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『二刀流』の経営で目指す
サントリーロジスティクスの物流戦略

2022年02月24日/物流最前線

<浦和美園配送センター>
20220224 suntry 02 520x298 - 物流最前線/トップインタビュー サントリーロジ

<自動運転フォークリフト>
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<チェーンコンベヤー>
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自動化の理想は「半自動化」

――  御社では業務の効率化に向けて「スマートロジスティクス」の取り組みを進めています。開始の経緯は。

武藤  スマートロジスティクスは、先端技術を活用して物流業務の自動化・省力化による労働負荷軽減、作業効率化、環境負荷の低減などを実現する取り組みです。検討を開始したのが2019年の後半で、具体的な取り組みに着手したのは2020年からですね。コロナ禍の中で感染対策と並行しながら進めていきました。私は2019年の春に当社の社長に就任したのですが、それ以前はサントリーホールディングスの営業部門に在籍していました。当社の社長に就任するにあたって物流の専門誌などを読み、人材不足などの業界課題を認識したうえで、将来に向けて省人化などの取り組みを実行したいと考えていたのですが、ちょうどその頃、埼玉の浦和美園で大型の配送センターを整備する計画が決まり、1万2000坪という巨大な出荷倉庫を効率よく稼働させるためにスマートロジスティクスの取り組みを実行に移すことになりました。

――  浦和美園配送センターでは構内搬送の自動化に自動運転フォークリフトを採用しています。

武藤  入出庫業務の削減に向けて4台を導入しています。当社の拠点としては初の採用です。自動運転フォークリフトについては走行スピードが人の運転する3分の1程度しか出ないため、導入にあたってはチェーンコンベアと組み合わせることで走行距離を可能な限り最小化する仕組みを取り入れました。このアイデアは現場から出たものです。スマートロジスティクスは経営企画部のメンバーが主導しているのですが、彼らが色々と悩んでいる中で現場の担当者から「こうしたら効率的になるのではないか」という提案があり、経営企画部と現場とでさまざまな意見交換をしてアイデアをまとめました。装置については豊田自動織機と共同開発しており、現在特許を出願中です。

<自動運転フォークリフト動画>

――  この自動化ソリューションは外部展開しないのですか。

武藤  当社には大変多くの協力会社さんがいますので、今後は協力会社さんにも展開できればと思っており、そのためには浦和美園配送センターの仕組みをブラッシュアップしていきたいと考えています。また、同センターでは日本ユニシスのシステムをベースにした統合WMS(倉庫管理システム)に無人受付やバース予約システムなどの機能を組み込んで、これらのシステム間で情報を連携することで乗務員・倉庫荷役を省力化するソリューションも運用しています。自動運転フォークリフトの自社他拠点展開はまだ難しいですが、無人受付やバース予約システムなど比較的早く取り込めそうなものについては、早速今年から当社の配送センターにも水平展開していくつもりです。

――  業務の効率化を進めるにあたって注視していることは。

武藤  輸送と倉庫作業のマッチングによる効率化や時間削減ですね。例えばトラックを事前に予約してもらうことで、待機時間の削減に繋がります。トラックがいつ入ってくるか分かれば、事前にピッキングも済ませることができ、積み込み時間の短縮にも繋がります。こういった感じでできるだけ上手にDX化の中で作業時間の効率化や無駄の削減をしていきたいと思っています。

――  ピッキングの自動化は検討していますか。

武藤  当社ではまとまった単位で重量のある製品を扱うことが多いので、ピッキングの自動化はまだ検討していないですね。自動化については浦和美園配送センターで採用した自動運転フォークリフトとチェーンコンベヤーを組み合わせたシステムのように、大容量のものをシンプルな仕組みで効率的に動かしていけるような仕組みを中心に取り組んでいくつもりです。ただ、将来的にはピッキングエリアにAGVが荷物を持ってくるような省力化の取り組みも、次のステップとして考えていきたいとは思っています。

――  最終的に物流センターは完全自動化を目指すのでしょうか。

武藤  私の持論ですが、完全自動化にはリスクがあると思っています。以前、営業部門にいた頃、大規模な地震が発生した際に自動化が進んだ工場倉庫の機能が完全にストップしてしまい、商品があるのに出荷できない事態に陥った経験があります。完全な自動化は普段便利ですが、有事の際には不便になりかねません。ですので、自動化については普段は自動化と人作業を分けますが、有事の際は人が対応するなど、上手くミックスさせるべきではと考えております。

機能不全になるリスクは地震などの天災のほかにブラックアウトのようなケースも想定できます。エッセンシャルな仕事をしていくうえで、有事の際のリスクヘッジはしっかりとしておかなければいけないですからね。いざという時に動かないのが一番困ります。そのため、浦和美園配送センターでは自動フォークリフトと通常のフォークリフトを併用して、いざとなった時には人が動かせるようにしています。

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