国土交通省は10月9日、「国際物流の多元化・強靭化に関する情報共有会合」を開き、中央回廊~カスピ海ルートの日本~欧州間実証輸送などに参加した事業者が実施結果を報告。各社とも船舶による輸送が困難になった際の代替ルートとしての有効性は認める一方、コストや輸送品質、リードタイムなど多くの課題が浮き彫りになった。
実証輸送は、海上輸送に依存してきた日本の国際輸送ルートについて、地政学リスクや大規模災害発生を想定し、代替ルートでの課題点抽出や対応方策の検討などを目的に2017年から行っているもので、2023年度補正予算では中央回廊に関する調査として、5事例が対象となった。
神戸からイタリアへの輸送では、100日を見込んでいた輸送期間が、中国の太倉で41日間の待機が発生したことなどにより半年を超過。
名古屋からトルコへの自動車部品輸送では、通常の喜望峰経由の船舶ルートが60日程度であるのに対して、カスピ海での強風などにより98日を要したほか、運賃も4倍程度となった。
また、中国国内での鉄道輸送に関する書類作成が煩雑で、オペレーションコスト増大につながるとの報告がなされた。
情報共有会合ではこのほか、2024年度予算で実施された「国際物流の多元化・強靭化に向けた実証調査」4事例についての報告も行われた。
キルギスから日本へのはちみつの輸送では、通常の黒海経由に代えてパキスタンのカラチ港までトラックによる陸送を行った上で、東京港まで船舶で輸送したところ、到着時にコンテナ内で荷崩れが発生していたほか、一部の商品が抜き取られていた。
名古屋からタイへの自動車部品輸送では、通常輸送に比べコストが12~13倍に上ったことや、港湾のガントリークレーン荷役で30G程度とされ、40Gでも珍しいとされる貨物への衝撃が、76Gに達していたことなどが説明された。
報告の後、国交省物流・自動車局の牧野武人 国際物流室長が、2024年度補正予算による実証輸送の参加について、10月24日まで公募を行っていることを紹介。
<2024年度補正予算分、国際物流の多元化・強靭化輸送に係る実証輸送の概要>
牧野 物流室長はそのほか、2025年度予算で中央回廊に関するビジネスツアーを実施することを説明し、関係者の参加を呼び掛けた。
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