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JLL/物流投資市場は活況を呈しているが、テナントは受難時代か

2019年05月27日/調査・統計

ジョーンズラングラサール(JLL)は5月21日、「活況呈する物流投資マーケット―テナント受難の時代が到来?」という内容の記事を発表している。

これは、JLLの専門家の見解を掲載しているJLLのHP内「トレンド&インサイト」の記事の一つで、ここではその概要のみ掲載する。

それによると、「Eコマースの普及拡大に伴い、物流施設のテナント需要が急伸している。投資額が大きく、賃料水準が安定している数少ない有望投資先として、オフィス主体の投資家をはじめ、物流投資市場に新規参入が相次いでいるためだ。一方、投資市場は活性化しているものの、テナントが置かれる状況は「将来的な賃料値上げ」が予想され、受難の時代が待ち構えている」というもの。

JLL日本 リサーチ事業部のレポート「Japan Property Digest 2018年第4四半期」によると、2018年通年の物流施設に対する投資額は9400億円、前年比43%。第4四半期のみにフォーカスすると3140億円で前年同期比595%を記録。「モノ不足」の影響で各セクターの投資額が伸び悩む中、その成長率は他を圧倒している。

これまでオフィス等の他アセットを主戦場としていた投資家も物流マーケットに続々と参入し始めた。日系デベロッパーでは日鉄興和不動産が2017年11月に物流施設開発事業参入を発表した他、東京建物が2018年5月に新規参入を発表。また、外資系デベロッパーではGLPが2018年12月、物流不動産開発ファンドとして日本最大となる「GLPジャパン・ディベロップメント・パートナーズⅢ」の設立を発表した他、プロロジス、ラサール不動産投資顧問、ESR等が代表的な存在。

2017年~2020年にかけて物流施設の新規供給量は合計123万坪に及び「大量供給」が続いているのが現状だ。しかし、物流施設のテナントコンサルティングを担当するJLL日本 マーケット事業部 山田 剛氏によると「ワンフロア1万坪を超える多層階の大型物流施設が次々と開発されているが、竣工前に大部分が成約し、既存施設も空室が枯渇している状態。

しかし、投資マーケットの活況を素直に喜べないのがテナントだ。物流マーケットに詳しいJLL日本リサーチ事業部 谷口 学氏は「開発用地の仕入れ価格が入札等で高騰しており、デベロッパーは募集賃料を高く設定せざるを得ない」と指摘。

例えば、2010年頃では賃貸需要が旺盛な湾岸エリアの物流適地の取得価格が坪当たり50万円ほどだった。しかし、現在は湾岸エリアよりも人気が劣る内陸部でも坪当たり100万円を超えてくる。そのため特に新築物件に関しては賃料がじわりと上がっているという。

こうした状況を受けて、山田氏は「既存テナントも賃料値上げに苦慮するようになる」と警鐘を鳴らす。現在の物流施設は定期借家契約がスタンダードであるため、契約終了時に改めて再契約しないといけない。投資家へのリターン最大化をコミットする上場REITやファンドであれば賃料値上げを躊躇しないことが予想される。特に賃料のボラティリティが大きいオフィスを主戦場としてきた投資家にしてみれば「物流施設もより高く賃借してくれるテナントを探す」ことに労力を厭わないと考えるはずだ」とする。

近年の物流施設には庫内業務の自動化やロボットの導入など、マテハン設備に多額の投資を行うケースが増えており、減価償却期間が経過するまで移転したくてもできないテナントの事情もある。加えて周辺住民を大量雇用する物流施設では雇用継続の観点から簡単に移転できないのが実情だ。

山田氏は「大型マルチ物流施設の定借普及率はほぼ100%で、かつ既存施設に空室がほとんどない今、少なくとも契約期間が満了する1年前にはオーナーと賃貸条件の交渉を開始すべきだろう」と助言する。一定規模を超える場合は新築物件しか移転の際の選択肢がない上、自社開発や専用センターの一括賃借など、マルチテナント型物件の賃借以外の選択肢を検討するならば建築期間を考慮して、契約期間が満了する2年前ぐらいから様々なシナリオを検討し、契約満了時に備えたほうがよさそうだ、と指摘している。

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