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2026年に自動運転トラックで幹線輸送の自動化目指す

2023年08月29日/IT・機器

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トラック幹線輸送の自動化に挑戦するベンチャー企業が現れた。「2024年4月以降、労働時間の上限規制によって中小トラック事業者の輸送キャパシティが減少する。そこにサービスを提供し、トラック輸送を安定させるのが我々の役目だ」。そう力強く語るのは、自動運転トラックによる幹線輸送サービスを開発するT2の下村 正樹CEOだ。

同社は三井物産と、ディープラーニング(深層学習)によるAIなどの技術開発を手がけるベンチャー企業Preferred Networksの合弁会社として2022年8月に設立。『日本の物流の未来を支える』をミッションに掲げ、物流業界のドライバー不足解決に向けて、2026年3月をめどにレベル4自動運転トラックを用いた東京~大阪間での幹線輸送サービスの提供を目指している。

同サービスでは、高速道路の出入口付近に有人運転からの切替拠点を設け、高速道路区間のみを無人運転で走行することにより、幹線輸送の自動化を図る計画。サービスはT2自らがトラック運送事業者となって、物流事業者から輸送を請け負う形で提供する。スタートアップには技術のみを提供する企業が多い中、自らリスクを負ってトラックの実運行を担おうとするのは、同サービスを「本気で物流インフラにする」という決意の表れだ。

<下村CEO>
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サービス化に向けては、2023年3月までに閉域での実証を終え、同4月からは公道での走行実証に着手している。4月に行われた実証試験では、保安要員としてのドライバーが搭乗した状態で、東関東自動車道『谷津船橋IC〜湾岸習志野IC』間の約2kmを時速70~80kmで走行した。この走行実証について下村CEOは、「普通に走る分には合格点だが、車間距離を保つ際のブレーキングなどに課題がある」と評価した。

現在の設定では安全マージンを大きく取っているため、ベテランのトラックドライバーであれば減速しないような場面でも、設定された車間距離まで近づけば必ずブレーキをかけてしまう。ブレーキングの回数が増えると、立ち上がりの加速で燃費が悪化してしまうため、今後はこうした局面での判断に実際のドライバーの知見を取り入れていく必要があるという。

<走行実証動画>

天候への対応もサービスの実用化に向けた大きな課題だ。今回の走行実証は好天下で行われたが、もし大粒の雨や雪が降ればセンサーが雨粒を障害物として誤認識する恐れも出てくる。また、トンネルの出口や沿岸部での横風への対応など、人であれば簡単に対処できることでもAIには一つ一つ教え込む必要があり、課題は山積している。

「夜中にふと新たな課題が思い浮かんで目が覚めてしまうことがある。あとたった3年でサービス化しなければならないのは正直プレッシャーがかかるが、それでも日本の物流の未来を支えるために前へ向かって進むしかない」と下村CEO。今後は、東名、新東名での走行実証を繰り返し、段階的に走行距離を伸ばしつつ、これらの課題を一つずつクリアし、2026年のサービスインを目指していく。

<三菱地所の小張 貴史執行役員(右)と握手を交わす下村CEO>
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<三菱地所が京都府城陽市で開発中のIC直結型物流施設>
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目の前にいくつもの難局が立ちはだかるT2だが、同社のチャレンジに対して賛同する仲間が次第に集まりつつある。その1社が6月に提携を発表した三菱地所だ。同社はT2が実施したプレシリーズAラウンドの第三者割当増資12億5000万円を引き受けたほか、京都府城陽市で開発中の新名神「宇治田原IC」直結の物流施設を自動運転トラックの発着拠点として提供する。

自動運転技術を開発するにあたり、歩行者や信号など認識するものが多い一般道の走行は技術的なハードルが非常に高い。IC直結の物流施設を発着拠点にすれば、技術開発の負荷を大幅に下げることができる。一方で、三菱地所側では自動運転トラックに対応したIC直結の物流施設を大都市圏に開発する構想を掲げており、同物流施設の開発にT2の知見を生かすことができる。「提携を打診に行った際も、三菱地所はT2の取り組みの意義にいち早く気付いてくれた。懐が深く、最良のパートナーだと思っている」と下村CEOも大きな信頼を寄せる。

このほかにも、T2では8月末にシリーズAラウンドの第三者割当増資をクローズする。同ラウンドでは、物流や金融など自動運転を実現するためのキープレイヤー9社程度が仲間に加わる予定だ。「サービスの実現には、車両メーカーや物流会社など、さまざまな業種のパートナーの力が必要だ。今後もT2の取り組みに賛同してくれる仲間を積極的に集めていきたい」と語る下村CEO。日本の物流の未来を支えるためのT2の挑戦は続く。

※下村CEOへのインタビューの詳細は姉妹サイト『トラックニュース』にて後日掲載予定。

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