帝国データバンク(TDB)は8月9日、人手不足による倒産のうち「従業員の退職を要因とした人手不足(従業員退職型)」の倒産発生状況について調査・分析を行い、その結果を公表した。
それによると、2025年1-7月に判明した人手不足倒産のうち、従業員を自社につなぎとめられず経営破たんする「従業員退職型」倒産は74件で、前年同期の46件から約6割の増加となった。
このペースで推移すると、集計可能な2013年以降で最多記録だった2024年を上回り、2025年通年では年間100件に達すると見られている。
2024年の「従業員退職型」倒産を業種別にみると、最も多いのが「サービス業」(19件)で全体の25.7%を占めており、サービス業としては2013年以降、1-7月ベースで最多を更新している。人手不足が慢性化しているソフトウェア開発、IT産業のほか、映像制作などの業界で倒産が目立った。
次いで多いのが「建設業」(17件)で、設計者や施工監理者など、業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の退職により、事業運営が困難になった企業などが目立った。
また、「製造業」「卸売業」や「運輸・通信業」でも、1-7月の累計で過去最高を更新しており、従業員の退職が倒産の引き金となっているケースが幅広い業種に広がっている。
賃上げによって良い人材を高給で確保する動きが広がるなか、「待遇改善をしないことによる人材流出リスク」が中小企業を中心に高まっている。しかし、賃上げをしたくても業績悪化などを理由に賃上げができない企業も多く、従業員に対し十分な報酬を支払う余力のない中小零細企業が、「従業員退職型」倒産を起こす可能性がある、としている。