楽天は7月17日、「Rakuten EXPO2018」を開催し、包括的な物流サービスを提供するワンデリバリー構想の実現に向けた取り組みを本格化させると発表した。
楽天の三木谷浩史会長兼社長は「現在、ECの物流面では人手不足、再配達の問題、配送料の値上げ等様々な問題がある。これまで宅配便はCtoCの場合問題はなく、これをBtoCの仕組みに乗っけることで無理が出てきたものと考えられる。ワンデリバリー構想は商品の注文からお届けまでの仕組みを一気通貫で整備すること。楽天にとって大きな挑戦となる。これはやりたいことというより、やらなければならないことだ」と話した。
インターネットの発展に伴い、EC(電子商取引)は現代の生活に必要不可欠な社会基盤として浸透している。一方、物流量が増大していることから、国内の物流業界において、不在再配達の増加や人手不足などが社会問題化している。また、EC店舗においては、昨年からの宅配総量規制や宅配運賃の値上がりの影響から、安定した店舗運営やユーザーへの質の高い配送サービスの提供が困難になっている。
こうした背景から、楽天は「楽天市場」の出店店舗を対象に、商品の保管から配送までの包括的な物流サービスの提供をさらに加速することで、安定したEC店舗運営に寄与する。
<Rakuten EXPO2018で物流拠点を説明する三木谷会長兼社長>
具体的には、商品の保管から出荷までの物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」の物流センターを全国に拡大する。省人化・自動化の倉庫機器を導入した効率的な物流センターを運営し、楽天の購買データやAI技術の活用による受注予測、在庫情報の連携を通じて最適な在庫配置を行うことで、配送スピードの向上および倉庫作業コストと配送コストの削減を目指す。
さらに、ユーザーに商品のお届けを行う楽天独自の配送サービス「Rakuten-EXPRESS」の配送エリアを全国主要都市へ拡大していく。現在も東京23区内で楽天ブックス等の配送で行っているが、これを全国に拡大するもの。
同時に、「楽天市場」のお届けに関するUI/UXを見直すことで、受け取り場所や日時指定、お届けスピードの選択肢の拡充や、複数注文を一度でまとめてお届けするなど、より利便性の高い配送の実現を図るとしている。
また、自社物流機能の整備に加え、関連する様々な企業との連携を通じて、「楽天市場」に関わる物流を一元的に管理する包括的な物流網を構築していく。利便性の高い新しい物流サービスを構築することで、EC店舗と顧客の多様なニーズに応えていくとしている。
楽天は、「楽天スーパーロジスティクス」と「Rakuten-EXPRESS」の拡大に加え、外部の関連企業と連携し、荷主への集荷サービスや物流拠点間の幹線輸送などの様々な物流機能を拡充していく。また、一連の施策を通じて、宅配会社やパートナー企業とともにEC物流の健全化を図っていく。具体的には、楽天が大型物流センターを運営し、荷量集めや方面別仕分けを行うことで、宅配会社とのワークシェアリングを促進する。
楽天スーパーロジスティクスの一例として9月1日から適用する新料金表を発表しているが、楽天の矢澤俊介執行役員は「在庫をすべて楽天スーパーロジスティクスに預けることを前提としたもので、コンセプトとして、店舗の物流費用を含めた金額よりは安く設定した。将来的には、2020年までに全店舗荷物を楽天が受託することをめざす。もちろん、これまで同様店舗に在庫して、都度楽天の倉庫に送ることも可能」と話した。
また、ユーザーへの宅配ステータス通知や「置き配」などの不在再配達を減らす取り組みを推進し、さらにそのような仕組みを外部にオープンにしていくことで、外部企業の生産性向上と配送量向上に寄与していくとしている。