ヤマト運輸と、韓国でロボット開発を行うWATTは8月22日より、大規模マンション向けの自動配送ロボットを活用した実証実験を開始した。
<対面配達用自動配送ロボット(左)と、置き配用自動配達ロボット(右)>
実証実験では、大規模マンションでの新たなラストワンマイルモデル構築に向け、WATTが開発する建屋フロア間自律走行ロボットによる、マンション内での荷物運搬を行う。
昨今、都市部や再開発エリアでは1000戸を超える大規模マンションが増えていることを受け、配送における人員不足や、配送時間の指定といった顧客への要望に応えることを目的として、今回の実証実験に至ったという。
なお実験は、千葉県浦安市のプラウド新浦安パームコートで1か月ほど実施。また10月にも、東京都品川区のプラウドタワー目黒MARCにて同様の実験を2か月程度実施する予定だ。
自動配送の流れとしては、常駐スタッフがスマート宅配ボックスに荷物を預け入れると、居住者にメールが送信される。居住者が受取方法(対面または置き配)・時間指定を行うと、配送ロボットがスマート宅配ボックスから荷物を取り出し、配送を開始する仕組みだ。
<自動配送ロボットによる配送シミュレーションで荷物を受け取る様子>
ロボットはアームを用いてチャイムを鳴らすことができ、出てきた居住者はメールで受け取ったパスワードでロボットを開錠すると、荷物を受け取れる。置き配の場合は荷物を玄関前に配置し、配送を完了する形だ。
アームを使用することで、マンションのセキュリティを解除し、エレベーターのボタンを押して乗り込むことも可能なため、高い階層の住民にも問題なく配送が可能だ。
今回の実験では、配送ロボットをマンション内の環境でどの程度効率的に行えるのか、障害物をロボットが回避できるか、などを検証する。また、居住者が自動配送ロボットの運用を受け入れられるか、といった社会的な面も検証に含まれている。
<ヤマト運輸 久保田 亮 宅急便部長(左)、エリアマネジメント推進課 宮原 陽平 担当課長(右)>
同日に行われた記者向けの説明会では、ロボットのデモンストレーションのほか、ヤマト運輸 久保田 亮 宅急便部長と、エリアマネジメント推進課 宮原 陽平 担当課長が登壇。
実証実験および今後の自動配送ロボットの展開について、久保田 亮 宅急便部長は「顧客の受け取りたいタイミングで荷物を受け取れるのが一番良いサービスの形。これに汎用性の高いロボットで応える形は今まで無かったと思う。顧客に利便性を感じてもらえるはずなので、実証化・実用化に向けて進めていきたい。こういった技術で業界全体の課題に対応できれば。再配達の削減にもつながる」と述べた。
また、今後の課題については「顧客にとって何が重要なのか、逆に何が問題になるのか、その辺りを突き詰めていきたい。居住者に気を遣わせるシーンが先ほどの実証でもちらほらあった」とする一方で、意気込みについて尋ねられると、「私としてはワクワクしている。その時間に合わせて顧客がいるかどうか、その時間に改めて届ける、ということにロボットの力を借りて実現することに可能性を感じている」と答えた。
今後は、首都圏や関西圏を対象に実証地域を広げ、2026年中の実用化を予定しており、安全面も含め検証を進めていく。また、今後実施されるほかの実証では、他社の荷物を取り込むことも検討しているとしている。
■実験概要
場所:プラウド新浦安パームコート
住所:千葉県浦安市高洲8-1
実施期間:2025年8月22日~9月24日
総戸数:550戸(分譲型)
規模:地上14階
場所:プラウドタワー目黒MARC
住所:東京都品川区西五反田3-3-2
実施期間:2025年10月23日~12月10日
総戸数:301戸(分譲型)
規模:地上32階/地下1階
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