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迫る2024年 ロボット導入待ったなし!

2023年09月22日/IT・機器

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東京ビッグサイトで9月13~15日にかけて開催された「国際物流総合展2023 第3回INNOVATION EXPO」。「知恵と技術を集結し、2024年問題を解決する」をテーマに掲げた同展示会には、最新の物流機器やシステム、情報等のソフトとハードが一堂に結集、3日間で前回開催(2021年)の2.5倍となる合計4万4640名が来場し、成功裏に閉会した。

連日盛況だった同展示会のなかで一際賑わいを見せていたのは、倉庫作業の省人化に寄与することを目的とした「物流ロボット」の出展ブースだった。今回の開催には、前回開催の倍近くとなる20社以上のロボット関連企業が出展。倉庫内の搬送を自動化するAGV、作業者と協働しピッキングを行うAMR等、さまざまなタイプのロボットが並ぶ中、大規模な出展で特に注目を集めていたのがGTP(Goods To Person)タイプの仕分けやピッキングを行うロボットソリューションだ。

同タイプのロボットは「オートストア」や、「アマゾンロボティクス」に代表される棚搬送AGVを用いたシステムが代表格とされてきたが、今回の展示会ではギークプラスやラピュタロボティクス、Exotec Nihon、HAI ROBOTICS JAPANなどが大規模な自動倉庫型のGTPピッキングソリューションを出展し、実機によるデモンストレーションを行っていた。

メーカー多数参入のピッキング自動倉庫に注目

<ギークプラス「PopPick」デモンストレーション>

ギークプラスによるGTPソリューション「PopPick(ポップピック)」は、EVEシリーズのAGVと、ピッキング作業所「PopPickステーション」とで構成される。搬送棚の高さを防火シャッター直下を通過できる3.9mとし、倉庫の天井高を有効活用できる点が特長だ。

システムは、AGVが大量のコンテナを備えた搬送棚をPopPickステーションまで運び、PopPickステーションに搭載されたアームが出庫商品の入ったコンテナを取り出し、自動で作業員の手元まで運ぶ仕組み。PopPickステーションに搭載されたアームの先端には吸盤が付いており、コンテナ側面に吸着して搬送棚から引き出す仕組みで、コンテナ間にアームを差し入れる隙間を確保する必要が無いため、2cm間隔の高密度でコンテナを搬送棚に格納することができる。

今回出展した「PopPick」は、PopPickステーションに搭載したアーム部分の機構に改良を加え、パーツをモジュール化したことで、保守性を向上させていた。

「世界30か国以上の現場にEVEを提供して培った豊富な知見によって、日本の市場に合った製品を提供できることがギークプラスの強み」と、同社の加藤 大和CEO。AGVの台数によって規模を簡単に変更できる点を「PopPick」の特長に挙げており、すでに実績のある中国や米国に続いて日本市場でも2023年末に300台以上の導入が決定しているという。

このほか、同社のブースには、東芝テックと共同開発したAGVとRFIDを組み合わせた「自動棚卸ソリューション」も展示されていた。

<「ラピュタASRS」デモンストレーション>

<搬送ロボットへの充電の様子>

ラピュタロボティクスの自動倉庫「ラピュタASRS」は、今回が展示会での初お披露目となった。

同ソリューションは、倉庫のラック、ラック内を走行する全高80mmの薄型搬送ロボット、ピッキングステーションで構成されており、ロボットがラック内を縦横無尽に走行し、回収したビン(保管箱)をピッキングステーションに順次届ける仕組みとなっている。ピッキングステーションでは、作業者の周りに複数のビンが配置されてマルチオーダーピッキングが可能になり、待ち時間なく作業を続けることができる。

ラック部分は継ぎ足しや取り外しが容易にできるモジュール型で、スモールスタートから事業規模や業務の繁閑に合わせて規模を拡大・縮小することが可能。L字やコの字などにも成形でき、倉庫の形に合わせてレイアウトを自由自在に設定することができる。ラックには免震構造を採用しており、アンカー止めなしで設置できるため現状復旧も不要。移転等にも対応でき、柔軟なサプライチェーンの構築に寄与する。

搬送ロボットは同社のロボット制御プラットフォーム「rapyuta.io」で制御され、ロボット同士を協調させ、最適な連携を可能にしている。搬送ロボットは薄型のため、ラックの階高を抑えてスペースを最大限に活用した保管が可能。一方で、搭載バッテリ―の容量が小さく、1回の充電あたりの稼働時間は3時間程度となるが、自動倉庫にバッテリーの自動充電ステーションを併設することで対応しており、充電ステーションでの電池交換の様子はさながらF1のピットインのようだった。

<Exotec Nihonの倉庫自動化ソリューション「Skypodシステム」>
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Exotec Nihonの倉庫自動化ソリューション「Skypodシステム」は、3次元立体走行自動搬送ロボット「Skypod」が自走でラックを昇降し、トレイをピッキングステーションへと搬送する仕組み。デモンストレーションでは搬送ロボットの動きの速さと滑らかさが目立った。

同社によるソリューションの特長は、ロボットの動作だけではなく、サービス提供の仕方にも表れている。同社では顧客に98%の稼働率を保証しており、納入先のロボットに異常が無いか遠隔で監視しているほか、不具合による稼働停止を回避するための事前メンテナンスを行うなど、安定稼働を念頭に置いた形をとっている。また、Skypodシステム自体も、ラックの強度を高めることで地震に強い構造を採用しており、非常時にはロボットが自らラックを離れて待機場へ避難するなど、BCPにも配慮されている。これらがユーザーから評価され、同ソリューションはユニクロやヨドバシカメラ等で採用されている。

<HAI ROBOTICS JAPANの自動ケースハンドリングロボット 「HAIPICK」>
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HAI ROBOTICS JAPANのGTPソリューションは、自動ケースハンドリングロボット(ACR) 「HAIPICK(ハイピック)」と多機能ワークステーション「HAIPORT(ハイポート)」で構成される。ロボットは高さ10mまでアームが昇降するため、高所棚を用いた高い保管効率を実現する。また、ロボットは一度に6つまでケースを搬送することが可能で、搬送効率が高い点も特長。ワークステーションでは搬送ロボットと連動し、ケースの積み下ろしや作業者への提供、回収を自動で行うことができる。

同社では、増加する大型案件に対応するため、エンジニアを拡充し、ソリューションの垂直立ち上げと安定稼働が可能な体制を構築した。また、今後の日本市場での事業拡大に向けて、日本人や日本語が堪能なスタッフを増員し、コミュニケーション面も強化している。

9月にはエンジニア系人材サービスを手がけるウイルテックとの提携を発表し、ロボットの導入保守サポートを強化。今後は、千葉や大阪など客先の近くにサービス拠点を設置し、サポート体制をさらに拡充する。

今後、同社では顧客に自社のソリューションとその前後工程を担う他社製のロボットを合わせて提案することで、顧客の全体最適化を支援する取り組みも進める。そのため、今回の出展ではブースの一画にプラスオートメーションの立体型ロボットソーター「t-Sort 3D」を展示し、自社のピッキングソリューションと他社の仕分けロボットが連携する現場を再現していた。

<Quicktronの自動ケースハンドリングロボット「QuickBin」>

Quicktron(クイックトロン)は、自動ケースハンドリングロボット(ACR)「QuickBin(クイックビン)」による高所棚からのケースハンドリングのデモンストレーションを披露した。実際の現場では、荷物の入出庫を担うワークステーションを併設し、ロボットと連携してピッキング作業を行う使用方法を想定している。

今回展示していたQuickBinは、アームの先端に付いた吸盤で棚からケースを取り出す新型。従来型のロボットでアームが入り込むために設けていたコンテナ間の隙間を極小化したことで、保管密度が従来比20%向上している。

なお、同社では日本での製品展開を強化するため、ECフルフィルメントを手がけるエクシーク社と提携し、同社がMFLP船橋III(千葉県船橋市)に開設している倉庫内に、日本国内初となるラボを11月末にも開設する予定だ。

多様化する物流ロボット、自動フォークも普及期へ

その他の企業ブースでは、RaaS(Robotics as a Service)を手がけるプラスオートメーションとGaussy(ガウシー)に多くの来場者が集まっていた。

<プラスオートメーション企業ブース>
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<異なるメーカーのロボットを協調制御するデモンストレーション>
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プラスオートメーションは、Raasで提供している仕分けロボット「t-Sort」と立体型ロボットソーター「t-Sort 3D」の展示に加え、メーカーが異なる複数台のロボットを協調制御するデモンストレーションを披露した。

このデモは、同じ現場にさまざまなロボットが当たり前に稼働している「未来の物流現場」を再現したもの。同社では今後、物流ロボットについて、新たなメーカーの参入やロボットの普及が進むことで中古ロボット市場が形成され、一つの現場でメーカーや型式が異なる多様なロボットが稼働する未来がやってくると予見している。

「現状はロボットメーカー各社が専用の制御システムを採用しているため、複数メーカーのロボットを同時に稼働させることは難しい。これが解消されると、メーカーや型式を気にせずにロボットを運用できるため、業務に合わせて幅広い選択肢から柔軟にロボットを選べるようになる」と、同社の山田 章吾社長は話す。

同社では、将来的にメーカーや型式の異なる多様なロボットをRaaSで提供し、企業が自社に合った機能や価格帯のロボットを導入できるようにサポートしていく考え。今回のデモンストレーションでは、中国企業Co Evolution社のロボット制御システムを使用しており、同システムについては今後、RaaSでの提供を検討していくとしている。

<Gaussyが倉庫ロボットサービス「Roboware」で新たに提供するピッキングアシストAMR>
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Gaussyは、同社が倉庫ロボットサービス「Roboware」で提供しているロボット群を展示し、各業務の現場を再現した環境でデモンストレーションを行った。

展示されていたロボットは、HC ROBOTICS社の立体型仕分けロボット「Omni Sorter(オムニ・ソーター)」と順立てロボット「Omni Flow(オムニ・フロー)」に加え、9月に提携を発表したForwardX Robotics(フォワードエックス・ロボティクス)のピッキングアシストAMRと、Suzhou Mushiny Intelligence Technology(Mushiny)の棚搬送型AGV。

ForwardX Roboticsのロボットは、他社のピッキングアシストAMRと比べて大型で、大量の商品を搬送でき、マルチピッキングに対応している。Mushinyの棚搬送型AGVはマイナス20度の環境下でも稼働できる。

Gaussyは、これらのロボットをRobowareのラインナップに加えたことで、新たにピッキング工程のロボット化ニーズにも対応を可能とし、搬送からピッキング、仕分けまで庫内作業の自動化ソリューションをワンストップで提供する体制を構築。今後もロボットのラインナップを増やし、より幅広いシーンでのロボット活用のニーズへの対応を図っていく。

<三菱ロジスネクストが開発中の自動フォークリフト「AGF-X」の実演デモ>

<自動フォークリフトのコンセプトモデル「DECCO」>

このほか、今回の展示会では、自動フォークリフトを出展する企業も前回と比べて多い印象だった。

三菱ロジスネクストは、三菱重工グループが独自開発したロボットの自律化・知能化ソシューション「ΣSynX(シグマシンクス)」を搭載した開発中の新型機「AGF-X」とコンセプトモデル「DECCO」による無人物流オペレーションを披露。

AGF-Xは、最大9km/hで走行でき、LiDAR SLAM誘導方式とΣSynXによってスムーズな荷役動作を実現。障害物の回避や、位置のズレたパレットやネステナーにも対応し、有人機に劣らない性能を見せた。

コンセプトモデルのDECCOは、全幅がスリムな設計に加え、その場での旋回が可能で、デモンストレーションでは狭い通路幅で走行、旋回する動きを実演した。また、AI音声コミュニケーション機能による会話も披露。同機能は、物流現場で周囲の作業員に自機の接近を知らせたり、作業計画を音声でアナウンスし共有する等の利用を想定しているとのことだった。

<リードテック企業ブース>
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三菱ロジスネクストと並んで多くの来場者の関心を集めていたのは、清水建設、レンタルのニッケン、東京センチュリーの3社が自動フォークリフトのリース会社として今年6月に設立したリードテックの企業ブースだ。

同社では、自動フォークリフトを月額28万5000円から提供しており、「稼げる・頼れる・助かるフォークリフト」をキャッチフレーズに掲げ、適用範囲の提案から、導入効果の算出および導入費との比較、実機デモ、導入契約条件の提示までをワンストップで提供する。

自動フォークリフトへの動作指示は、「ユニバーサルUI」と呼ばれるオペレーションシステムによって行い、「猫でも使える」ような直感的な操作が可能で、タブレットで一問一答形式で操作を選択することで指示出しを完了できる。

提供する自動フォークリフトは、パートナー企業であるVisionNav Robotics製で、日本や韓国、アメリカ、オランダで計2500台の稼働実績を持つ機体。デモンストレーションでは、2台の自動フォークリフトを連携させ、1台が平ボディトラックの荷台から荷物が積まれたパレットを下ろし、中間地点にある高床バースを見立てた台座へ搬送。もう1台の自動フォークリフトがこのパレットを持ち上げ、離れた場所にあるネステナーや仮置き場へ搬送してみせた。

2社のほかには、ForwardX Robotics、HIKROBOT、Multiway Robotics(Shenzhen)ラピュタロボティクス等が自動フォークリフトを出展していた。ロボット企業による自動フォークリフトへの参入は今後加速するものと思われる。

<ForwardX Robotics>
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<HIKROBOT>
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近年の国際物流総合展には毎回多くのロボットが出展され、最新の技術を一目見ようとする物流関係者で賑わってきたが、今年は特に真剣な面持ちでロボットに視線を送る来場者が多い印象を受けた。あるロボット企業の担当者は、「従来の展示会と比べて購買意識の高い来場者が多い。皆、単なる情報収集ではなく、『どのロボットを購入するか』を決めに来ている」と、来場者への印象を語る。

例年に増して今年の来場者の購買意欲が高い理由は、同展示会のテーマでもある「2024年問題」にあるようだ。「2024年問題」自体はトラックドライバーの年間時間外労働時間の上限規制によって発生する問題であり、一見すると倉庫業務の効率化とは関連性が低いように思われる。しかし、EC市場の拡大で仕分け等の倉庫作業は煩雑化し、人手の確保が困難な状況が続いている中、「2024年問題」に対して抱いた危機感が倉庫作業の人手不足問題にも波及し、解決せんとする意識が急速に高まっているのだろう。各社の企業ブースは開場直後から多くの人が集まり、デモンストレーションが行われているブース前にはどこも通路を塞ぐほどの人だかりができていた。

<デモンストレーションの時間が近づき大混雑する企業ブース前>
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