公正取引委員会は12月6日、楽天グループが楽天市場の出店事業者のうち「共通の送料込みライン」への不参加店舗に対し、不利益となるように取引の条件を設定、もしくは変更、または取引を実施している疑いのある事実が認められたと発表した。
「共通の送料込みライン」は、原則税込3980円以上の注文の場合に「送料無料」と表示する施策。
当初は、楽天市場の出店事業者に対して2020年3月18日からの一律導入が計画されていたが、公取委が同2月28日に東京地裁へ一律導入の一時停止を求めて緊急停止命令の申立てを行ったことから、楽天グループが同3月6日に「共通の送料込みライン」の適用有無を店舗で選択できるようにした。
公取委は、楽天グループの対応を受けて、当面は一時停止を求める緊急性が薄れるものと判断し、同3月10日に緊急停止命令の申立てを取り下げたが、出店事業者の選択の任意性が確保されるか否かを見極める必要があると判断し、継続して審査を実施。
その結果、2020年3月6日頃以降、営業担当者等が出店事業者に対して「共通の送料込みライン」への参加を促す際に、「今後、参加店舗の取扱商品を優先して上位に表示する仕様に変更するため、不参加店舗の取扱商品は上位に表示されなくなる」「一度参加店舗の取扱商品に絞り込む検索を行ったユーザーの端末ではその状態をデフォルトの設定とする仕様に変更するため、不参加店舗の取扱商品はユーザーが自ら当該設定を解除しない限り表示されなくなる」「共通の送料込みラインに参加しなければ次回の契約更新時に退店となる」「参加店舗の売上げを著しく伸ばす大型キャンペーン等の施策を今後実施していくため、不参加店舗もいずれは参加しなければならなくなる」など、不参加店舗を不利にする取扱いを示唆するなどしていた事例が認められた。
公取委は、これらの事例が独占禁止法違反となり得るという考えに基づいて審査を行ってきたところ、楽天グループは、「共通の送料込みラインへの参加有無について出店事業者の意思を尊重し、独占禁止法に違反する行為を行わない」「共通の送料込みラインへの参加を余儀なくされた店舗の適用対象外申請を制約する取扱いを行わず、出店事業者に示唆しない」といった会社方針を営業担当者と出店事業者に周知することや、この会社方針に違反する働き掛け等に対する処分規程を整備するといった措置を採ることを公取委へ申し出た。
これに対して、公取委は、楽天グループが申出の改善措置を実施した場合、出店事業者の選択の任意性が確保され独占禁止法上の問題は解消されるものと認められると判断。今後、楽天グループが申し出た改善措置を実施したことを確認した上で、同件に対する審査を終了することとした。