帝国データバンク(TDB)は3月21日、「公租公課滞納」による倒産動向について調査・分析を行い、その結果を発表した。
法人税や所得税、健康保険料などの「公租公課」を納付できない、または滞納による差し押さえで倒産を迎える企業が増えていることが明らかとなった。
2024年度の「公租公課滞納」倒産は、2025年2月までの11か月で140件も判明している。過去で最も多かった2023年度の139件を上回り、2020年度の集計開始以降から最多を記録した。
業種別でみると「サービス業」が45件(構成比32.4%)で最多、「建設業」が32件(同22.9%)、「運輸・通信業」が24件(同17.1%)と続いた。なお、「運輸・通信業」のうち該当した企業は、全件が道路貨物運送業や道路旅客運送業などの「運輸業」であった。
いずれも物価高や人手不足などの影響を大きく受けている業種であり、公租公課の納付原資を確保できずに倒産に至っていることが見込まれる。
日本年金機構によると、厚生年金保険を含む社会保険料を滞納している事務所は、2023年度末時点で14万2119事業所あり、同年度の差し押さえ執行事務所数は4万2072件事務所にもなり、ここ数年で急増している。
コロナ禍での資金繰り支援策の一つとして、公租公課のうち企業にとって負担の重い社会保険料に最長3年にわたる納付猶予措置が設けられた。ところが、猶予期間終了後に業績が好転せず、累積した社会保険料の支払いが困難な企業が増えており、2024年度になって倒産という形で露になってきている。
政府は、再生可能性の高い中小企業の情報を公租公課の徴収現場や金融機関などと共有し、公租公課の確実な納付と事業再生の両立を目指す「事業再生情報ネットワーク」の運用を2024年6月から開始。2024年11月以降に「公租公課滞納」倒産の発生ペースが鈍化し、2025年に入ってからは前年比で減少に転じるなど、この運用に対しては一定の効果が表れている。
一方で、物価高や人件費の高騰分を価格転嫁できず、納付原資を確保できない企業が増加するおそれもあり、しばらく「公租公課滞納」倒産は高水準で推移することが見込まれるとしている。
雇用動向/運輸の人手不足深刻化 2024年問題の需要増に雇用増えず