従業員の健康増進に取り組むと、ドライバーの採用・定着につながったり、女性の活躍が進んだり――。医薬品、食品など大塚グループの物流部門を担う大塚倉庫が3月24日、パートナー企業の好事例を発信する情報交換会を都内で開いた。
大塚倉庫は、自社でトラックとドライバーを持たず、輸配送を全国100社超の運送会社と組んで行う。「2024年問題」を踏まえ、持続可能な物流のためには、人手不足が重要な社会課題だった。
そこで2024年度、大塚製薬の法人向けサービス「健康経営つながるサポートONLINE」を活用して健康経営に取り組もうと、大塚倉庫がパートナー企業に呼び掛けた。
サービスは、課題抽出や施策の相談などを大塚製薬が対応、従業員らに配布する飲料や食品を支援するもので、費用を大塚倉庫が負担する形でパートナー企業に取り組んでもらった。このほど13社が初めて「健康経営優良法人2025(中小規模法人部門)」の認定を取得。情報交換会には、このうちの3社が登壇した。
北海道で3PLを展開するシズナイロゴス(本社:札幌市)の渡辺雄生 取締役総務統括部長は、「どうしたら当社に入社してもらえるか、他社と差別化できるか、人材の採用・定着につながる取り組みと合わせて健康経営に取り組んだ」と語る。
ポイントは、福利厚生の充実と位置づけ、従業員だけでなく家族も参加できるカーリング大会やジンギスカンなど、社内イベントを開催、さらに景品として飲料や食品が家族にも届く仕掛けとしたこと。
接骨院からの出張マッサージ施術などは、ドライバーやリフトマンから大好評で、こうして家族も巻き込み「シズナイロゴスって、いい会社だよね」と言われるようになっていったという。
大輪総合運輸(本社:徳島県鳴門市)の山下世紀 取締役COOは、「医薬品を輸送する会社の使命として、従業員と家族が健康でなければと考えた。ドライバーの健康診断などについて周知・コミュニケーションが取れていなかったと思う」と言う。
全従業員に対し健康状態に関するアンケートを実施したところ、困っていることのトップは「痛みに関すること」で、「体の動きや移動に関すること」「睡眠に関すること」「きつさ・体力低下・食欲・発熱・めまい・気分不良に関すること」などが挙がった。
「従業員の健康増進に取り組み、最終的には企業の生産性向上を目指す。2026年以降も健康経営優良法人認定を取得したい」と述べた。
「ドライバーの多くが男性で高齢化するなか、若年層の雇用と女性活躍に力を入れている」と語ったのは、早川運輸(本社:長野県南佐久郡)の河野靖彦 専務取締役。
輸送の安全、事故防止は経営の根源だとして、社員教育・研修はもちろんのこと、車両にドライブレコーダーやデジタルタコメーターを装着するなどしてきた。
さらには、女性の雇用率を13%(2024年3月)から15.9%(2025年3月)にアップさせるにあたり、AT車を導入しUVカットガラスを採用、また長距離運行から短距離運行にシフトし、機械荷役を進めるなど、働き方を選べるようにも努めている。
ドライバーや家族らのクチコミ影響は大きく、従業員数は現在207人だが、この1年で40人増やせた結果だという。
情報交換会を受け、大塚倉庫の島津光沙子 取締役総務人事部長は「この1年取り組んでみて、パートナー企業と健康をテーマに話が盛り上がることが増えた。業界の経営層にも広まっていると感じる」と述べ、引き続き大塚グループの健康経営に取り組む姿勢を示した。