LNEWSは、物流・ロジスティクス・SCM分野の最新ニュースを発信しています。





価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

2022年12月14日/調査・統計

公正取引委員会と中小企業庁は12月14日、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ(転嫁円滑化施策パッケージ)」に基づく法遵守状況の自主点検の結果を取りまとめ発表した。

公取委と中小企業庁は、転嫁円滑化施策パッケージに基づく取組として、法違反が多く認められる業種(道路貨物運送業を含む19業種)について、事業所管省庁と連名で、関係事業者団体に対して、傘下企業による法遵守状況の自主点検の実施を要請。自主点検の結果等について、12月14日に「法遵守状況の自主点検結果報告書」を取りまとめた。

それによると、道路貨物運送業による法遵守状況は全ての点検項目で19業種平均を下回っており、価格転嫁が進展していない状況が改めて浮き彫りとなった。

以下、報告書の中から道路貨物運送業の回答結果を抜粋する。

<法遵守状況の自主点検 業種別回答割合>
20221214koutorii7 520x369 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

<法遵守に向けた社内管理体制の構築割合>
20221214koutorii 520x277 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

「法遵守に向けた社内管理体制の構築割合」は、19業種中最低の49.4%(19業種平均82.3%)となった。また、法遵守状況の自主点検に関する回答割合も1.3%(19業種平均26.8%)で最低だった。

<価格転嫁状況の認識(発注者の立場)>
20221214koutorii1 520x271 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

<価格転嫁状況の認識(受注者の立場)>
20221214koutorii2 520x284 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

価格転嫁状況の認識については、発注者の立場で「おおむね転嫁を受け入れている」割合は19業種中最低の48.4%(19業種平均81.4%)、受注者の立場で「おおむね転嫁できている」割合は20.5%(19業種平均39.4%)となった。

なお、価格転嫁状況の認識については19業種に共通して、発注者の立場では「おおむね転嫁を受け入れている」との回答割合が高いのに対して、受注者の立場では「おおむね転嫁できている」との回答割合が低い結果となっている。

<「明示的に協議せず取引価格を据え置いた」回答割合>
20221214koutorii3 520x283 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

<「価格転嫁をしない理由を文書等で回答せず取引価格を据え置いた」回答割合>
20221214koutorii4 520x280 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

問題となるおそれのある行為(転嫁拒否行為)に係る認識については、「明示的に協議せず取引価格を据え置いた」との回答割合が32.8%(19業種平均13.8%)、また「価格転嫁をしない理由を文書等で回答せず取引価格を据え置いた」との回答割合が15.2%(19業種平均6.0%)となった。

<「価格交渉促進月間のタイミング等で価格交渉・価格転嫁の要請に積極的に応じていない」回答割合>
20221214koutorii5 520x283 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

価格交渉促進月間については、「価格交渉促進月間のタイミング等で価格交渉・価格転嫁の要請に積極的に応じていない」との回答割合が27.1%(19業種平均12.9%)だった。

<パートナーシップ構築宣言についての対応>
20221214koutorii6 520x281 - 価格転嫁の法遵守状況/運送業は最低レベル、全項目平均以下

パートナーシップ構築宣言については、「宣言しておらず、宣言することも検討していない」と「そもそも知らなかった」との回答割合が合計で47.8%にのぼった。

これらの自主点検結果を受けた今後の取引適正化への取組や考え方として、道路貨物運送業の事業者団体からは、「業界全体として同業種間・異業種間の取引で価格転嫁が十分に進んでいないことから、会員事業者が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できるよう転嫁円滑化施策パッケージに関する取組の周知・啓発を進めたい」

「下請法・独占禁止法の会員会社への周知は鋭意実施する。しかし、コスト上昇分の価格転嫁による販売価格の値上げを推奨することは、取引適正化に向けた取組であっても、独占禁止法の競争制限に抵触する可能性が極めて高く、慎重な対応が求められる。特に、外国人が料金を負担する場合の国際航空貨物は、独占禁止法適用除外などの保護を全く受けていないことを強く認識するべきであり、価格交渉は各社に委ね、業界団体等が介入してはならないと認識している」

「発注先との取引価格については、おおむね転嫁を受け入れているとの傾向にあるが、受注者の立場においては、発注先(荷主)との取引価格についてコスト上昇分の価格転嫁ができていないとの傾向にあった。荷主との運賃交渉において、コスト上昇分の価格転嫁は容易ではないことがうかがえる。今後も下請法制度等の周知に努めていく所存」といった意見があがっている。

また、道路貨物運送業を所管する国土交通省からは、一般貨物自動車運送業について「『燃料費等を含む適正な運賃の収受』という基本的な考え方に基づき、荷主企業や元請事業者等に対して理解と協力を呼び掛けるとともに、関係省庁が連携して、独占禁止法や下請代金法の取締りの強化、下請中小企業振興法に基づく指導、貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけ等の法的措置の実施等を行っているところであるが、発注者、受注者のいずれにおいても価格転嫁を受け入れていない又はできていない事業者が一定数あったことから、引き続き、こうした取引適正化に向けた取組を継続する」

集配利用運送業については「安定的な物流を確保するため、物価高騰下でも価格転嫁により適正な運賃を収受できる環境を整備することが重要である。このため、原料価格、エネルギーコスト等の上昇に係る適切な価格転嫁等に関する下請事業者等に対する配慮について荷主関係団体に要請するとともに、独占禁止法や下請代金法の取締りを強化する等、関係省庁と連携して取引適正化の取組を推進しているところである。今回の自主点検結果においては、発注者、受注者いずれの立場においても転嫁を受け入れていない又は転嫁できていない事業者が確認されたことから、引き続き、関係省庁と連携し取引適正化に向けた取組を推進していきたいと考えている」といった意見があがった。

関連記事

調査・統計に関する最新ニュース

最新ニュース