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連載 物流の読解術 第3回 東京海洋大学名誉教授 苦瀬 博仁

2023年06月09日/コラム

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第3回:物は、「赤ちゃんと同じ」 -物流の本質を考える3-

東京海洋大学 名誉教授 苦瀬博仁

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人と違って、物は「赤ちゃんと同じ」

物流のうちの、輸送とは、「二地点間の空間的な移動」であるから、「人も物も輸送は同じ」と思いがちである。しかし、これが大きな勘違いを招き、ひいては多くの失敗の原因の一つではないかと思っている。

物流の恩師からは、「物の気持ちになって考えること。赤ちゃんと同じように、物は丁寧に扱うこと」と諭された。その趣旨は、「赤ちゃんは、話すことも、歩くことも、服を着ることも、行き先を伝えることもできない。だから、ベビーカーに乗せて運び(輸送)、風邪をひかないように洋服を着させて(包装)、ミルクを与えて寝付かせること(保管)を、考えればよい」とのことだった。

恩師の言葉に従うならば、貨物は、赤ちゃんを扱うように「荷役して伝票を貼って段ボールで包装して、貨物車への積み込み作業をおこない、配送先では荷おろしして台車で届けること」になる。

人にはないが、物流にはある「保管、包装、流通加工」

物にのみ存在する代表例が、「保管」である。人はホテルに泊まっても保管とは言わないが、物流(物的流通)における保管は、重要な役割である。また、人は自ら洋服を着るものの、何かで包まれることは無いため、人に「包装」という概念はない。また移動途中で、人が姿かたちを大きく変えることは無いが、物は「流通加工」として1ダースの箱から鉛筆を2本取り出すように、小分けや分割がある。

人は、自動車や電車に、自ら勝手に乗り降りしてくれるので、「荷役」の必要も無い。
このように、人と物が同じと考えてしまうと、保管・包装・流通加工・荷役などの概念を忘れてしまう。

物流は、「停まっているときが重労働(流通加工、包装、荷役)」

物流(物的流通)では、輸送以外の活動が極めて重要になる。このことは、「引越し」を思い起こすと、容易に理解できる。

引越しでは、衣類や食器の仕分け(流通加工)、ダンボール箱に詰める荷造り(包装)、トラックへの積み込みや荷おろし(荷役)が大仕事である。この反面、いざトラックに荷物を載せてから走り出す(輸送)と、多少の距離の長短は気にならない。経験として、著者は冷蔵庫を貨物車に積み込む作業はできないが、冷蔵庫を積み込んだ貨物車を運転することはできるかもしれない。

このように、物流は引越しと同じで、発地から着地までの移動(輸送)もさることながら、移動前後の作業(流通加工、包装、荷役など)が重労働ということになる。

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