュアンスです。大きな絵を描くことができたのに、個人オーナーの企業なので限界を感じていたと言います。これは、投資にかかる費用や信用問題、決済面で大企業相手だとさまざまな問題が発生します。私が、全く新しいアプローチで次世代物流プラットフォームを構築しようと話すと、ぜひ一緒にやりたいということになったわけです。
―― アッカ・インターナショナルというと自動搬送ロボットのGeek+との関係はどうなりますか。
秋葉 全く問題ありません。ロボットはその時点の物流環境に応じてユーザーの最適なものを選べばよいわけで、例えばこのロボットしか扱わないとなれば、当然我々の目指す新しい物流プラットフォーム開発の手足を縛ることになります。私も加藤社長も全く違和感はないですね。
―― となると、他社の物流施設に入居することも問題ないと。
秋葉 確かにアッカ・インターナショナルもGROUNDも他社の施設に入っていますが、問題はないです。当然、大和ハウス工業も物流施設を開発しているので、そこに入居してもらうのがベストですが。
物流を人依存の体制から新しいアプローチで
―― 新しい次世代物流のプラットフォーム構築の狙いは。
秋葉 狙いについては、まず、大和ハウスグループの物流に関する考え方があります。それは、お客様の暮らしに寄り添い、お客様の「住」をトータルでサポートする姿勢が全ての根幹です。その上に立ってダイワロジテックの役割は、ロジスティクスでのさまざまな問題を解決する最新のテクノロジーで、新しいアプローチでプラットフォームを構築することが狙いとなります。
―― 新しいアプローチとは何を指しますか。
秋葉 例えば欧米の物流現場と日本の物流現場では歴然とした格差があります。「モノ」を投げるなといったモラルから教育しなければならないことも欧米では多いのです。ところが日本の現場では、基本的に同じです。教育程度の違いはあっても、管理職もパートさんも、「モノ」を投げることはありません。教えなくても一定レベルの人がいるのが日本です。フレームワークスではWMSを約20年前から開発していますが、日本独自の進化をしており、欧米とは全く違った進化を遂げています。
―― 違った進化とは。
秋葉 欧米のWMSの変更は、パラメーターを変えればできるという発想です。これは人を信用していない、1指示1作業の構造がベースで構築されています。ところが日本は人依存でプロセスを作っていくため、センターごとに違ってくるんですね。これは一つの企業内のセンターでも同様です。センターが違えばオペレーションが違うことが普通に起こり得るのです。パラメーター変更ではなく、カスタマイズする。ずっと人依存でやってきた。よく言うと「カイゼン」、悪く言うと「属人性」ですね。
―― 人依存が物流の課題だと。
秋葉 ここにきて人手不足と言われています。人を募集しても全く採れなくなっています。採用できても時間単価が上昇し続けている。そこで、安易に外国人に頼ろうとしていますが、そもそも今までさまざまな経験に培われてきた人の中で、教育程度もモラルも違う、文化も違う、全くベースが違う人達と一緒に仕事すること自体も課題です。その過程には多くの困難を伴うことになります。全く違うアプローチと言ったのは、人ありきの発想、例えばこれまで人がやっていた部分をロボットに任せるという、ある部分をロボットなり機械に置き換えていく発想ではなく、全く逆の発想が必要です。
―― 逆の発想とは。
秋葉 人にやってもらう発想ではなく、逆にロボットやマテハンありきで考え、どうしても人間にしかできない部分を人間が行うようにする。プロセスをきめ細かく切ることで、本当に人間じゃないとできない業務を再整理することだろうと思っています。例えば、ネット通販での返品に対する再検品があります。ほとんどの場合、色やサイズが違うだけなので売れる可能性の高い商品です。この場合、ほとんど人の手でやっていました。ただ、人間の力が必要なのは再販するためにどんな処理をする必要があるかの判断だけです。それ以外のところは人間以外、つまり機器類でできることです。人間ありきでプロセスを考えるのではなく、人間しかできない部分を極力細かなプロセス単位で抽出して業務プロセスを再構築することです。
―― ある意味究極的な自動化、そして一気通貫のシステム構築を目指していると。
秋葉 そうですね。そういうところから進めていきたいと思います。そのためには、自らオペレーションをやってそこから課題を抽出して解決していくことを見せていかないと、次世代ロジスティクスのプラットフォームをサービス提供できないことになります。お客様から、大和ハウスグループで物流オペレーションができるのかと問われれば、やって見せて納得してもらわなければなりません。
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