クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は8月25日、2023年上期における日本の物流施設市況に関する調査レポートを発表した。
それによると、物流施設の空室率は、東京圏では供給過多な圏央道の茨城エリアや東北道で局所的に上昇を見込んでいるものの、地方都市では先進的物流施設のストックが未だ不十分であり、新規供給に合わせて潜在需要が喚起されていく状況が継続する見通しで、全体では低位で安定すると予想している。
賃料については、都心部での都市型物流施設の価格支配力は高止まりしているものの、その他エリアの既存物件については物流コスト増で苦戦するテナントに対して不動産賃料を含めた価格転嫁が難しい状況を見込んでおり、全体ではほぼ横ばいとなる見通し。
物流施設への需要は、貨物輸送量が横ばいで推移するなか、宅配便件数が前年比1%程度の増加ペースを維持しており、少量多頻度の都市型物流への構造変化が着実に進展していると分析。売上に対する物流コスト比率が高止まりしている状況から、今後は物流コストの6割近くを占める輸送費の削減を実現させる都市型物流向けの立地条件がより厳しく問われてくると見込んでいる。
供給については、東京圏では2023年上期に大規模施設を中心に数多くの竣工が相次いだ結果、上半期だけで200万m2を超える過去最大の新規供給があった。用地の供給が限定的な都市型物流施設では、3月にESRが日本最高層の9階建てとなるマルチテナント施設「ESR東扇島ディストリビューションセンター」を竣工したほか、都内最大の延床面積25万m2超のまちづくり型物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」が着工し、高層化による土地の有効活用が進んでいるものの、都心部配送ニーズに適応できる用地の供給は限定的であり、引き続き参入障壁は高い状況が続くと見ている。また、郊外については7月初めに日本GLPによる「ALFALINK流山」がほぼ満床で竣工したほか、同施設北側では大和ハウス工業が4月に「DPL流山プロジェクト」を竣工、また同エリア西側では流山開発による総延床42万2727m2の開発が計画されているなど、千葉県流山市での物流施設の集積に着目している。
今後については、東京圏では用地獲得が比較的に容易な圏央道や外環道の外側に物流施設の開発が集中しており、国道16号の沿線ストック量が400万m2を超えていることに加えて、圏央道沿線では200万m2を超える新規供給が予定されているなか、外環道の外側では賃料負担能力の低い法人向け取扱品比率が半数近くを占めており、自動化によるFC拠点集約も見込まれているため、賃料のさらなる下振れと15%を超える空室質の上昇を見込んでおくべきだと指摘している。