「2024年問題」から1年、帝国データバンク(TDB)が4月4日に公表した、2024年度の人手不足倒産動向調査結果によると、従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする人手不足倒産(法的整理、負債1000万円以上)は、350件と過去最多だったことがわかった。前年度(313件)の人手不足倒産も、2013年度の集計開始以降で最多となっていたが、それをさらに上回る結果となった。
業種別では、建設業が111件(前年度比+17件)で最も多く、初めて100件を上回り、全体の約3割を占めた。次いで多かったのは物流業の42件。前年からは減少(同-4件)したものの、引き続き多くを占めた。
両業種ともに以前から深刻な人手不足の影響による倒産が多発していたが、2024年4月に時間外労働の新たな上限規制が適用された「2024年問題」を受けて、人手不足倒産が引き続き高水準で発生し続けている。
足元では人手不足解消へ、賃上げに向けた動きが活発化しており、政府も最低賃金を2020年代に全国加重平均1500円へ引き上げると表明したことなどから、今後も賃上げ機運はさらに加速しそうだ。
さらに、よりよい待遇を目指す転職者も増加傾向にあり今後、人材獲得競争はますます激化することが予想される。
こうした背景からTDBでは、「賃上げ余力を有していない小規模事業者を中心に、『賃上げ難型』の人手不足倒産が高水準で推移する」と見込んでいる。
また賃上げの原資を捻出するためのカギとして挙げているのが「価格転嫁」。しかし受注競争が厳しい業界において価格転嫁は容易ではない。
調査によると、実際に全業種平均の価格転嫁率は40.6%(100円のコストアップに対して40.6円を売値に転嫁できた計算)だったのに対し、建設業は39.6%、物流業も32.6%と厳しい状況がうかがえる。
TDBは「価格転嫁率の調査を開始した2022年当時より上向いてきたものの、『価格転嫁を取引先に説明する際に、モノの値上がり分であれば納得されやすいが、賃上げ目的だとなかなか受け入れてもらえない』との声も聞かれる」という。人手不足倒産を避けるためには「価格転嫁→賃上げ」という流れが実現するかが指標の一つとなる、と分析している。
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