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ヤマト、西濃、福通/地元企業に宅配委託、秩父市で共同配送開始

2024年06月03日/3PL・物流企業

秩父市生活交通・物流融合推進協議会は6月3日、秩父市内でヤマト運輸、西濃運輸、福山通運の3社による共同配送サービス「おむす便」の提供を開始した。

<ヤマト運輸の営業所に集合した3社の配送車両>
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<配送を担う地域企業へ荷物を受け渡す物流3社のドライバー>
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おむす便では、秩父市内にあるヤマト運輸の影森営業所に3社の荷物を集約。地元の事業者が3社の荷物を市街地から離れた山間地区「大滝地域」の配達先へ宅配する。

これにより、物流3社の配送を効率化し、2024年問題への対応や、業界の人手不足、山間地区での低い積載率といった物流課題を解消することで、持続可能な物流の実現を目指す。また、地元事業者をラストマイル配送に起用することで、地域経済の活性化にも寄与する。

<スマホ型の端末を使って伝票のバーコードを読み取る地元企業の担当者>
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配送状況の確認には、ゼンリンがヤマト運輸の協力を得て開発した各社の荷物の配送状況を一括管理する「共同配送システム」を活用。荷物に貼り付けられた伝票のバーコードを配達担当者がハンディ端末でスキャンし、各種情報をシステムに登録すると、情報がクラウドを通して共有され、各物流事業者がシステム上で荷物の受け付けや持ち出し、受け渡しといった状況を確認できる。

おむす便では、午前と午後の1日2回の配送を実施。普通便のほか、クール便や代引き・着払いの荷物も取り扱う。

配送を担う地元企業の「栃ふさ」は、大滝地域に拠点を構え、宿泊施設やレストラン等の運営を手がけている。配送には、市街地へ弁当を届けた戻り便を活用するなど、業務負担を増やさずに配送を行えるようオペレーションを工夫した。

6月3日に行われたデモンストレーションでは、大滝地域宛ての荷物を積んだ物流3社の配送車がヤマト運輸の影森営業所で合流。3社の荷物を栃ふさが受け取り、大滝地域にある道の駅まで配送した。

<道の駅大滝温泉のスタッフに荷物を手渡す栃ふさの配送担当者>
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<おむす便の概要>
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大滝地域は、秩父市街地から車で30分ほどの距離にある。約39万m2の山間地に20か所の地区が点在し、約520人が生活しているが、若年層を中心とした都市部への人口流出により過疎化が進行しており、生活交通や物流といった生活インフラの維持が課題となっていた。

秩父市では、こうした山間地区での課題解決を官民一体で解決することを目指し、2021年に秩父市生活交通・物流融合推進協議会を発足。山間地域での物流・公共交通ネットワーク「秩父モデル」の構築に向けて実証実験を重ね、このたび、物流分野での取り組みとして、おむす便のサービス提供を開始した。

協議会では、2022年9月にヤマト運輸、西濃運輸、福山通運を含む物流5社によって、共同配送の実証実験を実施している。おむす便では、この実験結果をもとに課題を抽出し、共同配送システムの採用や、荷物の集約場所等の見直しなどを経て、事業化が可能な体制を構築した。

<ヤマト運輸 永野 裕哉 東松山主管支店長>
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宅配を手がける物流企業が、ラストワンマイル配送を異業種の地元企業へ委託する試みは、全国でも珍しい。

この取り組みについて、協議会の参画企業の1社でもあるヤマト運輸の永野 裕哉 東松山主管支店長は、「今後も山間地で持続可能な物流を実現していくためには、自社や物流会社だけでの取り組みでは限界がある。地域や他業種の協力も得て、限られた力を有効に活用していく必要がある」と、理由を説明。

また、「地域に根差した企業を配送パートナーに迎えることで、住民の方が安心してサービスを利用することができる。今後、サービスを継続・拡大していくためにも必要だ。そのために、しっかりと配送をサポートしていく」と永野氏。

今後、おむす便では、個人宅への集荷や、スーパーマーケットのベルクと協力した買い物支援サービスの提供など、事業を拡大していく予定だ。

<左からヤマト運輸 永野 裕哉 東松山主管支店長、北堀 篤 秩父市長、ゼンリンモビリティ事業本部 吉村 英樹 部長>
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市役所で開かれた記者会見では、北堀 篤 秩父市長が挨拶で、約5年にわたる協議会での取り組みを経て、共同配送サービスをはじめとする3つのサービス(共同配送、遠隔医療、市内の交通・気象・イベント情報等を提供するダッシュボードシステム)の提供を開始したことを報告するとともに、今後は2024年度中にも道の駅を起点としたドローン物流の試験提供を開始する方針を示した。

共同配送システムの構築や、共同配送の全体とりまとめを手がけたゼンリンからは、モビリティ事業本部の吉村 英樹 部長が登壇。「秩父市での取り組みで、システムの構築、共同配送のノウハウ、物流事業者とのパートナーシップを築くことができた。今後は、同様の課題を抱える全国の自治体に、共同配送システムを水平展開していきたい」と抱負を語った。

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