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公取委/価格転嫁調査で8175名に注意喚起文書を送付

2023年12月30日/調査・統計

公正取引委員会は12月27日、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査の結果を公表した。

公取委は、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査を実施し、2022年12月27日に調査結果を公表している。今回の特別調査では、2022年の調査結果を踏まえるとともに、同調査結果に基づき注意喚起文書を送付した4030名と、事業者名を公表した13名の価格転嫁円滑化に関する取り組みのフォローアップを目的として実施したもの。

それによると、注意喚起文書送付の対象となった事業者は8175名で、回答者数に占める注意喚起文書送付対象者数の割合は17.1%(前年21.2%)と4.1ポイント低下した。8175名のうち1255名は、2022年の緊急調査でも注意喚起文書の送付を受けている。注意喚起文書の送付件数は、情報サービス業、協同組合、道路貨物運送業、機械器具卸売業、総合工事業、建築材料、鉱物・金属材料等卸売業で多かった。

コスト上昇分の価格転嫁等の状況については、原材料価格(80.0%)やエネルギーコスト(50.0%)と比べて、労務費(30.0%)の転嫁率が低い結果となった。コストに占める労務費の割合は、ビルメンテナンス業・警備業、情報サービス業、技術サービス業、映像・音声・文字情報制作業、不動産取引業、道路貨物運送業の6業種で特に高い。映像・音声・文字情報制作業と道路貨物運送業では、「労務費の上昇を理由として要請しても、その転嫁率が低い受注者が多い」という結果になった。

また、情報サービス業、道路貨物運送業、総合工事業、ビルメンテナンス業・警備業では、受注者の立場で自らと同じ業種の発注者に価格転嫁できていないと回答する一方で、発注者の立場で自らと同じ業種の受注者からの価格転嫁を受け入れていないと回答していることから、これらの業種のサプライチェーンでは多重下請構造が存在し、かつ、価格転嫁が円滑に進んでいないことがうかがわれる結果になった。

事業者名が公表された13名(佐川急便、三協立山、全国農業協同組合連合会、大和物流、デンソー、東急コミュニティー、豊田自動織機、トランコム、ドン・キホーテ、日本アクセス、丸和運輸機関、三菱食品、三菱電機ロジスティクス)に対して実施したフォローアップ調査の結果としては、進捗の程度に差があるものの、いずれも、フォローアップ調査の期間中における価格転嫁円滑化の取組により、全体としては価格転嫁円滑化を相当程度進めていた、と評価した。

今回の特別調査の結果を踏まえ、今後、公取委では、独占禁止法Q&Aと「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の普及・啓発につとめる。

注意喚起文書の送付を受けた8175名に対しては、2024年に実施する価格転嫁円滑化に関する調査でフォローアップ調査を実施する。また、2022年に続いて注意喚起文書の送付を受けた発注者1255名については、独占禁止法Q&Aに対する理解不足が一因であると考えられることから、個別に独占禁止法Q&Aの考え方、労務費転嫁交渉指針の内容等を説明し、改めて注意を喚起する。

多重下請構造が存在し、かつ価格転嫁が円滑に行われていないことがうかがわれる業種等については、積極的に端緒情報の収集を行うとともに、違反被疑事件の審査等を行い、独占禁止法や下請法上問題となる事案については、対象となる事業者に対し、事業者名の公表を伴う命令、警告、勧告など、これまで以上に厳正な法執行を行う。

また、優越的地位の濫用の未然防止のための体制強化として、2024年度予算案に盛り込まれている、官房審議官(取引適正化担当)の創設と優越Gメンの増員により体制の充実を図り、これらの取組等を強力に進めていくとしている。

公取委/協同組合や食品メーカーなど573の荷主に注意喚起

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