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地方の物流不動産/半導体産業と2024年問題が契機となるか

2024年03月26日/調査・統計

CBREは3月26日、「地方圏物流不動産マーケットのポテンシャル」のレポートを発表した。

<Figure 1 人口>
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<Figure 2 圏内総生産>
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それによると、まず、大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏、福岡圏)以外の県について経済規模を整理するために、都道府県別の人口と県内総生産を上位から順に並べた。人口が上位15位に含まれる都道府県のうち、大都市圏以外は北海道、静岡県、広島県、宮城県、新潟県の5道県である。また県内総生産では、北海道、静岡県、広島県、宮城県、群馬県の5道県が上位15位に含まれる。これらの道県のうち北海道、宮城県、広島県は、ロジック半導体の量産を目指す大型投資が明らかになった。それぞれに札幌市や仙台市、広島市といった地方中核都市を持ち、一定の交通インフラが整備され、産業の集積がみられる。

そうした中、半導体産業は日本国内の生産増強姿勢が鮮明だ。パンデミックによる製造業の生産停滞を契機に、日本政府は「経済安全保障の観点から必要な半導体工場の新設・改修を国家事業として主体的に進めることが必要」(経済産業省)と位置づけ、補助金の拠出や自治体による工場の周辺インフラ整備を支援し半導体生産を後押ししている。代表的なところでは、TSMCの子会社JASMが熊本にロジック半導体の工場を新設し、2024年2月に開所式が行われた。また、ラピダスは北海道千歳市で、JSMCは宮城県大衡村で、ロジック半導体の生産を新たに始める計画である。

<Figure 3 半導体工場の大型投資計画事例>
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これまでに公表された半導体工場の大型設備投資計画をFigure 3だ。これらの立地の特徴は大都市圏ではなく、地方都市に広く分散していること。半導体工場の進出は地方都市における工業製品の保管や流通需要を創出し、工場そのものが稼働する前から物流施設の需要を押し上げることが確認されている。物流機能はこれまで東京や大阪などの人口集積地を中心に発展してきたが、半導体産業の活性化は、物流施設のデベロッパーの目を地方都市へ向けさせる契機となっている。

<Figure 4 地域間の自動車貨物輸送量、Figure 5人口1000人当たりのLMT*面積、Figure 6県内総生産10億円当たりのLMT*面積>
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また、物流という観点から地方の中核都市が注目される理由はもう一つある。トラックドライバーの時間外労働規制が厳格化される、2024年問題だ。貨物輸送量は、関東、中部、近畿を結ぶラインが最も多く、次いで関東と東北間、近畿と中国間が多い(Figure 4)。対策は多岐にわたるが、物流施設に直接関係する点としては、こうした大都市圏を往来するトラック輸送の距離を短くするための拠点の分散化や、長距離輸送の回数を減らすため地方拠点の在庫量を増やすことなどが考えられる。北海道や九州はもちろんのこと、大都市圏からの中間に位置する東北地方や中国地方も物流拠点としての重要度が増すと考えられる。東北地方では仙台市、中国地方では広島市や岡山市の周辺が物流拠点のターゲットになると考えられる。

2024年問題への対策には、拠点の立地だけでなく、新たな機能が物流施設そのものにも求められるようになろう。輸送効率を高めるためには荷待ち時間の削減が重要となる。そのためには、トラックバースを多く備え、機械化投資に適した現代的なスペックが整った、新しいタイプの倉庫が必要となる。しかし、地方都市圏の先進的物流施設のストックは、その経済規模に照らしてまだまだ少ないのが現状だ(Figure 5, 6)。したがって、こうした地方都市圏では物流施設の開発の余地があるといえる、としている。

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