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経産省等/規制措置案は妥当か、卸・小売団体が物流改善で見解

2023年03月30日/3PL・物流企業

国土交通省、農林水産省及び経済産業省は3月30日、第8回「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を対面とオンラインで開催した。今回は、第6回検討会で事務局から説明があった中間とりまとめの「検討素案」の内容や、「物流標準化・効率化」に必要な事項等について、主として荷主側の業界団体が登壇。生鮮食品や加工食品関係サプライチェーンの川上から川下に位置する事業者(大手スーパー4社)及び4団体がそれぞれの見解を述べ、活発な意見交換が行われた。

<検討会の様子>

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まずは、3月16日に「持続可能な食品物流構築に向けた取り組み」を宣言した、サミット・マルエツ・ヤオコー・ライフコーポレーションの大手スーパー4社が、物流改革に際し、加工食品における定番食品の発注時間や、特売品・新商品の発注・納品リードタイム確保、納品期限の緩和(1/2ルールの採用)等4項目について「見直し」を行うことで一致し、新たに発足した「首都圏SM物流研究会」を主体に、物流効率化に向け、企業間の枠を越えて研究を進めることを明らかにした。

続いて全国農業協同組合連合会(JA)が、青果物物流における取組みについて発表した。生鮮食品は、出荷量や販売価格が季節や天候に左右され、集荷作業体系も様々だ。物流コストは生産者が負担しており、昨今の肥料費高騰等から、生産者の収入減少に着結している。JAでは「2024年問題に端を発した運べないリスク解消に向けた取組みを、発・着荷主・物流事業者が一体となって取り組むべき」とし、消費者・実需者へ応分負担への理解醸成を求めた。また、青果物物流の合理化に向けた流通環境の整備(中継拠点整備、パレット利用促進など)について、国への支援を要請した。

青果卸については、全国中央市場青果卸売協会が、農水省との連携によるレンタルパレットの普及や産地との連携(JAほか)、モーダルシフトなどの取組みを紹介。「青果流通においても持続可能な物流構築は喫緊の課題。引き続き業界全体で改善していく」としたうえで、規制措置案を青果卸会社に適用することに対しては、「なじまない」との見方を示した。

主な理由としては、青果卸売会社は「調達」を行う「着荷主」に該当しないこと。産地からの幹線物流や場内物流をコントロールできないため、部分最適の対策しか取れないということ。また卸売市場流通の取引構造は、「市場法で受託拒否・差別的取り扱いは禁止」されているため、着時間や積荷の様態は指定できない。これに対し、委員からは、「パレットかべた積みか、積み方の違いは差別ではなく、区別ではないか」「荷役など附帯業務は卸で受けるというメニュープライシングも考えるべきでは」など、多くの意見があった。一方で、青果卸においても夜間の人手不足が進むなど課題もあるようだ。

加工食品メーカー8社で組織する「食品物流未来推進会議」(SBM会議)は、「嫌われる加工食品物流」において、2024年問題でさらに運べなくなる危機を見据え、「メーカーだけでなく日食協や各小売団体の垂直連携や、行政・業界団体等との斜め連携(標準化)に取組んでいる。商習慣の見直しを含め、日本の物流を進化させなければならない」とし、F-LINEプロジェクトやスマート物流等、持続可能な加工食品物流構築へ向け、ステップアップを図っている。

<持続可能な加工食品物流実現へのステップ(食品物流未来推進会議)>

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そのうえで規制措置案に対しては、「物流課題は製・配・販が連携しなければなしえない。個社単位で規制をかけ、進捗を追いかけることは個別最適を助長することにならないか」との見解を示した。このほか、日本加工食品卸協会及び日本スーパーマーケット協会からも「個社の規制では全体最適よりも個別最適が優先される」「食品物流の課題解決には、製・配・販の全体最適を追求することが重要」と同様の意見があった。

その後の意見交換では、「効率化による価格への反映より、運べる・届くということが、最大のメリット」(食品物流未来推進会議)、「実運送のドライバーについて荷主側はどの程度把握しているのか、労働時間削減だけでなくドライバーの利益にもつながらなければ」(立教大学・首藤若菜教授)など、物流業界の多重下請け構造について踏み込む意見も多くあった。

経産省では「検討素案」において、様々な業界団体にヒアリングを行っており、それらについても同日、HPで公開した。こうした意見をふまえ、5~6月に最終とりまとめを行う予定。

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