商船三井は2月27日、ロシア連邦極東開発省極東投資輸出庁(ロシア極東投資輸出庁)と、北極海航路と極東ロシアの発展に向けて協業を進めることを目的とした覚書を締結したと発表した。
ロシア極東投資輸出庁と協業することに合意するに至った背景には、北極海航路の玄関口であるロシア極東地域の地理的重要性が増していることがある。
商船三井は、北極海航路を通じた世界初の大規模エネルギー資源輸送プロジェクトである「ヤマルLNGプロジェクト」に参画し、同プロジェクト向け砕氷LNG船の第一船の運航を、北極海での砕氷航行試験を経て、3月末から始める予定。
ヤマルLNGプロジェクトの主要株主であるロシア民間最大のガス生産販売会社ノバテク社と、カムチャッカ半島沖合いで新設するLNG積替え基地の事業化調査も進めている。
北極圏には豊富なエネルギー資源(天然ガス、石油、石炭など)が存在しているが、これまでは輸送手段がなく資源の活用に制限があった。
しかし、砕氷型の輸送船の開発・竣工によって、北極圏からの海上輸送によるエネルギー輸出が商業的に可能となり、北極圏ではヤマルLNGプロジェクトに次ぐ新規プロジェクトの開発も進められている。
日本を含むアジアのエネルギー輸入国にとってはエネルギーの安全保障上、調達ソースの選択が広がることは歓迎でき、北極海航路を通じたさらなるエネルギー貿易量の増加が見込まれる。
また、欧州・アジア間での貿易に際して、北極海航路は、従来のスエズ運河を経由する航路と比して航海距離が短いことから、輸送時間・コストの低減、CO2排出削減を見込めるため、エネルギー資源に限らない貨物輸送量全体の伸びも期待される。
ロシア極東投資輸出庁は、北極海航路の開発を含む各種プロジェクトの推進を支援している。同庁のレオニド・ペトゥコフ長官は「ロシア極東投資輸出庁は、商船三井が北極海航路を通じて日本やアジア諸国への貨物輸送を推進していくことを期待し、両者は北極海航路のインフラストラクチャーに関する投資誘致を共同で行っていく。ロシア極東投資輸出庁は商船三井が取り組むプロジェクトを支援していく」と述べている。
商船三井は、今後成長が見込まれる北極海航路運航でのノウハウ、リソースを蓄積し、グローバルな顧客ニーズに応え、また、これら案件の推進を通じてロシアと日本の経済活性化、ロシア・日本両国間の友好関係の発展に寄与できるよう取り組んでいくとしている。