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ascend等3社/DXで2024年問題打破へ、SIP実証成果発表

2023年02月07日/IT・機器

物流DXベンチャーのascend、アイディオット、MatrixFlowの3社は2月7日、2024年問題を打破できる技術として、内閣府と共に進めている「スマート物流サービス」実証実験の成果発表会を都内ascend本社で開催した。

3社はいずれも、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービス ビッグデータ(以下、BD)利活用実証プログラムの実証実験事業者として採択されているテクノロジー企業。SIPは、内閣府が選定した日本の経済・産業競争力にとって重要な課題について従来の府省・分野の枠を超え、基礎研究から実用化・事業化まで見据えた取り組みを推進している。

<共同記者発表会の様子 左から、MatrixFlow 田中芳文 社長、アイディオット 井上智喜 代表取締役、ascend 日下瑞貴 社長、SIPスマート物流サービス 田中従雅 プログラムディレクター>
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開催に先立ち、SIPスマート物流サービスの田中従雅 プログラムディレクター(ヤマト運輸 執行役員)が、「物流クライシスを機に、情報をベースに改革していきたい。3社は物流の未来を考えた、さまざまな研究で先行する企業。アナリティクスの世界を広げるのみならず、物流をサステナブルにしていくなかで必要な研究だ。実証の成果が、物流業界の課題解決の道筋となれば」と挨拶した。

<SIP 田中従雅 プログラムディレクター>
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続いて、3社がそれぞれの実証実験テーマと成果を報告。ascendは、「運送業界におけるダイナミックプライシングエンジンの構築」をテーマに取り組んだ。同社の日下瑞貴 代表取締役社長 CEOは、「事業規模の小さい事業者が価格交渉を行うために、荷主にとっても納得のいくプライシングの構築が重要」とし、実在する数種類の求貨求車システムのデータをもとに、荷物の発送・地域・種類などの運送サービス毎の価格設定を幅を持たせる形でAIが算出するエンジンを開発。合理的な価格設定ができる仕組み作りに挑んだ。

<ダイナミックプライシング 効用>
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デモ動画も披露された。画面に日時やルート、荷物情報を入力すると、コストベースの「最低金額」と「推奨金額」「最高金額」が提示される。これにより原価割れを防止し、運賃交渉のしやすさなどにもつながる。「季節波動など『値付け根拠』の要素が変化すると、価格がどう変化するかを示すことができ、合理的な価格決定ができる。本来、価格は変化するもの。もっと動的に価格提示をしていくことで相場形成につなげたい」と、日下社長。近々、同社が開発する運送管理SaaS「ロジックス」への搭載を完了し、早ければ今春にも実装する予定。

<ダイナミックプライシング デモ動画>

MatrixFlow社は、物流の倉庫作業で最も負担が大きいとされる、ピッキング作業にフォーカス。「入出荷予測AIとそれを利用した倉庫管理AIの精度と効果」について検証した。大手物流企業のWMS(在庫管理システム)データを活用し未来の出荷を予測、行動最適化を予測するというもの。同社の田中芳文 代表取締役社長は、「AIの得意なことは、膨大なデータからパターンを見つけて予測すること。トラック配送などと比べると倉庫作業はパターン化していることが多く、倉庫作業とAIの得意分野は一致している」と強みを語った。

<倉庫管理AIによる作業時間削減の効果検証>
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実証の結果、倉庫管理AIの利用でピッキング全体作業時間は29%、年間で1000時間弱削減できることが確認された。また、最適な配置換え頻度やレイアウト最適化、人員配置などへの活用も可能で、既に大手菓子卸企業が導入を決定していると報告した。同社は、2025年までに1000社導入を目指し、将来的には複数拠点の倉庫管理の連合や、ロボットとの連携による無人化なども視野に入れているという。

アイディオットは、デジタルツインの開発により、業界の課題を可視化・AI(シミュレーション)で解決すること、さらにCO2排出量削減についても検証を行った。デジタルツインとは、現実の世界から収集したさまざまなデータを、まるで双子であるかのように、コンピュータ上で再現する技術。

<デジタルツイン イメージ>
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同社はADT(アイディオットデジタルツイン)の開発により、1.サプライチェーンデータセットを活用した「物流企業本部向け 戦略立案システム」、2.交通・天災情報と位置情報を利用した「物流企業現場向け 業務改善システム」、3.「炭素排出量可視化・削減シミュレータ」の3つの実証テーマに取り組んだ。

このうち、1.「物流企業本部向け 戦略立案システム」では、AIによる需要予測と車両最適化アルゴリズムについて検証。人材・車両削減検討において、人の予測よりもAIの方が高い精度で需要予測を行うことに成功。配車最適化では、10tトラックを効率的に活用することにより、12%のコスト削減に加え、車両台数が32%削減した。

また2.「物流企業現場向け 業務改善システム」では、実運用を意識し店舗別にカート数を精度よく予測することで、配車計画作成の効率化ができるか検証した。この結果、AI予測精度(需要予測)が熟練者と同等であることが確認されたものの、精度としては16~47%誤差が発生し、課題が残るとした。3.「炭素排出量可視化・削減シミュレータ」では、10tトラックを多く活用することで、現状より20.4%のCO2排出量削減効果が見込め、コスト最適化につながることを明らかにした。同社の井上智喜 代表取締役は、「全体最適の視点で課題解決を目指すため、SIPの標準データ仕様にすべて統一し実証を行った。今後、サプライチェーン全体の最適化ツールの開発についてプロジェクトを立ち上げたい」と展望を語った。

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