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経産省等/2024年は「始まり」、持続可能な物流へ最終案示す

2023年05月19日/3PL・物流企業

経済産業省、国土交通省、農林水産省は5月19日、2022年9月から開催している「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の10回目の会合で、最終とりまとめ案を示した。

<第10回検討会の様子>

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同検討会では2023年2月に「中間とりまとめ」を公表し、その後も検討を重ねてきた。最終とりまとめ案は、2024年問題をふまえ、総合物流施策大綱やこれまで作成した各種ガイドラインの実効性を確保するため、具体化すべき政策等について提示したもの。持続可能な物流に向けて、2024年で対策が終わりではなく「始まり」とし、「物流事業者が提供価値に応じた適正対価を収受するとともに、物流事業者、荷主企業・消費者、経済社会の「三方良し」を目指す」という、中間とりまとめを踏襲しながらも、多重下請け構造や商慣行の是正を促す措置や、さらにはドライバーの賃金向上への環境整備など、業界の健全な発展へ一歩踏み込んだ内容となった。

最終とりまとめ案では、まず荷主企業や消費者への意識改革として、「物流改善を評価する仕組みの創設」や、「経営者層の意識改革を促す措置」として、一定規模以上の貨物の引き渡しまたは受取を行う荷主企業に対し、経営者層を中心とした管理責任者を任命すること、サプライチェーン全体最適化の視点を持つ高度物流人材の育成・確保へ、産学官連携で取組み支援することを明らかにした。

また、中間とりまとめでも示された「物流プロセスの課題の解決」(非効率な商習慣・構造是正、取引の適正化等)については、待機時間、荷役時間等の労働時間削減に資する措置及び納品回数の減少、リードタイムの延長等、物流の合理化を図る措置を検討する。

<運行の平均拘束時間とその内訳>

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具体的には、事業規模や貨物特性を勘案しつつ、企業規模に関わらず取り組むべき事項を「判断基準」として示すとともに、一定規模以上の貨物を取り扱う物流事業者に、中長期計画の作成および定期報告を義務付ける。実効性確保の手段として、取組状況が著しく不十分な場合は勧告・措置命令等を行う法的措置について、「具体的な検討を進めるべき」と明記した。

多重下請構造等や適正運賃収受については、中間とりまとめ以降、業界団体へのヒアリング等を実施。その結果、3次以上の下請構造や契約の書面化(電子化)ができていないこと、約半数が契約にない附帯業務を行っていることが明らかとなった。

<契約書に記載のない附帯業務の有無>

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このため、「建設業法を参考にした運送体制台帳(下請事業者のリスト)の作成や、内航海運業法等を参考に、契約内容の電子化・書面交付を義務付けるべき」とした。加えて、同検討会では適正な運賃収受を阻害する荷主等について企業名を公表することが有効なのではないかとの意見もあった。

さらに商慣行を是正するため、物流コストの可視化についても検討する。具体的には、運賃の適正収受に向け、物流サービスに応じて価格を変動させる「メニュープライシング」の取組みや、貨物自動車運送事業法に基づく標準運賃に係る延長等の対応など。また、これらと併せてトラックドライバーの賃金水準向上に向けた取組みが一層進むような環境整備や、事業継承についても検討すべきとした。

このほか、物流標準化・効率化への取組みとして、デジタル技術を活用した共同輸配送や帰り荷のマッチング、受発注情報の事業者間の共有・連携等、幅広く荷主や物流事業者の生産性向上に資するシステムやアプリケーションの導入等、自動化・機械化の推進に向けた環境整備を行う。具体的には、物流拠点ネットワークの形成やモーダルシフトへの支援、車両・施設の省エネ化や脱炭素化の推進に向けた環境整備等。

経産省等は今後6月16日に、第11回目の検討会を開催し、最終とりまとめを行う。また、これをもとに内閣府は物流の2024年問題に対し、6月上旬を目途に、抜本的・総合的な対策を政策パッケージとしてとりまとめる予定だ。

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