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未来の物流担う中核人材とは/物流企業、荷主、国交省が討論

2023年01月13日/SCM・経営

国土交通省は1月12日、 経済産業省、SIPスマート物流サービス研究推進法人と共催で、学生や社会人を対象に「第3回高度物流人材シンポジウム~これからの物流を牽引する中核人材~」を開催した。

人手不足やDX化、SDGsやカーボンニュートラルなど、今日的課題や世界規模の社会情勢の変化の中にあって、物流においても新たな視点に立って事業戦略を構築する人材が求められている。同シンポジウムは物流分野へ幅広い人材が参加することを促すことを目的に、東京都内のリアル会場とオンラインのハイブリッド形式で開催。基調講演と、大手物流企業、荷主、国交省職員4名が登壇するパネルディスカッションの2部構成で行われた。

<東京大学先端科学技術センター 西成活裕 教授>

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基調講演では、東京大学先端科学技術センター 西成活裕 教授が「物流起点の経営戦略と人材育成」と題し講演。「古来よりロジスティクスは組織の要。外注するのか内製化するのか、最新マテハンを導入するのかしないのか、社内にこれを真剣に考える人がいないと危ない」と、物流人材の必要性を強調。また、「最近よく耳にする「物流の『全体最適化』について『全体』とは何か、個々の認識が違う。自社の部署連携(小)から、サプライチェーン全体(中)、国家・地球全体(大)まで大きく考えられる人材はいるか?課題は山積しているが、それを解くのはAIではなく人間。人間力を育成することが必要だ」と述べた。さらに、東大で高度物流人材の育成を目的に、2020年度から開講している「先端物流科学持論」について、履修登録者数が22年夏学期に96人に達したと説明。「東大生の就活先としても2024年4月入社に向け、3名が物流(倉庫・運輸)を検討しているとの回答があった」と、物流への注目度の高まりを示した。

<パネルディスカッションの様子>
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その後のパネルディスカッションには、NYKデジタルアカデミー学長・日本郵船イノベーション推進グループ 石澤直孝グループ長(兼任)、NIPPON EXPRESSホールディングス 海野昭良 執行役員 DX推進部、サステナビリティ推進部担当兼DX推進部長兼日本通運執行役員、味の素 上席理事 堀尾仁 食品事業本部物流企画部長、国土交通省 岡野まさ子 審議官(公共交通・物流政策、自動車局、港湾局担当)の4名が登壇。「これからの物流をけん引する中核人材の育成に向けて」をテーマに、活発な討論を行った。

<日本郵船 石澤直孝 NYKデジタルアカデミー学長・イノベーション推進グループ長>
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<NXHD 海野昭良 執行役員 DX推進部、サステナビリティ推進部担当兼DX推進部長兼日本通運執行役員>
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<味の素 堀尾仁 上席理事 食品事業本部物流企画部長>
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ファシリテーターを務めた東京大学の西成教授はまず、「日本に物流起点で経営戦略をつくる経営者が少ないのはなぜか」と問いかけた。これに対し、味の素の堀尾部長は「それだけ日本の物流業者が優秀だったともいえる。リスクがあれば、そこに目がいくはずだが、今まで空気のように、当たり前に届けてくれた。それが当たり前ではないことにトップが気づいたことに端を発し、今物流改革で様々なプロジェクトが立ち上がっている」と回答。NXHDの海野部長は「いかにお客様に物流の悩みを感じさせないかを掲げてきたが、その対価がどんなものか社会全体で考えなければならない」と述べた。

次に西成教授は「今後の物流人材をどのように育てればいいのか」と問題を提起。日本郵船の石澤グループ長は、「競争領域と共同領域をよく考えることが大切だ。海上コンテナがいい例えだが、1つのパイを取り合うのではなく、一緒に市場を増やすという利他の精神を持つ人づくりがマーケットを大きくする。そのためには、座学を体系的に学ぶ場と市場創造にチャレンジさせる両方が必要」と自論を述べた。NXHDの海野部長は「物流はいろいろな顧客の商材を取り扱う。お互いの立場を理解し、課題をひろってくる人材を育てるべき」と語った。

また、味の素の堀尾部長は「サプライチェーン全体で、いい解を見つけようと取り組んでいるが、現場では喧々諤々としていることもある。互いの立場を理解するためには、出向や人事交流など、その場に行くことで広い視野を持ってもらうことも大切。今が物流改革のラストチャンス」だと述べた。国交省の岡野審議官は、「物流人材教育の重要性については総合物流施策大網にも記載されている。異業種との意見交換や人事交流も有効で、産学官の交流なども行われている。2024年問題や、長期的には地球環境問題などの危機感を共有し、壁を乗り越えるチャンスとして、次世代を担う中核人材を育てるべき」と展望を語った。

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