日清食品と全国農業協同組合連合会(JA全農)は10月31日、物流と原材料調達・供給において包括的な連携を開始すると発表した。両社は、米穀をはじめ国産農産物の中長期適な安定供給に関する取り組みを強化するとともに、日清食品のカップライス製品と米穀等の共同輸送を開始する。これにより国産米の消費拡大とサプライチェーンの効率化を進め、2024年問題、2030年の物流クライシスなど社会課題解決に対応していく。
<調印式の様子 左から、JA全農の高尾常務理事と日清食品の深井取締役>
JA全農本社において、同日調印式を行い、取り組み内容や今後の展開などについて説明した。日清食品の深井雅裕 取締役は、「物流問題は今や大きな経営課題となっている。共同輸送としてはこれまで、ビールや飲料メーカーと水平連携し取り組んできたが、JA全農とは垂直連携ということになる。当社の『カレーメシ』は売上100億円を達成しており事業拡大が見込まれる。原材米の安定調達と共同輸送により、社会課題解決を目指したい」と抱負を語った。
JA全農の高尾雅之 常務理事は、「これまで日清食品と15年間、加工米の取引きをしてきた。米は重量物であり荷役が重労働となる。これを合理化するため昨夏から両社で検討を重ねてきた。共同輸送により物流の合理化を図るとともに米の安定的な販路を確保し、生産者の事業持続性につなげたい。食と農に関わるすべての人のウェルビーング実現は、両社共通の取り組みだ」と述べた。
具体的には、岩手~茨城間および福岡~山口間の2つのルートからスタート。岩手~茨城間では今月から週2回、共同輸送を行っている。まず、岩手のJAおよびJA全農の米穀保管倉庫から関東にある精米工場へ米穀をトラック輸送し、同じトラックで茨城にある日清食品の生産工場から岩手の製品工場へインスタントラーメンを輸送する。これによりトラック1台当たりの実車率が約12%高まる見込み。
福岡~山口間では、福岡のJA全農精米工場から日清の生産工場へカップライスの原料米をトラック輸送した後、山口の生産工場で作ったインスタントラーメン等の製品を、同じトラックで福岡の同社倉庫へ輸送する。荷降ろしと積込みを同じ場所で行うことで移動時間が「ゼロ化」し、ドライバーの拘束時間が約7%削減する。さらにパレットなどの物流資材についても一部区間で製品と一緒に輸送することで、トラックの積載率が約9%向上、CO2排出量も約17%削減できると試算。11月から週4~5回の定期輸送を開始する。
両社は他のルートについても検討を進めており、鉄道コンテナや船、トレーラーを利用した共同輸送についても検討中だ。さらに今後、サプライチェーン全体へ連携を拡大していくことも視野に入れおり「共同輸送には生産地と製品ストックの場所が近いことが望ましい。JA全農は全国に物流網があり、共同保管についても踏み込んでいきたい。将来的には、経産省や国交省が進めるフィジカルインターネットの1つの種になっていけば」(日清食品 深井取締役)と展望を語った。