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一貫パレチゼーション実現へ
JPRは標準化と共同化目指す

2023年12月08日/物流最前線

20231129jpr1 icatch - 物流最前線/日本パレットレンタル 二村 社長トップインタビュー

現在ではコンテナ同様、物流作業に欠かせない機器となっているパレット。パレット自体はシンプルな道具だが、輸配送で利用されるとその効果を十二分に発揮する。ただ、課題は業界・業種により様々なパレットが存在することと、パレットの回収にかかる複雑さだ。そのパレットの標準化とパレット利用の共同化を推し進めようとしている企業が日本パレットレンタル(JPR)だ。2024年問題で再び脚光を浴びているパレットだが、その将来性に大きな可能性を感じて入社し、30年の営業歴を経て、2023年9月19日付で社長に就任したばかりの二村篤志社長に2024年問題とレンタルパレットの現況と将来への展望を伺った。
取材日:11月9日 於:JPR本社

<二村 篤志 社長>
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<JPRのデポの様子>
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人々を重労働から解放
パレットの将来に期待

――  二村社長がこの業界に入られたきっかけとは。

二村  1993年入社なので、もう30年くらいになります。実は大学生の時に宅配便の会社でアルバイトをしていました。バブル全盛の時代でしたね。そこで長い時には夕方5時から朝方の7時まで働いていました。当時はどこでもそうでしょうが、機械荷役などは皆無の環境でした。どんどんコンベヤーから荷物が届き、それを積み込まねばなりません。20~30㎏ある荷物も多く、タイヤだと一人で400本ぐらいを積み込んでいました。それも、今の人が見たらびっくりするくらいのスピードです。

――  その当時の過酷な労働の話はよく聞きますね。それでもかなり給与面ではよかったと。

二村  確かに、当時として時給は破格でしたけど、ある時ぎっくり腰を患ってしまいました。周りを見回すと、ぎっくり腰は当たり前、骨折や怪我をしている人の多さに唖然としました。そんな時、出会ったのが当時のJPRの広告でした。当時フォークリフトもパレットも知っていましたが、パレットに載せた荷物をフォークリフトで運べば、こんな過酷な荷役もなくなるのではないか。人々を重労働から解放できると、労働の過酷さを経験して初めて気づきました。つまり、このパレットは必ず将来普及することになるから、今後成長する企業に就職することができると考えました。俗に表現すれば「食いっぱぐれのない企業」に就職できるということです。

――  それでは新卒で当初からJPRを就職先に選んだわけですね。

二村  そうですが、当時大学生に配られたリクルートの本の中にJPRは掲載されておらず、当然四季報にもありません。そこで電話帳で調べて、大阪営業所に連絡して訪れました。小さな営業所で若干不安になりましたが、成長が期待できる企業ということに確信があったので、面接で「今採用してくれるなら、すぐに入社します」と言い切ったことで無事採用されました。

――  入社されてからはどのような業務を。

二村  当初の赴任地は北海道でした。前任者から引き継ぎを受けるような業務もなく、ひたすら飛び込みで営業活動をする毎日でした。当時、本社から月次で営業資料が送られてきます。営業担当者一人ひとりの成績が分かるようになっていて、たくさん担当を持っている人は何ページもあるのですが、当時の私は1ページ。ある意味モチベーションを上げるきっかけにはなりました。

――  ノルマがあったのですか。

二村  もちろん会社の目標はあるのですが、ノルマもなく成績が悪くても責められることもない会社でした。とにかく、北海道では飛び込み営業を地道に続けていくことに徹していました。それがある時大きな転機を迎えます。記憶にあるかもしれませんが、1993年、冷夏になってコメ不足になったことです。

――  冷夏でコメ不足になり、社会全体が混乱していました。レンタルパレットとはどのような関係が。

二村  天候不順により冷害となり、日本で栽培されていたイネの記録的な生育不良から生じたコメの食糧市場の混乱となりました。当然北海道も凶作となりコメ不足になりました。タイ、米国から緊急のコメ輸入があり、以前飛び込みで営業していた企業から驚くほど多くのレンタルパレットの注文がありました。名刺を捨てないで持っていてくださったのだと、感激しました。その次の年は大豊作で、引き続きパレットを利用していただきました。約7年間北海道で勤務して、その後も日本各地に転勤したかったのですが、現在まで本社勤務が続いています。

<2024年問題のJPRの特設サイト>
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<11月12日のパレット日に向けた「数字にみるJPRのパレット」>
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2024年問題解決に貢献する
標準化と共同化が課題

――  物流業界では「2024年問題」が喫緊の課題となっています。国の「物流革新緊急パッケージ」(政策パッケージ)でも「標準仕様のパレット導入や物流データの標準化・連携の促進」が挙げられています。

二村  2024年問題に関することは、以前から当社でも積極的に進めていたことですし、特にこのために何かをするということではなく、今まで以上にレンタルパレット普及に努めたいということですね。50年続けてきているので、その間に新しい運用の仕組みを開発したり、物流効率化のためのITツールも様々なものを作ってきました。これらは独立したものではなく、レンタル事業の基盤の上に生まれたものです。2024年問題に対しては、一貫パレチゼーションと、そこで得られた経験やノウハウを通じて解決策を提示していこうとしています。

――  一貫パレチゼーションが求められていると。

二村  実はパレット自体はほとんどの物流現場に普及しています。普及が遅れているのは、パレットを活用した輸送なのです。海外では「一貫パレチゼーション」(パレットのまま企業間で輸送を行う事)が当たり前ですが、日本では業種や業態により様々なパレットがあり、その都度積み替えという手荷役が発生するわけです。パレットの効率的な側面を打ち消しているんですね。当社の調べでは、同じパレットをリレーして使うことで、荷役にかかる時間は手荷役に比べ約1/4で済みます。さらに、商慣習からトラックドライバーが手荷役をすることが多く、荷待ち時間と手荷役がトラックドライバーの長時間労働に繋がっていることは明らかです。

――  2024年問題解決にパレットが貢献すると。

二村  そういうことです。そのためには、どうしても標準化と共同化が必要で、当社も50年間、このことを強く標ぼうしてきました。最近よく出る言葉にフィジカルインターネットという言葉がありますが、これも標準化が前提ですね。パレットによる輸送を行うためには、パレットサイズの標準化と運用の「しくみ」の標準化が必要なことは、すでに1960年代に指摘されていました。

――  なぜ日本では標準化が遅れたのでしょうか。

二村  日本では、パレットの標準規格が1970年に制定されましたが、公的なパレット運用機構は実現しませんでした。さらに、「しくみ」の重要性に対する認識が醸成されなかったことが、日本でパレット輸送が進まなかった一因と考えられます。

――  産業の中で「運ぶ」という要素があまり重要視されていなかったのでしょうか。

二村  アメリカやヨーロッパのように、早くから物流、ロジスティクス(兵站)を中心に据えてモノづくりをすると、標準化は当たり前になります。効率よく前線に物資を供給するシステムをつくるためには標準化が必要という発想です。一方、日本はモノづくり大国として、以前は生産立国とも呼ばれていました。モノを作ることに関しては世界一と呼ばれた時代もあります。職人気質というか、良い製品を次々に生むという効果はありましたが、それを効率的に運ぶ、届けるという部分に考えが至っていなかったというのはとても残念です。商品に合わせてパレットも多種多様になっていった歴史ですね。しかし、今回の2024年問題や物流クライシスを克服したら、日本は物流立国、あるいは、物流先進国として、再び世界で存在感を発揮できるかもしれません。

――  標準化というのは、これまでの商慣行を含めて、業界の壁を越えるためには多額の費用と時間が必要になります。

二村  確かに標準化を進めるためには相当額の投資が必要になるでしょう。しかし、パレットのような物流の基本的な部分の標準化は、社会全体に対して大きな価値を還元してくれると私は思います。単に手荷役作業を解消するだけではありません。標準パレットでユニット化された貨物とデジタル化された物流データによって、物流の生産性は飛躍的に向上するはずです。

先行して標準化に投資してきた企業もありますから、公平性の観点も必要となるでしょうが、こうした基礎的な部分への投資が促進されるような政策にも期待したいです。

<「X-Rentalオープンプラットフォーム」>
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<共同輸送を可能にするサービスTranOpt(トランオプト)>

――  標準化と共に、共同化についても、物流事業者の共同配送や、異業種間の共同配送も盛んになってきました。

二村  パレットレンタル業界でも、当社とユーピーアールさんとで「X-Rentalオープンプラットフォーム」(クロスレンタルオープンプラットフォーム、以下「XROP」)に関して、取り組みを進めています。

――  「XROP」の具体的な内容とは。

二村  物流容器の循環型運用に必要な3つのサービスを提供します。まず1つが共通IT基盤としての、X-Web(クロスウェブ) サービスです。これは共同利用・運用をサポートするWebアプリケーションサービスです。共通の拠点マスタとユーザIDを使用し、DXを実現する多様なソリューションと連携するものです。2つ目が人的リソースのX-Support(クロスサポート) サービスです。企業を超えた問い合わせ対応サービスで、各種手続き等のデジタル化により高品質なサポートを提供します。そして3つ目が輸送力のX-Logi(クロスロジ)サービスです。これが回収・納品の運送サービスおよび貸出・返却・保管・メンテナンスなどのデポサービスになります。レンタル利用のコスト削減と利便性向上が可能となります。

――  物流の共同化に関して強化している取り組みは。

二村  「TranOpt(トランオプト)」という名称で、企業と企業をマッチングし、共同輸送を可能にするサービスを展開しています。おかげさまで参加企業も増え、実際の共同輸送が始まっています。レンタルパレットを介して、様々な業種、地域の企業をつないできた事業の特性を活かして、共同輸送の推進にも貢献したいという取り組みなのですが、これまでパレットではお取引のなかった企業にも参加いただき、より多様なマッチングが実現するようになってきています。

<二村社長>
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<JPRレンタルパレットの市場規模>
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パレットレンタルトップシェア
標準化と共同化に注力

――  最後になりましたが、JPRの設立時から現在の会社概況についてお聞かせください。

二村  当社の設立は1971年。社名通り、パレットレンタルの会社としてスタートしました。「私たちの住む社会を、もっと豊かにする原動力となる」「人々を重労働から解放する」といったことが設立当時からのポリシーになります。言い換えれば、物流の近代化、パレチゼーションをどんどん進めていくという理念を持ってやってきた会社です。これは50年間変わっていません。現在では、国内トップシェアのレンタルパレット会社に成長し、JIS規格のT11型の運用を特徴としています。

――  利用客はどのような業種でしょうか。

二村  加工食品・日用品製造業や物流事業者が中心です。これらの顧客と、食品・日用品卸売業、スーパー、コンビニ、ドラッグストア等の小売業をつないでいます。規模的には、年間約5000万枚のパレットを出荷しています。売上は2021年度で約273億円となっており、この数字にはレンタル収入のほか、納品回収等の運賃、物流ソリューションの販売等も含まれています。

――  パンフレットを見ると、パレット以外の商品も数多く扱っています。

二村  基本的にパレットに関わる周辺機器、物流機器は扱っていますが、あくまでもパレットレンタルを普及させる中で派生してきたものです。営業している中で、顧客から「JPRは物流に関する機器は扱ってないの」と問われることが多く、やはりその声に応えたいということから始めたものです。今ではかなりの種類になっており、ECの販売サイトも展開しています。

――  今後ロボット等の展開も物流ソリューションの展開に関わってきますね。

二村  そういうお話があっても不思議ではありません。もちろん当社でロボットが作れるわけではないので、メーカーさんと連携ができればいいと思っています。

――  現在営業拠点やパレットデポの数は。

二村  営業拠点として、オフィス・分室が東京を含め9か所。パレットデポは約60か所を配置しています。

――  直営デポ、サテライトデポとありますが、その違いは。

二村  パレットデポは、直営デポと呼んでいる中核施設が14か所と営業倉庫や物流事業者にお願いしているサテライトデポからなります。パレットデポの運営は委託という形で全国のパートナー企業の力をお借りしています。この他、パレットの納品・返却や、共同回収にかかる運送をお願いしている運送パートナー企業がいらっしゃいまして、一部ではデポ、運送の両方の仕事をお願いしているケースもあります。年間約5000万枚に及ぶレンタルパレットの循環は、弊社事業に共感していただいているパートナー企業なくしては成り立ちません。

――  ところで、社長業ということでストレス等も大変なのではないですか。

二村  ストレスはあまり感じないですね。野球が好きなので、社内の野球チームにも所属していますし、プロ野球を見るのも好きです。愛読書は司馬遼太郎の「竜馬が行く」です。坂本龍馬については、昨今いろいろな解釈がされており、歴史的に正しいかどうかは別にして、竜馬の目標はあくまでも海援隊で世界を相手に貿易することだったんですね。幕府を倒して、政府の要人になるのが目標ではなく、その先を見据えていました。決して明治維新がゴールではなかったのです。最初に私が話した「人々を重労働から解放したい」という目標の過程がレンタルパレットの普及と効率的な運用であって、決してそれ自体が最終目標ではないのです。今後「重労働から解放」できるような先進的な物流システムを創り出すことができれば、世界にロジスティクス先進技術で貢献していけると思っています。

――  世界を見据えた展開に今後も期待します。ありがとうございました。

取材・執筆 山内公雄・近藤照美

<二村社長>
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■プロフィール
氏名:二村 篤志(ふたむら あつし)
生年月日:1969(昭和44)年6月8日生まれ
出身地:兵庫県
略歴
1993(平成5)年3月 近畿大学 商経学部卒業
1993(平成5)年4月 日本パレットレンタル入社
2008(平成20)年4月 流通戦略営業部 流通営業課 課長
2016(平成28)年10月 流通営業部 部長代理
2017(平成29)年4月 流通企画部 部長
2018(平成30)年9月 TSUNAGUTE 取締役(兼任)
2018(平成30)年10月 物流企画部 上席部長
2019(平成31)年1月 執行役員
2019(令和1)年6月 取締役
2023(令和5)年9月 代表取締役社長

■日本パレットレンタル
https://www.jpr.co.jp/

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