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公取委/独禁法に抵触する共同物流の例を紹介

2023年02月28日/3PL・物流企業

公正取引委員会は1月13日、「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(案)を作成し、公表した。

同案は、2030年度と2050年度の温室効果ガス削減目標を達成するために必要な、環境負荷の低減と経済成長の両立する「グリーン社会」の実現に向けた事業者等の取組について、新たな技術等のイノベーションを妨げる競争制限的な行為を未然に防止するとともに、事業者等の取組に対する法適用や執行に係る透明性、事業者等の予見可能性を一層向上させることで、事業者等のグリーン社会の実現に向けた取組を後押しすることを目的として、有識者の意見を踏まえて作成したもの。

同案の中では、グリーン社会の実現に向けて複数の事業者が共同で取り組む研究開発や購入、物流などの取り組みについて、それぞれ「独占禁止法上問題とならない行為」「独占禁止法上問題となる行為」「独占禁止法上の問題とならないよう留意を要する行為」の3つに分けて想定例を挙げながら説明している。

このうち、共同物流については、「物流業務を調達する事業者の主たる事業に付随するものであり、重要な競争手段(価格等)に影響を与えることが少ないことから、生産や販売等の共同化に比べて独占禁止法上問題となる可能性が低い」としながらも、「物流サービスの調達市場、または共同物流の対象商品の販売市場における競争が実質的に制限される場合は、独占禁止法上問題となる」としている。

独占禁止法上問題となるか否かの具体例としては、独占禁止法上問題とならない行為として、「(A)配送効率化等による温室効果ガス削減のための共同物流」を、また、独占禁止法上問題となる行為として「(B)価格等の情報交換・共有を伴う共同物流」をそれぞれ挙げている。

(A)のケースでは、「特定の業態の小売業者X、Y、Zが、自社の店舗への商品の配送で排出される温室効果ガス削減を目的として、配送の効率化により温室効果ガス削減が見込まれる特定のルートに関して、共同で配送を実施した。3社は、共同配送の実施にあたって、各店舗で販売する商品の価格や数量等の重要な競争手段に関する事項に関して必要な情報遮断措置を講じた。また、各店舗での商品の販売に係るコストに占める共同物流のコストの割合が極めて小さく、さらに配送業務の調達市場にはさまざまな事業者が存在しており、3社の合計市場シェアは10%程度だった」としており、共同配送の実施にあたって商品の価格や数量等の重要な競争手段に関する情報を遮断する措置を講じていること、また、商品の販売に係るコストに占める共同物流のコストの割合が極めて小さく、3社の合計市場シェアが10%程度と低いことから、独占禁止法上問題にならないと判断している。

一方、(B)のケースでは、「商品Aの製造販売業者X、Y、Zは、商品Aの製造販売市場で合計市場シェア70%を占めており、需要者への商品Aの輸送にあたって排出される温室効果ガス削減を目的として、各社が保有する物流センターを相互に開放し、各社の効率的な輸送に役立てることとした。3社は、物流センターの相互利用を通じて、お互いが顧客に対して販売する商品Aの価格や数量等を共有し、定期的に商品Aの値上げ幅を共同で決定した」としており、物流センターの相互利用したことで3社がそれぞれの商品価格や数量等を共有し、定期的に商品の値上げ幅を共同で決定していることから、独占禁止法上問題になる行為と判断している。

なお、公取委は、同案に対して関係各方面へ意見を募集。これに対して、経団連が2月13日付で意見を提出しており、共同物流については「『参加者の市場シェアや商品の供給に要するコストに占める共同物流のコストの割合に基づき競争制限効果を検討する』という従来の見解が記載されているのみであり、グリーン社会の実現に資する観点をどのように考慮するのか、明確にされていない。運輸部門で発生する温室効果ガスの大幅な削減を実現するためには、業界全体で物流効率化を実現することが効果的であり、こうした『温室効果ガスの削減効果』は、競争促進効果に含まれるべきと考える」とコメントしている。

■「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方」(案)
230113_doc02.pdf (jftc.go.jp)

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