帝国データバンク(TDB)は4月5日、人手不足倒産の動向調査(2023 年度)を発表した。
それによると、2023年度の人手不足倒産は313件となり、前年度の146件から倍増。統計として遡れる 2013年度以降でこれまで最も多かった。新型コロナ感染拡大前である2019年度の199件を大きく上回り、過去最多を大幅に更新した。
懸念されてきた「2024年問題」が到来した。労働環境の改善に向けて長時間労働を是正し、働きやすい職場を整えるものだが、従業員の増員が難しいなかで生産性向上などに対応しきれず労働時間が削られれば、人手不足は一層の深刻化が予想される。
この4月は、時間外労働の新たな上限規制が適用されることで、人手不足による機能不全が懸念される「2024年問題」に注目が集まる。その対象業種である建設業は94件、物流業は46件とそれぞれ過去最多となり、既に事態は深刻。社会インフラとして欠かせない両業種は、人材募集や生産性向上など早急な対策を迫られている。
足元では建設・物流業の人手不足割合は7割前後で推移し、全体(52.4%)を大きく上回る。人手不足感が高止まりし、緩和する兆しは見られない状況下で時間外労働の上限規制がスタートしたことを踏まえると、人手不足倒産は今後も過去最多を更新する可能性がある。
両業種は資材・エネルギーなどのコスト高騰に直面している一方で、価格転嫁率は全業種平均と比較して実施できていない実態も浮き彫りとなっている。価格転嫁が思うように進まなければ、人材募集に欠かせない賃上げの原資確保も難しい。今春は大手企業を中心に賃上げが相次いだ一方で「中小企業には逆風」との声も聞かれるなか、業界全体で人材の確保・定着に向けて厳しい局面が続きそうだ、としている。
人手不足倒産/2024年問題で過去最高の163件、2年連続で更新