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サプライチェーン重視、
Exotecの自動化世界戦略

2023年07月27日/物流最前線

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Exotec SAS ロマン・ムラン共同創業者兼CEO
Exotec Nihon 立脇 竜社長

3次元立体走行自動搬送ロボット「Skypodシステム」の生みの親、Exotecのロマン・ムラン共同創業者兼CEOが、「Exotec東京デモセンター」開設で来日。開設オープニングイベントでは現在の同社の実績を語るとともに、新たに日本での導入企業となったPAL、アッカ・インターナショナルについても紹介。現在ではユニクロ、ヨドバシカメラ、アルプス物流、三井不動産と次々と導入企業が決まっているが、開発当初1年目はプロダクトを形にする資金もなく、今とは比較にならないシンプルで小さなモデルとイメージ図で説明したという。「面白いモノを作ったね」と興味を持ってもらい、同時に信頼を得て契約に結び付いたという。その後はフランスでもカルフールやデカトロンといった大手企業に採用されている。日本法人の立脇竜社長と共に、今後の日本と世界での展開を語ってもらった。
取材日:6月28日 於:Exotec東京デモセンター

<記者会見でのロマン・ムランCEO>
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<記者会見での立脇 竜 社長>
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<Exotec東京デモセンター開所式でのテープカット>
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パンデミックのピンチを
物流改革のチャンスと捉える

――   6月28日の「Exotec東京デモセンター」開設のプレゼンでは、現在のExotec社の現状を発表しましたね。

ムラン   Exotecの最新トピックを数字で説明しました。全世界で運用されているSkypodロボットの累計走行距離は2879万1005㎞で月と地球を37往復する距離になります。システムの累計稼働時間は42万5000時間、99%以上の稼働率です。売上の60%はリピート顧客となっており、世界10か国で100以上のクライアント倉庫で稼働しています。

――   会社設立からまだ日が浅いですよね。

ムラン   2015年に設立しましたので、約8年目ということですね。ルノー・ハイツと共同で設立したのですが、ゴールドマン・サックスが主導する資金調達で3億3500万ドル(約470億円)調達するなど、現在では600人の従業員を抱え、売り上げは2023年度に290万ドルを予想しています。そして、フランス、ドイツ、米国、日本に拠点を構えています。

――   急成長を遂げていますが、ここ数年はコロナ禍で大変だったと思いますが。

ムラン   全世界でコロナ禍に見舞われたわけですが、物流業界も数多くの課題が突き付けられたと思います。しかし、同時にそれはある意味良い機会でもあったと。オポチュニティー(営業活動における提案の機会)を与えられたものと思っています。物流業界での一番の悩みは人材の確保です。そこで自動化を進めるのは当然の成り行きだと思います。同時に、コロナ禍にあって、Eコマースのニーズが格段に上がりました。私どもも、こういった状況に対応しようと、開発を進めて、このSkypodシステムがどれだけ貢献できるか、どれだけの能力を持っているかを遺憾なく顧客に示すことができたものと思っています。

――   物流の困難さが、サプライチェーンへの危機にもつながってきました。

ムラン   そうですね。まさに一般社会においても物流は重要なインフラであるという認識が高まってきました。特に、サプライチェーン戦略をどういう風にしていくのかといったところが自分たちの会社にとってどれだけ重要なのかということにも意識が高まってきました。実はこれは当社のソリューションにとっては追い風になり、この重要なニーズに取り組むことが、従業員採用にもプラスになっていますね。

立脇  日本でも物流に対する考え方、捉え方が大きく変わってきています。荷主側からすると、今までは何かを作った後の付帯物というか、むしろ負担になる部分として物流を捉えていた側面がありました。物流は重要なインフラ産業であるという面がくっきりと表れて、企業として非常に重要なことだというのが、コロナ禍で明確になりましたね。

――  日本の物流は特殊性があり、標準化が難しく、世界の物流とは違うといった点もよく指摘されるようですが。

立脇  やはり日本の物流はそれぞれ特殊な事情がありますが、大きな視点では世界も日本も抱えている課題は同じだと思います。人手が足りないとか、自動化が進んでいないとか、部分最適で全体最適になっていない点とか、物量が増えて個別配送が多くなり、ラストワンマイルをどうするのか、大体課題は同じです。それを解決するにはどうしたらよいのかについて、我々としては、できるだけ標準化したものをお届けし、それに顧客の特殊事情に合わせて若干設定を変えて、スピード感を持ってどんどん自動化していこうというのが当社のソリューションです。これはシステムに柔軟性を持たせているわけですが、システムのコアとなる部分には手は付けません。これは我々のノウハウとして、世界のノウハウを反映・凝縮した製品だからです。これによって不必要なカスタマイズは少なくなるものと思っています。

<東京デモセンターでのSkypodとSkypickerのデモの様子 動画>

<ExotecのSkypodシステムの動画>

他のシステムより集積度高めた
倉庫システム開発で勝機

――  さて、ムランCEOはSkypodのアイデアはKiva System(現Amazon Robotics)を外販しないと聞いて、開発を思い立ったと話されましたが、その理由とは。

ムラン  Kiva Systemを高く評価しており、ロボットやソフトウェア共にとても優れたシステムだと思っています。ただ、棚の高さが2m程度という制約を持っており、倉庫の高さを無駄にするのではないかと考えました。いかに倉庫において集積度を高めた形でスペースを有効利用できるかという点に焦点を絞って考えれば勝機があるのではないかと考えました。高さを10mにすれば5倍の集積度になります。

――  そこで自信を持ってルノー・ハイツ氏と会社を立ち上げたと。

ムラン  すみません。最初からすごく自信があったとなると、とても傲慢な人物のように思われますよ。やはり不安と自信は半々ですね。資金的にも友達を頼ってましたし、思い描いていたような機能が実現できるのかもわかりませんし、とにかく、なんとか機能するものを作らなければということで必死でした。

立脇  私が中から見ていて感じるのは、ロマンとルノーの2人の設立者は着目する点とかアイデアは素晴らしいですね。会社のカルチャーにしても、フラットでオープンで透明性のあるユニークな企業を作り上げています。もし、Kiva Systemが外販していても、違う形で何かを作りあげていたと思いますね。

――  ムランCEOはもともと物流に興味があったのでしょうか。

ムラン  前職がGE(ゼネラル・エレクトリック)ですから、畑違いですよね。実はその前が物流関係の会社だったのです。当時、医療ロボットがとても進んでいると感じていて、この高度なロボットを物流業界で使えるようにならないかなと考えていました。

――  実際に会社を立ち上げてからはいかがでしたか。

ムラン  やはり1年目が一番難しい年でしたね。1件目の契約が取れるまでは。最初はお金がないので、シンプルで小さなロボットを作り、イメージ図みたいなものしかない状況でした。

――  それで契約がとれたのですか。

ムラン  フランスのECサイトCdiscount(シーディスカウント)というEコマースの大手企業に、「面白いモノを作ったね」と、その状態で契約してもらいました。私たちのことを信じてくれたからこそ、今現在このようなビジネスができていることに感謝しています。その後、スーパーマーケットチェーンのCarrefour(カルフール)やスポーツアウトドア製品のDecathlon(デカトロン)、そして日本ではファーストリテイリング(ユニクロ)に入ることになりました。

立脇  ユニクロには日本で一番大きいシステムが入っています。いくつかのシステムを組み合わせていますが、一つの倉庫に入っているシステムでは一番ですね。

――  日本でも順調ですね。ヨドバシカメラ、アルプス物流、三井不動産、そして今日発表のPAL、アッカ・インターナショナルが採用しています。大手企業ばかりですが、デモセンターを見学して、これは先進的な大型倉庫だけでなく、古い小さな倉庫でも導入できるなと思いました。

立脇  東京デモセンター用の倉庫を借りようとしたときに、この倉庫が最も一般的な小さな日本の倉庫だったので、「まさに日本の倉庫」ということで決めました。あえてこういう場所を東京近郊で探していたので条件として理想的でした。

――  ところで、現在日本では冷凍冷蔵倉庫需要が活発ですが、Exotecシステムは動くのでしょうか。

立脇  冷凍はさすがに無理ですね。チルド環境では大丈夫です。すでにフランスでは実現していますので、そのシステムを日本に移植することも可能です。

――  今回、この東京デモセンターではSkypickerというピッキングシステムを加えて展示していますね。

立脇  Skypickerのアームのロボット自体はロボットメーカーから購入しているものですが、制御のカメラの仕組みとか、ソフトウェアは全部自前で作っており、3Dカメラでのピッキングと従来のマニュアルピッキングを組み合わせることで、ロボットでできるものはロボットで、できないものはマニュアルでというように、非常に効率的にピッキングができるシステムとしています。例えば、自動でピッキングできるものは夜中に動かしておいて、朝出勤した人が残りのものをピッキングするというように、有効に時間を使えます。

――  ムランCEOが日本法人に今後期待することは。

ムラン  私どもにとって、日本の市場は非常に大きなストーリーの一端を担ってくれる重要な市場だと思っています。現在、全世界の売上の約30%が日本市場で、残りが欧州と米国になっています。日本はポテンシャルが高いのでまだまだ需要はあると思っています。

<インタビューに答える立脇竜社長>
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<インタビューに答えるムランCEO>
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2024年問題は荷待ち時間解消
Skypodが最適システムになる

――  今、物流業界では2024年問題が注目されています。ドライバーが今後減少するのが確実な中で、物流倉庫での自動化も大切な要素になりますね。

立脇  昨年あたりから2024年問題が日本でいろいろクローズアップされていますね。我々は、2024年問題はトラックをどう増やすか、どう便数を確保するかという問題よりも、荷待ち時間に30%の時間を浪費していることにあると思っています。ですから、荷主側、倉庫側としては、荷待ち時間をなくし、順立てされた効率的な運営が求められています。その実現に最も適したシステムがSkypodシステムだと自負しています。

――  2024年問題は待ったなしです。これまでのように、他の運送会社に頼むということが、事実上できない環境下になりますね。

立脇  パワーバランスが相当変わってきましたからね。きちんと荷主側もビジネスとして付き合っていかないと、今までみたいに値上げは認めないとか、いくらでも待たせる、なんてことはできなくなりますね。私どものシステムを導入すると、デリバリー部分の効率化、トラック関係の効率アップにも貢献できます。例えば配送経路ですが、トラックドライバーが待たされることなく、最適な経路で配送するには、やはりどうしても高度なロボティクスが不可欠だと思います。サプライチェーン周りの課題というのは、最も得意な分野ですし、大きなビジネスチャンスだと思っています。

――  物流コンサルティングの部分も御社では展開するわけですね。

立脇  そうです。やはり私どものアドバンテージは大きいシステムも小さいシステムも両方対応できるということです。顧客のサプライチェーン環境を見せていただき、倉庫の大きさや立地等適切なものを提案して進めていくコンサルティングを行い、全体最適を目指していく方式です。

――  さて、今後御社が注力される分野はどのようなものでしょうか。もちろん全方位で展開するとは思いますが。

立脇  そうですね。やはり一番にEコマース関係です。Eコマースを一つのバーティカルとして考えています。そして、アパレル関係とグローサリ―という食品スーパー関係ですね。ここは当然Eコマースにも関わってきますし、我々の強みでもある分野です。さらに、部品関係ですね。まさしくアルプス物流さんがそうですが、顧客の製造ラインのところに部品を届けるという分野です。そして、3PL事業者ももう一つの大きなバーティカルとしてフォーカスしています。

――  ところで、自動化とかロボット化についてフランスと日本の物流の違いはありますか。

ムラン  物流環境においては、自動化、ロボット化は日本の方が進んでいます。日本人の方がその方面の技術的なことに慣れているからでしょうね。ただ、フランスでも、私たちが創業した2015年あたりから、自動化、ロボット化を進めるスピードは増していますね。

――  トラックドライバーについての待遇はどうでしょう。

ムラン  フランスの場合、トラックドライバーの待遇は良いですね。フランスはEU、欧州という枠組みの中ですので、フランスのトラックドライバーが必ずしもフランス人ではなく、例えばポーランド出身だったりと、国際色豊かです。むしろ足りないのが、倉庫要員で、割合と賃金が低く、中々集まらないようです。

――  最後になりますが、LNEWS読者にメッセージを。

ムラン  将来に向けて、私はまだまだ多くのチャンスがあるとみています。特にサプライチェーンの領域は変化が激しく、そういった環境の中で、優れたテクノロジーというのは、これからもまだまだでてくると思いますし、私どもでも、すでに様々なアイデアをロードマップ上に載せており、期待していただければと思っています。

取材・執筆 山内公雄

<立脇社長(左)とムランCEO>
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■プロフィール
ロマン・ムラン(Romain Moulin)Exotec SAS 共同創業者兼CEO
2015年にルノー・ハイツ(Renaud Heitz)と共同でExotec社を創業。GEとBA Systemでロボットアーキテクトとテクニカルエンジニアを務め、10年以上ディープテクノロジーシステムに没頭したのち、小売店の倉庫自動化の課題解決に着目。
フランスで生まれ育ち、フランスの航空宇宙工学の雄SUPAERO大学を卒業

立脇 竜(たてわき りゅう) Exotec Nihon 社長
欧州を中心に海外での勤務は14年以上に及び、日本、ドイツ、イタリア、米国の産業機器リーシング企業でセールス・マーケティング責任者、カントリーマネージャーやリージョナルマネージャーを歴任。前職Cognexのジャパンディレクターを経て、Exotecに入社。日本で工学学士、ドイツで経営学修士の学位を取得。

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