日常的に高めたい「物流はインフラ」
―― ここ最近、物流は重要なインフラという言葉を聞きますが。
黒岩 今回の新型コロナ禍等で物流の重要性が認識されたということですね。でも、これは毎度のことで、東日本大震災の時も同様でしたね。一時期物流は重要だと喧伝されても、すぐに忘れられて、物流は悪だ、物流はコストだ、に変化しますからね。何か大変な事象が起こると「物流は大切」の大合唱が始まり、喉元過ぎれば忘れ去られてしまいます。いわゆる空気とか水といった感覚なのかもしれません。日常的に「物流はインフラ」として重要だということを高めていく必要があります。
―― なぜそうなるのでしょう。
黒岩 物流というのが一般の人には見えにくいからでしょう。運んでいるものが何かわからないことが大半ですし、また、物流はコストなんだから、ないほうが良いに決まっている、トラックも邪魔だというネガティブな考え方を持つ方がいらっしゃることもあるでしょう。ただ、以前は見えなかった物流原価が顧客にも見えるようになってきた部分があります。
―― 物流の原価が分かると、運賃交渉しずらいのでは。
黒岩 確かにやりづらいところもあります。例えば、ある顧客を獲得しようと、原価を極端に割り込んで価格を提示する物流事業者がいます。いわゆる、高速代や燃料費が出ればいい、回転資金としてキャッシュが入ればよいと考えている業者もあります。そうなると、顧客を奪われることになります。しかし、長続きはしませんね。原価が分かることで、荷主も物流事業者も納得できる関係を作っていくことができるものと思います。そうしないと長続きはできません。
―― 物流事業者の数は現在6万社程度ですね。
黒岩 規制緩和で一時は7万社くらいまで増え、今は6万社程度ですね。事業者の数は規制緩和次第で増えたり減ったりします。まだまだ多いですね。
―― EC需要の活発な動きの中、送料無料の表記が多くあります。
黒岩 送料が無料になるはずがありません。どこでもドアじゃないんですから。商品の価格には、流通関連費用も含まれています。送料無料ではなく、送料は当社が出しますということですからね。
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