帝国データバンクは2月21日、信用調査データを用いた2024年12月の雇用傾向の考察を発表した。
それによると、運輸業界では正社員、非正規社員ともに雇用の変動が横ばいで推移しており、2024年問題への対応に遅れを取っていると考察された。
また、以前から続くドライバー不足に2024年問題も相まって、人手不足の更なる深刻化が懸念されている。
運輸業において、個社企業の全体的な傾向を示す「基準変動の平均」では、正社員と非正規社員ともにコロナ禍以前は緩やかな上昇傾向であった。一方で、コロナ禍以後は横ばいで推移している。
産業全体の変動を見るための指標となる「合計の基準変動」では、正社員は緩やかに上昇していたがコロナ禍で下落した。非正規社員はコロナ禍以前には基準値より高い水準であったが、それ以降は下落し基準値と同水準で推移している。
これより、過去10年の動向として、一部の企業では雇用を増やしているが、業界全体としては雇用を増やせていないことが言われている。
雇用動向に関する企業の意識調査で、「正社員・非正規社員ともに採用予定がある」と回答した企業の割合が、全産業で最上位であることからも、2024年問題に向けて人手が不十分であったと推測される。
直近の動向に注目すると、一部の企業で非正規社員が大幅に減少したことを示唆しており、2024年1月に大手宅配業者で実施された非正規社員との大規模な契約終了の影響が考えられる。
労働力調査と信用調査を比較した結果によると、運輸業において、労働力調査の方が信用調査に比べ、正社員は上方向・非正規社員は下方向に変動が大きい。
特に非正規社員は下落が大きく、信用調査の対象とならないような周辺の企業では、より非正規社員の数が減少していることがわかる。
また、法人企業統計調査と信用調査を比較すると、運輸業に関しては、法人企業統計調査は信用調査よりも高い水準で推移している。
よって、規模の大きい企業では雇用が増加はしていないものの、信用調査よりも高い水準で維持されていることがわかる。
帝国データバンクは、ここまでの内容を踏まえ、運輸業界は、以前から続くドライバー不足に加え、2024年から労働時間の規制が実施されるなど労働需要がますます高まっている業界であるとした。
しかしながら、雇用量の大きな変動は見受けられず、今後も人手不足は強まると予想されている。
雇用動向/2024年問題で正規・非正規採用共、運輸・倉庫が最多