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『二刀流』の経営で目指す
サントリーロジスティクスの物流戦略

2022年02月24日/物流最前線

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コロナ禍での外出自粛や飲食店の時短営業等で飲料・アルコールの消費が落ち込む中、サントリーグループの物流を担うサントリーロジスティクスには物流コストの削減が求められている。これに対して同社が取った対応は、グループの物流に貢献しながら自社の利益も追求する『二刀流』の経営だった。また、同社は物流業界での慢性的な人手不足の解消に向けて、自動化やDX(デジタルトランスフォーメーション)、人事制度改革にも取り組んでいる。オミクロン株の感染拡大で東京都にまん延防止等重点措置が発出された朝、厳重な感染防止対策が取られた会議室で、同社の武藤 多賀志社長に経営戦略や物流DXの取り組み、2022年の展望等について語ってもらった。
取材:1月21日 於:サントリーロジスティクス東京支社

<浦和美園配送センター>
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<取材日とまん防の開始が重なり、厳重な感染防止対策下でのインタビューとなった>
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『パートナー貨物』で輸送効率アップ

――  2021年の振り返りをお願いします。経営面でどのような年になりましたか。

武藤  2020年にコロナ禍に入って以降、飲料・アルコール業界では物量が減少傾向にあり、サントリーグループでも根本的なコストの見直し革新に取り込むという方針が掲げられました。当社はサントリーグループ唯一の物流子会社としてコスト革新に向けた取り組みを進める訳ですが、物流子会社がグループにできる貢献は、すなわち「機能貢献」です。つまり、貢献すればするほど物流子会社の売上利益が下がる、本来ならばそういう形になると思うのですが、当社も子会社とは言えども一つの会社ですので、自社の成長もしっかりと達成しなければいけません。そこで、機能貢献&会社としての成長の「二刀流」を目指すという目標を年初に立てました。

――  どのような形の二刀流を目指したのですか。

武藤  まずは機能貢献に精一杯取り組みました。長距離の幹線輸送を削減し、エリア内受給を進めることでコストを抑える。また、適正な在庫配置に取り組むことで物流コストをコントロールする。そういったことに社内の機能貢献部署であるセクターとサントリーホールディングス物流部が連携して取り組みました。

一方で、自社の成長については「パートナー貨物」の開拓を進めています。パートナー貨物とは、物流業界でいう「外販」のことです。サントリーグループの輸送に貢献できる貨物を開拓するということで、当社ではパートナー貨物と呼んでいます。例えば、東日本~西日本間の輸送でサントリー製品を東から西へ運ぶ場合、逆の行程でパートナー貨物を運ぶことによって往復化率を向上することができます。もしくは、当社の場合は季節波動で特に夏場に物量が大きく上振れし、逆に冬は減りますので、物量を平準化するために季節波動が逆のパートナー貨物の開拓に力を入れています。

――  実際のパートナー貨物にはどのような物があるのですか。

武藤  一例を挙げるとすれば、製紙会社の貨物ですね。彼らは当社と季節波動が真逆で、夏に物量が少なく、冬に多い業界です。ですから、お互いの物量を平準化するためにアライアンスを組みませんかと提案しています。

これはサントリーグループにとっても非常にプラスになる話です。よく他社では収益力を強化するために外販を推し進める傾向がありますが、当社にとってはサントリー製品を安定的に供給するというのが最大の責務でありミッションです。外販を強化するためにグループの物流が疎かになるのでは意味がありません。ですが、季節波動が逆のパートナー貨物を取り込んで積載効率を高めるのであれば、当社とグループの双方にとってプラスになります。このような二刀流を目指したことで2021年は非常にいい業績を収めることができました。

――  現在のパートナー(外販)比率は。

武藤  他社さんと比較すると、当社はまだまだ低いです。ようやく二割程度になったところですね。元々は15%程度で、直近2年で徐々に強化を進めて、ようやく2021年で二割程度になったという状況です。それだけ、従来はサントリー製品の安定供給を中心に仕事をしていたということです。ただ、そうするとどうしても荷物に偏りが出てしまっていましたので、ここをビジネスチャンスと捉えて、パートナー貨物を取り込むことで平準化を進め、最終的には機能貢献をしつつ自社の売上もアップさせるための取り組みを2021年は行ってきました。

――  昨夏には東京五輪が開催されましたが、事業への影響はありましたか。

武藤  やはり、グループとしての売上は当初の見通しを若干下回りました。オリンピックによるプラスアルファは思ったほど無かったです。むしろ昨夏の影響でいうと、天候による要因の方が大きかったですね。猛暑日などはかなり飲料の消費が上がります。例えば同じ8月の中でも、物量が1番多い日と少ない日とでは3倍もの差が出ることがあります。オリンピック関連の取り組みとしては、事前対応として当社の出荷確定を1日前倒ししたり、内航船による輸送では有明近辺が競技会場でしたので、輸送する荷物を少し早めに出すといったことで大会の円滑な開催に協力しました。

――  コロナ禍による業績への影響はいかがでしたか。

武藤  サントリーグループとして1番大きく影響を受けたのは、緊急事態宣言が発出された2020年4月以降の半年程です。未知の感染症に対して皆さんが危機感や不安感を抱えていた時期でしたので、飲料やビールなどの消費が伸び悩みました。特に業務用のお酒については、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令中は売り上げが本当に厳しかったです。宣言が解除されても時短営業のため五割程でずっと低迷していましたので、ここの売上ロスが物流の売り上げにも大きく影響しました。

――  御社の業務面での影響はどうでしたか。

武藤  サントリーグループの配車を担っている部署や、メーカーに近い在庫配置をする部署などは、2020年4月に最初の緊急事態宣言が発出されてから1か月程で在宅勤務ができる環境を構築しました。サントリーグループの持っている仕組みを導入することで、早急な対応ができました。2021年からはウィズコロナでの仕事の進め方の知見がだいぶ溜まりましたので、可能な部門では感染状況に合わせて臨機応変に出社率を削減して業務に取り組みました。それが功を奏して、2021年は業務にそれ程大きな影響は出なかったですね。

――  物流現場で感染者は出ましたか。

武藤  2020年は奇跡的に感染者が一人も出ませんでした。物流現場で働く従業員の感染を予防する意識が非常に高く、手洗いうがいやマスクの着用、パーテーションを使った飛沫対策などを徹底して実行していましたので、これらの取り組みが良い結果に表れたのだと思います。

さすがに2021年には感染者が何人か出ましたが、出た時はしっかりと初動で感染拡大を食い止める対応をとったことで、クラスターや大人数での感染には至らなかったですね。感染対策については、現場の担当者が色々と工夫をしてくれていました。例えばドアノブを触ることで感染につながるという情報が出た際は、ドアノブに直接触らなくても良いような細工をドアに施すなど現場からさまざまなアイデアが出て、改めて現場の工夫する力は凄いなと感じましたね。

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