JLLは、韓国における先進的物流施設に関するレポートを発行した。
それによると、韓国では日本で主流となっている多層階マルチテナント型物流施設の開発機運が高まっており、近年における新規供給の90%超をマルチテナント型が占めているという。
また、これらのマルチテナント型物流施設は特長として大型トラックが各階に接車できる設計を採用。一部の新規開発物件は日本の先進大型物流施設に匹敵・凌駕する仕様であるとしており、その一例として1月22日に竣工しJLLが施設運営業務を受託した「アリーナス永宗(ヨンジョン)ロジスティクス・センター(LC)」を挙げている。
アリーナス永宗LCはアジア屈指のハブ空港である仁川国際空港に近接した立地で、建物規模は地上6階建て延床面積19万1138m2、各フロア面積は4万1000m2と、日本の物流不動産市場と比較してもトップクラスの規模を有している。
仕様面では、大型車両の各階接車を可能にするダブルランプウェイ、屋上庭園や200名収容のオーシャンビューカフェテリア、500台を収容可能な屋上駐車場を備え、国際的な不動産環境認証のLEEDでシルバー認証を取得。
加えて、地震が多い日本の物流施設では荷物の崩落リスクに備えて天井高を6m以下に抑えているものが多い中、同施設の天井高は各階10m、床耐荷重は2.3トン/m2と日本の標準的マルチテナント型施設と比べて2倍近いスペックを確保し、高い保管効率を実現している。これはグローバル企業が物流施設に求める水準でもある。
■航空貨物の需要拡大で「空港近接」物流施設に注目
また、JLLは韓国の物流施設に注目が集まる理由として、昨今の航空貨物の需要拡大が影響していると指摘している。
新型コロナウイルスの世界的流行を受けた航空会社による減便が空港近くに立地する物流施設の保管ニーズを高めており、韓国で事業展開する企業のみならず、欧米企業からもアジア全域をカバーする拠点として問合せが寄せられているという。
また、日本でも海外への航空貨物輸送が集中する成田空港付近の物流施設に空室がなく、貨物の保管スペースを確保できないことに加え、海運の慢性的なコンテナ不足やスエズ運河の座礁事故による海上輸送の停滞等も手伝って、国外輸送を海運から空輸に切り替えるケースが拡大しており、賃料が割安な国外の物流施設を賃借し、グローバルサプライチェーンを見直す日本企業も出てきているという。
加えて、JLLはACI(Airports Council International)の調査で2020年の空港別貨物取扱量で仁川国際空港が成田空港(208万7657トン)を上回る世界3位の275万9467トンに成長していることを指摘。
これらを踏まえ、「コロナ禍で世界的にサプライチェーンの再編が進む中、日本企業にとって国外の物流施設も選択肢の1つとなりえるのか注目される」とまとめている。