オープンなプラットフォームが肝心
―― プラットフォームとはどのようなものになるのですか。
石井 2つのプラットフォームを考えています。1つは、ロジスティクスプラットフォーム、もう1つは流通プラットフォームです。より多くの方に利用してもらえるのは流通プラットフォームです。医薬品は、その流通過程において所有者が変わっていきます。製薬メーカーだったり、卸売事業者だったり、ドラッグストアや病院ということもあります。我々はこの流通過程におけるデータの履歴を見える化したいと考えています。そして、ここのポイントはデータの書き換えができないということです。
―― 書き換えできないということは、偽薬の混入も防げますね。
石井 そうです。流通の過程の中で、履歴が書き換えられるようなことがあれば、偽薬の混入は防げません。医薬品そのものが変わってしまうリスクもあります。これをシステム上でどう防ぐかで開発したのがブロックチェーン技術を使うことです。仮想通貨で利用されたブロックチェーンですが、私たちはそれを医薬品の流通にも応用しようと発想したのです。これはすでに医薬品メーカーに提案させてもらっています。将来的には、コンソーシアムを組んで、プラットフォームを運用していこうという考え方が重要だろうと思っています。今後はより多くのさまざまな医薬品業界の関係者に提案して、検討してもらうことがこれから一層重要になると思っています。
―― もう一つのロジスティクスのプラットフォームというのは。
石井 プラットフォームとなると、ロジスティクスの観点では、1つのポイントがあります。
例えば、以前は医薬品の温度管理と言えば、空間管理にとどまっていました。それは倉庫の温度管理、あるいは車両の温度管理といったもので、それで温度管理ができていたとしていました。それはそれぞれの場所・空間での温度管理であり、医薬品自体の温度管理ではありません。医薬品の温度管理はできていますか、と問われたときに、中々答えづらいところがありました。医薬品そのものの温度計測がされていなかったのです。今回、我々は医薬品そのものの温度管理をしていこうと。医薬品にロガーとなるデバイスを貼付し、ゲートウェイを通じてクラウド上に送信することで、データとして把握できるということです。
―― そのような機器類は完成しているのですか。
石井 計測する機器の方はすでに完成しています。今、テストしている最中ですね。
―― 医薬品に付けるものはRFIDのようなものですか。
石井 RFIDにもさまざまなものがありますからね。今、医薬品事業部とデジタルプラットフォーム戦略室が共同で開発にあたっています。大まかな要件はすでに提起されており、開発の段階に入っています。ロジスティクスプラットフォームおよび流通プラットフォームのそれぞれのサービスインに合わせて、稼働させたいと思っています。
―― トレーサビリティがこのシステムの一つのポイントですね。
石井 医薬品の保管期間や在庫などの管理はこれまで個々に行われていました。そのため、どれだけの量が全国にあるのか、実際上よくわかっていなかったのです。従来からそれらのトレースができれば総量把握もできますし、全体の中の総コストのコントロールや危機管理に関しても対応できるという考え方がありました。このソリューションは、オープンなプラットフォームにしていくつもりですので、医薬品業界に投げかけることによりこれまでの流れに一石を投じることができるものと思っています。
―― 医薬品産業全体に提案ということですね。
石井 そのためのオープンなプラットフォームということです。医薬品業界でもこれまで何度も検討されていましたが、プラットフォームという考え方で実際にオペレーションできるのかという点でとどまっていました。このオープンなプラットフォームというのが肝心かなめになりますね。
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