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冷凍冷蔵倉庫からデータセンターまで
蓄積した技術とノウハウで応える

2021年10月01日/物流最前線

データセンター等3つの展開で需要喚起

――  さて、今後の展開ですが、冷凍冷蔵倉庫の需要が増していると聞きますが、御社にとっては期待できる動きですね。

秋山  しばらくは日本でも冷凍冷蔵倉庫の需要は続くと思いますし、そうなるように期待しています。冷凍冷蔵倉庫をマルチテナントで展開できないかというような相談もいただいていますが、これは中々難しい課題ですね。BTS型としては先日、プロロジスさんのプロロジスパーク海老名2で一つの答えを出しました。他のディベロッパーさんからの要望も多く、その辺を共同で課題を解決していきたいと思っています。

――  新しい市場としてはどのような展望ですか。

秋山  これは私の個人的な考えですが、弊社が海外に進出して50年以上経ち、今では東南アジア、中近東、アフリカなど50を超える国で活動しています。こう見ると、いずれも亜熱帯か熱帯地域なんですね。この地域の国が発展していけば、必ず冷凍冷蔵倉庫の需要は急増するものと考えています。将来的には、日本でノウハウと技術を蓄えた冷凍冷蔵倉庫建設を海外でもさらに展開したいと思っています。

――  現在、海外での冷凍冷蔵倉庫の展開は。

秋山  今の所、タイとベトナムでそれぞれ1件づつ施工実績があります。東南アジアでは確実に需要が高まっています。これが今後の展開の1点目です。2点目として、耐震についてです。冷凍冷蔵倉庫の約50%はまだ、旧耐震基準のままだということです。これはいざ工事にかかると、中の商品を外に出し、完成したら戻すということになり、工事中はそこでの営業がストップすることになります。中々対応が難しいのですが、弊社では商品を入れたままで耐震工事ができる「THJ耐震補強工法」を開発しています。これを利用しますと、常温と同じような条件で施工ができます。-25℃の中で、通常営業しながら耐震工事ができるということです。

――  その技術は完成しているのでしょうか。

秋山  すでに、実験工事も行っており、思った通りの成果が出ています。営業を止めることなく、工事ができるということで、これも今後積極的に展開していきたいと思っています。そして、もう1点がデータセンターの展開です。

――  データセンターはディベロッパーからもこのところよく聞く話ですね。

秋山  なぜ、データセンターなのか。DXの時代ですし、この間デジタル庁も発足しましたし、データセンターの需要は確実に高まってくると思います。冷蔵倉庫で培った温度管理や床荷重、耐震構造等はデータセンター建設でも応用できる技術だと思っています。弊社の技術やノウハウが存分に生かせる分野ではないでしょうか。冷凍冷蔵倉庫も伸ばしつつ、新しい領域へ進出も視野に入れています。

――  冷凍冷蔵倉庫の海外展開、旧耐震基準のままの冷凍冷蔵倉庫のリニューアル、そして新たにデータセンターへの進出ということですね。

秋山  その3つのことを今後の倉庫事業の基本として進めていきたいと考えています。それと、もう一つ、重要なことにカーボンニュートラルへの取組みがあります。昨年菅首相が打ち出した2050年までにCO2排出量をゼロにするという方針に基づき、現在港湾エリアで水素・アンモニアを利用し、コンビナートでは各企業がそれをエネルギー源にするという構想があります。臨海部の企業の工場や冷凍冷蔵倉庫も水素をエネルギー源に使うという構想です。港湾は日本の輸出入の99.6%を占める物流の大拠点ですので、国交省ではカーボンニュートラルポートを表明しています。

――  湾岸エリアでの取り組みとなるとマリコンとして実績のある御社は有利ですね。商船会社が水素・アンモニア輸送船をこのところ相次いで完成させているのもその一環ですか。

秋山  そういうことです。昨年度から検討が始まっており、東京港、横浜港、川崎港、小名浜港、新潟港、神戸港の6港で実際の運営等についての検討・シミュレーション等も始まっています。得意分野である海上土木の事業と共に、倉庫建築も関係してくるビジネスですので、大きなビジネスチャンスだと思っています。

――  お話を伺っていると、まさに追い風が吹いている感じですね。

秋山  少しいいことばかり話過ぎましたね(笑い)。でも、いくら風が吹いてもそれをきちんと受け止めないといけませんからね。それに、脱炭素の取組みは生半可な覚悟ではどの企業も非常に厳しいものと思います。建設会社としても、脱炭素のアピールを積極的に行っていくつもりです。

――  お忙しい毎日だと思いますが、ストレス等の解消は。

秋山  御酒が大好きなんですが、コロナ禍で、社内の行事でも夜の会食等もすべてストップ。送別会もできていませんからね。今は家でたしなむ程度にやっています。冷凍食品は良くおつまみにしていますが、最近の冷凍食品は本当によくできていますね。後、運動不足なので、ウォーキングはこの20年間欠かしていません。趣味はお酒を飲みながらビートルズを聴くことですね。彼らには良い曲が一杯あり、昔からお気に入りのアーティストでよく聴いています。ただ、早く新型コロナ感染が収まって多くの人とお酒を飲み交わすときが戻ればいいんですけどね。

<秋山社長>
20210927toakk11 520x347 - 物流最前線/東亜建設工業 秋山 優樹 社長インタビュー

■プロフィール
秋山 優樹 (あきやま まさき)
学歴
1975年3月 中央大学理工学部土木工学科卒業
職歴
1975年4月 東亜建設工業入社
2001年6月 同社 千葉支店技術企画室長
2002年4月 同社 千葉支店工事部長
2004年4月 同社 千葉支店長
2007年4月 同社 横浜支店長
2007年6月 同社 執行役員 横浜支店長
2010年4月 同社 執行役員常務 土木事業本部長
2010年6月 同社 取締役兼執行役員常務 土木事業本部長
2013年4月 同社 取締役兼執行役員専務 土木事業本部長
2014年4月 同社 代表取締役兼執行役員副社長 安全環境部統括
2016年6月 同社 代表取締役社長兼執行役員社長
       現在に至る

■数字で見る東亜建設工業
創業:1908年
創立:1914年3月4日
設立:1920年1月23日
従業員数:1525名(2021年3月31日現在:単体)
主な資格保有者数
博士号 15名 技術士 169名
一級土木施工管理技士 762名
一級建築士 108名
一級建築施工管理技士 288名
2021年3月期 決算短信(連結)
売上高:1897億1200万円(前年同期比0.3%減)
営業利益:87億1400万円(前年同期比9.5%増)
経常利益:92億4700万円(前年同期比21.6%増)
親会社株主に帰属する当期純利益:68億5900万円(前年同期比37.0%増)

2022年3月期 第1四半期決算短信(連結)
親会社株主に帰属する四半期純利益11億3200万円(前年同期比31.2%増)

東亜建設工業ホームページ
https://www.toa-const.co.jp/company/

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