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物流現場大変革期に果たすDHLサプライチェーンの挑戦

2019年07月30日/物流最前線

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変化する物流環境にDHLは貢献する

——  急速に変化する物流の大変革期にドラスティックな対応が必要ということですね。

ゴー 現在のように、人手不足、ドライバー不足という根源的な課題を解決するには、思い切った施策が必ず必要になります。その一つに自動化の1つのチャンスとして「ナイト・ロジスティクス」があります。夜間こそ自動化が生きてくるものと思います。倉庫は日中もちろん稼働していますが、自動化技術により、同じような生産性を確保できれば、全体最適が図られ、コスト削減、投資の回収の早期化が実現するのではないかと考えています。配送の部分では、ドライバーの問題があるので、完全自動化はできませんが、顧客と一緒になって、見方を変え、夜の物流を強化していくことを今後実現していきたい。これは、繁忙期になると残業を余儀なくされた従業員の働き方改革にも合致するものと思っています。

——  面白い視点です。実際の取り組み例はありますか。

ゴー アジアの実際のオペレーションでは、店舗への補充を夜の間に当社が棚に並べるところまで担うところもあります。これは、顧客と十分な協力のもと行わなければなりません。例えば、ファッションアパレルの返品に関しても、返品の回収を夜間にまとめて行う、そのために夜間に騒音のない電気トラックを利用するというようにすれば、昼間の道路渋滞問題の解決の一助にもなると思います。日本でも夜間の倉庫作業や配送は既に行っていますが、自動化を取り入れ、顧客との連携を深めることによってさらに促進できるのではないかと考えています。

——  自動化が実現すればさまざまな可能性が生まれてきますね。

ゴー ただ、これを実現していくためには、業界全体、顧客の理解と協力なしでは実現できません。今のままでは物流がパンクするのは目に見えていますので、やはり新しい方策を模索し、挑戦していくことが大切でしょう。

——  実際に具体的に動き始めていますか。

ゴー DHLでは現在4つの分野で自動化に向けたプロジェクトを始動しています。4つの分野とは、コンシューマーリテール、テクノロジー、サービスロジスティクス、医療・医薬品の部門です。近いところでは、この9月か10月に既存の物流倉庫にギークプラスのAGVとGROUNDのAMRを導入する予定です。さらに、来年の1月から3月にかけて、現場に新しいイノベーション技術を導入する予定です。

——  国民の生活からすると、便利になった反面、スローライフな生活に回帰しようという動きもあるようですが。

ゴー あらゆるものが1時間で届くような形は、物流費も大きく跳ね上がりますので、一部の限られた高額品だけになるでしょうね。スローライフなライフスタイルになれば、より、オンラインのショッピングが伸び、エンターティメントや贅沢品のショッピングの要素が増えるかもしれません。物流においても、ライフスタイルが変わり、人々の中に余力ができると何をするのか、何が増えるのかを常に考えていくことはとても重要です。そこから、物流の新しいチャンスを見いだせます。

——  イノベーション・デーでは、ヤマト運輸が導入する予定の「ストリートスクーター」を展示していました。

ゴー 実際、DPDHL(ドイツ)のストリートスクーターの社員が、弊社の日本のオフィスの一画にオフィスを構えています。環境に優しく、音の静かな電気トラックですから、ナイト・ロジスティクスに利用するには最適で、普及の速度が早まるものと思っています。ストリートスクーターの保守部品の物流については、DHLサプライチェーンが関わることとなります。

——  日本着任1年ということで、慣れてきたものと思いますが、ストレス等は。

ゴー 実は、ドローンを飛ばすことが趣味で、週末などに海や山に出かけてドローン写真を撮っています。ストレスは吹き飛びますね。それに、撮影した写真を眺めると、物事の見方や考え方が変わります。まさに視点が変わるということです。ドローンから見る角度によって、例えば富士山もさまざまな表情を見せてくれますし、私自身も立ち位置を変えて、物事をさまざまな角度から見ると本当の全体像が見えてきます。

ただ、ドローンを庫内作業で活用することに関しては、現段階では限定的だと思っています。一度、倉庫内で実証実験しましたが、精度が100%でないと使えませんね。オーストラリアでは、ミーアキャットと呼ばれる首が伸びて作業するロボットをDHLで開発しましたが、棚を全てスキャンして棚卸し作業を行うことができるので、非常に効果的でしたね。

——  DHLサプライチェーンの今後は目が離せませんね。

ゴー ありがとうございます。新しい倉庫の完成には時間がかかりますが、その間にも世の中は動いています。変化する環境の中でも、DHLは顧客のみならず政府の発表したソサエティ5.0にも協力し、日本のロジスティクスと経済の成長に貢献していきたいと思っています。

<イノベーション・デーで展示したストリートスクーター>

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<趣味のドローンで撮影した富士山>

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<アルフレッド・ゴー社長>

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■プロフィール
ヨンファ(アルフレッド)・ゴー
生年月日:1971年2月19日
学歴
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)理学士号取得(首席卒業)
略歴
2018年7月~現在
DHLサプライチェーン 代表取締役社長
日本・韓国 CEO
2017年1月~2018年6月 DHL グローバル・ファースト・グローイング・エンタープライズ プレジデント兼カスタマーソリューションズ&イノベーション(CSI)アジア太平洋地域ヘッド
2010年5月~2016年12月 DHL ファースト・グローイング・エンタープライズ SVP兼グローバルヘッド
2006年8月~2010年4月 DHLアジア太平洋地域 GCS アジアマネジメントボード サプライチェーンロジスティクスVP
2005年10月~2006年7月 DHLエクスプレス・マレーシア シニアマネジメントチーム兼グローバルMNC営業リード
2004年5月~2005年9月 DHLアジア太平洋地域 GCS サプライチェーンコンサルティングヘッド グループマネージャー
DHL入社前は、アクセンチュア(経営コンサルティング)に在籍

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