日本郵船は5月26日、完全電動作業船「e-Crea(エクレア)」がグループ会社の京浜ドック子安工場(横浜市)で竣工したと発表した。
「e-Crea」は発電機を搭載しないバッテリー駆動の作業船で、子安工場でタグボートの入渠・出渠時の補助作業に従事する。
建造のノウハウを生かし、船舶の低・脱炭素化を実現するための新技術を確立し社会実装を進めたいという。
特長は、子安工場内の陸上設備から充電したバッテリーのみで駆動すること。CO2を排出せず、化石燃料船に比べ静粛性にも優れる。
全長約9メートルの小型船体に必要機器が集約され、小回りの利かない狭い場所での作業に適している。
建造の技術的には、電動船特有の電池モジュールを搭載するため内部重量がかさみ、船体バランスの維持・調整が難しかったが、機器やケーブルの配置を見直すなど、船体内部の空間を最大限生かす設計変更で対応した。
また、機器、船内を一定温度に保つため、水冷装置や空調ダクトを多層的に配置。バッテリー室は防火や有害ガス対策を強化し、円滑に換気できる構造にすることで、安全性を確保した。
タグボートや作業船に完全電動船を導入することは、船舶自体の脱炭素化にとどまらず、船舶の入出港や修繕などを含む海運・港湾サービス全体の脱炭素化につながると期待されている。
日本郵船グループは、電動化技術の研究開発を継続し、大型船への段階的な応用も検討。今回の知見や運航データを、2026年12月に竣工予定の電気推進タグボートの建造に反映し、省エネ技術や温室効果ガス排出削減のための次世代ソリューション開発に役立てる方針。
■本船概要
船名:e-Crea(エクレア)
全長:約9.0m
幅:約3.0m
深さ:約1.7m
乗員:最大14名
主な用途:タグボートの入出渠や船体移動の補助作業
推進方式:完全電動(バッテリー充電式)
造船所:京浜ドック
船級:日本小型船舶検査機構(JCI)
船主:日本郵船
運航:京浜ドック