マツキヨとの関わりと海外視察
―― マツモトキヨシホールディングスとの関係も深いですね。
和佐見 昨年10月マツモトキヨシホールディングスとココカラファインが統合して、1兆円規模のドラッグストアが誕生し、マツキヨココカラ&カンパニーがスタートしました。この物流センターづくりを本格的にやっていこうと思っています。
注)5月20日、丸和運輸機関が「マツキヨココカラの新物流センター業務を受託」のリリースを発表。協定によると、丸和運輸機関がマツキヨココカラ&カンパニーの物流統合を目的とした「新東海センター(仮称)」(開設時期2024年1月)と「新九州センター(仮称)」(同6月)の物流業務を受託し、センター開設に係る計画・運営と、開設後の物流業務について双方が円滑に合意し、履行することを目的としている。
―― 御社の3PL事業では、低温食品物流、医薬・医療物流、EC・常温物流を事業の中核にしていますね。
和佐見 マツモトキヨシさんの医薬・医療物流を担当するようになったのは、今から28年前ですね。当時、店舗には1店舗1.7人の検品をする人がいました。そこで、当社が物流センターで全部検品を行うので、店の検品は必要ありませんと話し、「在庫ゼロ、納品100%、ノー検品の提案」を行ったのです。また、配送時間を朝の8時半から夕方5時くらいだったものを、ローコストな夜間配送に切り替える提案も行いました。これにより、販売中に品出しをする必要がなくなり、ローコスト化の一因となりました。そして、在庫ゼロですが、当時の店舗は1階が店舗、2階がバックヤードに利用していました。それまでは卸企業が週3回配送して、2階の倉庫に在庫として保管、我々は毎日配送するので在庫はなくなり、店舗が1フロアで営業できるわけです。家賃が1階分要らなくなります。さらに、物流への投資はゼロで済むということです。この仕組みをドラッグストアに提案したのは我々が最初だと自負しています。
―― そのような提案は当時なかなか信じられなかったのでは。
和佐見 マツキヨさんの責任者に当初「本当に大丈夫か?」と言われたことを覚えていますね。でも、当時マツキヨさんもコスト削減や店舗拡大を研究していたことから、すぐに理解され、一緒になってこのシステムを開発していくことになりました。
―― そのようなアイデアはどのようにして生まれたのですか。
和佐見 これは欧米への視察で様々な形態の店舗や物流センターを見学することから掴みとったものです。特にフランスのパリでは、参考になりましたね。今では当たり前になったドラッグストアでの食品や冷蔵食品の販売がありますが、当時パリのドラッグストアで冷凍食品や野菜、雑貨類を販売していたのです。「これは日本に来るな」、と直感的に感じました。パリにはコンビニがなく、小さなスーパーがあるだけでしたから、ドラッグストアがコンビニも兼ねる要素があったものと思います。
―― 海外視察はその後も続けられていますか。
和佐見 毎年、AZ-COM丸和・支援ネットワークの会員企業の皆さんと、2月は米国、7月にアジア、9月後半に欧州、といった具合に訪れています。店舗が中心になりますが、もちろん物流センター等も視察しています。コロナ禍でここ2年は視察を延期しています。
―― 医薬・医療分野での次のトレンドは。
和佐見 中核事業の一つである医薬・医療分野では、これまで調剤のデリバリーができなかったのですが、ネット通販が拡大してくると、患者さんが薬局で薬をもらうのではなく、今後自宅まで届けるという時代になるものと思います。医薬・医療分野の企業・店舗は商流を、我々は物流に力を注ぎ、業界の発展に共に協力して進んでいくつもりです。
―― 低温食品物流も中核事業の一つですね。
和佐見 食は人間にとり、絶対必要なものですし、低温食品物流、いわゆるコールドチェーンは欠かせないインフラだと思います。温度管理を含めた安全・安心な物流システムは日本が世界でもトップクラスだと思いますね。
―― このところ多くの冷凍食品メーカーが冷凍冷蔵倉庫の開発を進めています。アジアへの進出も盛んです。
和佐見 アジアではコールドチェーンが弱いエリアも多く、私が考えているのは、低温食品物流でアジアに進出してナンバーワンの企業になることです。中国の北京交通大学に11年前から「丸和運輸機関助学金プログラム」を運営していることから、そこに研究所「物流創新研究所」を設立し、一緒になってコールドチェーンを含めたロジスティクスについてのシステムづくりに参加してもらっています。