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物流最前線/霞ヶ関キャピタルが開く冷凍自動倉庫の新時代

2024年11月27日/物流最前線

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冷凍冷蔵倉庫の需要が急速に増している中、霞ヶ関キャピタルが「冷凍自動倉庫」と「COLD X NETWORK」の2つの強力な差別化アイテムを手に、冷凍冷蔵倉庫市場に攻勢をかけている。「2024年問題を契機とした物流の最適化・効率化と従業員の労働環境の改善が背景にある」と語るのは杉本 亮副社長。難しいと言われていた冷凍倉庫の自動化に挑み、預けたい期間、必要なスペースだけ利用できる冷凍保管サービスを提供する、まさに新機軸と言える展開について、今後の展望も含めて聞いてみた。 取材:10月11日 於:霞ヶ関キャピタル本社

<杉本 亮副社長>
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グロース市場からプライム市場に
冷凍冷蔵倉庫に優位性を持つ企業に発展

――  杉本副社長が前回この「物流最前線」のコーナーに登場されたのが2022年の11月です。この2年間の間に、物流施設のデベロッパーとしてすっかり認知されました。

杉本  新型コロナウイルス感染症の影響をはじめ、さまざまな出来事がありましたが、おかげさまで、冷凍冷蔵倉庫を中心とした物流施設開発において多くのご支持をいただくことができました。当時は、東京証券取引所のグロース市場に上場しておりましたが、2023年10月にプライム市場に指定替えしています。事業面では、物流施設とホテルの投資開発に注力していましたが、現在ではヘルスケア事業や海外事業にも事業領域は拡大しているところです。

――  御社の特徴として、LOGI FLAGのブランド名で冷凍冷蔵倉庫に重点を置いていると感じます。

杉本  そうですね。現在、LOGI FLAG COLD(冷凍冷蔵倉庫)、LOGI FLAG Fresh(チルド倉庫)、LOGI FLAG DRY&COLD(3温度帯倉庫)、そしてLOGI FLAG TECH(冷凍自動倉庫)を展開しています。

――  ここ数年、冷凍冷蔵倉庫の需要が増していますが、当初から冷凍冷蔵倉庫需要がこのように拡大すると見越しての展開でしょうか。

杉本  これは私の前職での経験が大きく影響しています。大手総合デベロッパーに在籍していた際、首都圏の冷凍倉庫の売買に携わり、その倉庫は現在もとても良好な稼働を続けています。当時、テナントさんから、移転を検討されているという話を伺いましたが、移転先がなかなか見つからないという課題がありました。その時に需要はあるものの供給が非常に限られている市場であることに気づき、非常に興味深いマーケットだと感じました。さらに、外資系ファンドに勤めているときに、築古の冷凍倉庫をリノベーションするプロジェクトを担当し、古い設備の更新や防熱材・断熱材の張替えを行い、比較的成功を収めました。この経験を通じて、土地を含めた冷凍冷蔵倉庫の新規開発も十分に成功できると確信しました。そのため霞ヶ関キャピタルに入社する際には、ぜひ冷凍冷蔵倉庫の事業に取り組みたいと思っていました。

――  当初から自信をお持ちだったのですね。

杉本  そうですね。さらに2030年にはフロンの生産が全廃される事が決定しており、フロンが使用できなくなることは既に分かっていました。そのため、冷凍冷蔵倉庫の更新、建て替えの需要が今後ますます活発になることは予測していました。

――  普通の倉庫に比べて冷凍冷蔵倉庫では立地面でも特異性があると聞いていますが。

杉本  立地というよりも、エリアを重視しています。基本的に冷凍冷蔵倉庫は消費地である大都市の近郊エリアに固まっています。これは普通の倉庫にも共通する点ですが、季節波動により繁忙期に増加する荷物を、近くの倉庫に分散させるということがよく行われます。そのため、既存の冷凍冷蔵倉庫エリアを中心に展開していく事が事業を進める上で重要になってきます。

――  そのエリアに進出しようとすると結構土地代は高くつき、賃貸料にも影響するのではないですか。

杉本  確かに土地代は高くなります。そのうえ、建設費も高くなる傾向ですが、どのデベロッパー系が手掛けても、それは同様です。単純なコストだけでなくオペレーションの効率化等も含め、総合的に妥当な価格であると判断いただけるよう努力していきたいと考えています。

<LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ外観>
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<LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰ内観 -25℃の保管エリア>
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<冷凍自動倉庫の概要図>
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従業員へ新しい働き方を提供
冷凍倉庫の自動化をスタート

――  現在、東京湾沿いに多くの冷凍冷蔵倉庫がありますが、古くなったものも多く、大規模な再開発か建て替え需要が見込まれていますが。

杉本  再開発がいずれ必要になることは、多くの方が認識していると思います。ただし、建て替えるにしても、稼働中の荷物を一時的にでも移動させる必要があり、そのための適切な場所や倉庫がすぐに見つかるとは限りません。そのような理由から、再開発が思うように進まないケースも多いのではと考えています。そうした課題に対し、今回立ち上げたLOGI FLAG TECHが大きな受け皿になると確信しています。

――  先日、LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰを竣工しましたね。冷凍倉庫の自動化と新たなサービスの展開を進められています。

杉本  9月30日に新しい施設が竣工いたしました。JA三井リース建物さんと共同開発したものです。施設の概要についてですが、立地は関越自動車道「所沢IC」より約3㎞、延床面積は約9622m2の冷凍自動倉庫です(自動倉庫は吹き抜け構造で床がないため延床面積は仮想床での面積を記載しています)。この施設は、最大4190パレットの収納が可能です。また環境にも配慮し、ノンフロン(自然冷媒)を採用。太陽光パネルも設置しています。

――  特徴的なことがいくつかありますが、まずは冷凍自動倉庫という点についてです。過酷な冷凍倉庫の温度についてはロボットや機械が動かなくなるということをよく聞きますが。

杉本  確かに、ロボットや機械類は温度変化に弱いことはよく言われており、その解決は技術的に依然として難しいと聞いています。そのため、私どもの施設では-25℃と5℃の二つに分けて別のアプローチをとることで、温度帯に応じた自動化を進めています。また、建物自体もこれだけの温度差があると、結露の問題が必ず生じるため、高い断熱機能を確保するための分厚い防熱断熱層を設置することが不可欠です。これにより、倉庫の機能を維持することができます。

――  倉庫内には、入出庫エリアと保管エリアがありますね。この温度管理については。

杉本  当施設は2層構造になっており、吹き抜けの2階(通常の建物で言うところの2~4階)が保管エリアとなっています。このエリアは-25℃で完全自動化されており、人が立ち入る必要はありません。一方、入出庫エリアはチルド帯の5℃に設定しており、ここでは従業員が作業することになります。将来的には、入出庫エリアも完全自動化を実現することを目指しています。

――  以前、冷凍倉庫の自動化については、これは社会問題だ。従業員の過酷な環境を改善したいという話もされていますね。

杉本  確かに、冷凍倉庫の厳しい環境の中で働く従業員さんの大変さは、実際に冷凍倉庫内に入ったときに身をもって感じます。厳しい職場環境を改善させるという観点も非常に重要であり、自動化はその解決策の一つとなります。

<杉本副社長>
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<次世代型冷凍保管サービスCOLD X NETWORK紹介動画>

倉庫最適化を図り2024年問題に貢献
COLD X NETWORKサービスをスタート

――  もう一つの大きな試みが「X NETWORK(クロスネットワーク)」を立ち上げ、預けたい期間、必要なスペースだけスポットで預けられるという画期的なサービスの開始ですね。

杉本  X NETWORKはAIクラウド、コンサルティング事業、アセットマネジメントビジネス、アセット開発を手掛けるSREホールディングスと共同で設立した会社です。約3年前に冷凍自動倉庫を作ろうという話になり、チームにて議論を重ねる中で、短期間での小口冷凍保管のニーズにも対応できる可能性が見えてきました。季節による需要変動にも十分応えられるようなサービスを実現することで、物流業界、ひいては日本社会全体にも貢献できるのではないかと考えています。

――  X NETWORKの役割は、物流の最適化を実現することにあるのでしょうか。

杉本  その通りです。テクノロジーの力で日本の物流を効率化することが目標です。これはまさに2024年問題に対する一つの解答となるものです。倉庫は物流においては点でしかなく、点と点を結んでいるのが、トラック輸送です。メーカーが生産した商品をどの倉庫に保管し、どの輸送ルートを選択するのが最も効率的かは、アナログな視点では誰にも分からないことが多いです。そこでX NETWORKを設立し、倉庫の保管料、輸配送料金を情報収集しデータ化。AIプログラムを用いて、最も合理的で効率的な解決策を導きだすことができると考えました。最終的にはその実現を目指してX NETWORKを立ち上げたわけです。

――  この最適化はまさに2024年問題の解決にもつながりますね。

杉本  おっしゃるとおりです。トラックの積載率向上等、プログラムを用いた効率化により支援できる分野はまだまだ多いと考えています。倉庫については、預けたい期間に必要なスペースのみ利用できるようにし、日本各地の拠点情報を一覧化することで、倉庫の空き状況と輸送コストを瞬時に把握できるシステムを構築します。これにより、無駄を省いた効率的な物流が実現できると考えています。また、X NETWORKが提供する冷凍保管サービスの名称は「COLD X NETWORK」と名付けました。

――  「冷凍自動倉庫」と「COLD X NETWORK」の2つの強力なアイテムで市場に挑むわけですね。現在のLOGI FLAG TECH 所沢Ⅰのリーシングはいかがでしょうか。

杉本  竣工前から、SBSゼンツウさんから約半分である2000パレット分の荷物について寄託を受けることが決まっていました。残りの部分については、現在は多くの問い合わせに対応している段階です。当初は季節的な需要を考慮し、夏にはアイスクリーム、冬にはクリスマスケーキやおせち料理の保管を想定していましたが、おせち料理とクリスマスケーキについては、非常に多くのオーダー依頼をいただいており、今はお断りせざるを得ない状況です。

――  季節波動の課題は繁忙期以外の時ですね。

杉本  その通りです。年明け以降については、現在リーシング活動を行う中で様々なニーズを把握できています。短期のニーズはまだ少ないものの、小口に関しては輸入のフルーツに関する問い合わせが増加しています。その他にも、10パレットから500パレットに至る小口の要望が寄せられており、全体として良い手応えを感じています。物流展でも、小口の取り扱いについて多くの方々から興味を持ってもらえる場面が多かったですね。

――  需要を掘り起こしたわけですね。

杉本  需要は必ずあるだろうと信じていましたが、本当にありましたね。

<LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰの事務所>
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漁港の近くや海外でも展開を
未来の物流を創造していく

――  今後の展開ですが、さきほど大都市圏の周辺がLOGI FLAG TECHの立地場所だと話されましたが、地方には展開は考えていないと。

杉本  現状では、やはり需要の多い大都市圏に限定されると考えています。しかし、北海道や北陸、九州などにも拠点を設けることで、顧客のニーズにより応えられるようになると期待しています。例えば、魚介類や野菜類の現地直送を航空機等で行っている事例もあり、苫小牧港や十勝港の近くに保管倉庫を置いて、フェリーで本州の大洗港に運ぶといったことも検討の余地がありますね。また、2024年問題に伴うドライバーの時間規制などから、中継基地の必要性が高まっているため、静岡県の袋井市にも倉庫建設用の土地を確保しています。

――  最近、他社とのコラボレーションも増えていますが、御社ではいかがですか。

杉本  そうですね。実際、冷凍冷蔵倉庫に興味を持つ企業が増えており、当社のプロジェクトに参加いただいているプレイヤーも多くいます。例えば東急不動産さんや三菱商事都市開発さん、関電不動産開発さん、ダイビルさんといった企業と連携しています。今後も、こうしたデベロッパーの方々と一緒に市場を作っていきたいと思っています。

――  海外、特に東南アジア周辺でも冷凍冷蔵倉庫需要が増していると聞いていますが。

杉本  実は非常に行きたいという気持ちがあります。東南アジア、特にベトナムやタイ、マレーシアでは、日本の高度経済成長期並みに需要が高まっていると聞いています。しかし、課題もあります。コールドチェーンが十分に発達していないため、倉庫だけ良いものを作っても、道路状況やトラックの運行状況など、様々な課題が存在します。できれば、今回の小口のシステムを活用し、点と点を結んで面として展開できるような開発を海外でも実現できればと考えています。

――  最後になりますが、LNEWS読者に対してメッセージをお願いします。

杉本  LOGI FLAG TECH 所沢Ⅰの竣工時にも話しましたが、私たちの事務所スペースは非常に近代的にデザインしました。NASAの管制室をイメージした雰囲気を持たせており、これが私たちの最終的な目指す姿です。やはり-25℃の職場で人間が働くこと自体が良くないと思います。今後、1階にある5℃の荷下ろしや、荷積みエリアも含めて自動化が進めば、本当に理想的な職場環境が実現できると考えています。物流業界は長らく3K職場とされてきましたが、それを払拭し、人間はモニタリングと判断・指令を行う役割を担い、まるでIT企業に勤めているかのような職場にしたいと思っています。そうすれば、若い人達も物流業界に抵抗感を持たずにとびこんでくるものではないかと考えています。

――  すごく夢がありますね。

杉本  夢や希望がなければ、努力する力や知恵も出ません。少しずつでも社会が良い方向に変わっていければと思っています。ただ、一企業だけでは限界がありますので、多くの企業や人々と協力し合いながら実現していきたいと考えている会社が霞ヶ関キャピタルなのです。

――  ありがとうございました。夢に向かって邁進する力強さを感じました。次回は実際に入居されたテナントの感想をお聞きする予定です。

取材・執筆 山内公雄

<杉本 亮副社長>
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■プロフィール
杉本 亮(すぎもと りょう)
2007年より財閥系AM会社に10年勤務。アクイジション/エクイティ調達/デッド調達/ファンドレイズ等幅広く担当
2012年から物流に特化しアクイジション/私募ファンドレイズや上場REIT組成を行う。その後、外資系AM会社に転職し開発/リノベ/リースアップファンド等、オポチュニスティックなファンドからバリューアップ、コアファンド等、幅広く手掛ける
2020年6月より霞ヶ関キャピタルに加わり2020年11月より取締役 物流事業本部 本部長
2022年12月より取締役副社長となる

■LOGI FLAG
https://logiflag.com/

■COLD X NETWORK
https://x-network.co.jp/

霞ヶ関キャピタル/冷凍保管サービスで荷物の受け入れ開始

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