日本出版販売(日販)が12月10日、持続可能な出版流通の実現に向け10月に開設した新拠点「N-PORT新座」(埼玉県新座市)を公開した。
日販がグループ全体で取り組む「物流再編プログラム」の第1弾で、王子流通センターから移管した雑貨などの出荷から稼働開始。今後、出版物も本格的に取り扱う。
出版の物量・売上が減る一方、書店が本だけでなく文具や雑貨、食品など幅広く販売するスタイルが増えており、出版流通を活用して文具などとの混載を進め、配送を効率化する。
「N-PORT新座」は4階建て、延床面積2万5311m2。3か所に分散していたグループの文具雑貨倉庫を統合した。
取り扱いアイテムは3万7000SKUと業界最大級の在庫規模で、保管や仕分けのためにロボティクスを導入し、省人化と効率化を実現した点が特徴だ。
<段ボールスロットが細かな物を格納>
開設にあたり、細かなアイテムを効率よく管理するのに適した自在型自動倉庫、ラピュタASRSを採用した。天井高を生かし9段(約5m)積み、90台のロボットが走る。
平置き管理の棚で2割のSKU(出荷量の8割)を扱っており、自動倉庫で扱うのは出荷量の2割だが、多品種少量のアイテムでも効率よく作業するのに向いている。
保管数は専用コンテナで9000ビン、ピッキングは1時間当たり400行が目標だ。よく出る商品ほど近くに配置されるなど、AIが最適化していく。従来の2~3倍の効率で商品の入荷検品、格納ができるようになるという。
高速仕分け機能として、椿本チエインのリニソートも導入した。
100シュートあり、1時間当たり最大5000個をさばける。ループ式のため、レーンを止めることなく効率的に仕分けられる。
新商品の展開時など、ロボットより複数人で作業するほうがかえって手際のよい場面では、DAS(デジタルアソートシステム)を使う。
スキャナーでバーコードを読み取ると、どのオリコンに仕分けるか指示される仕組みで、500間口用意している。
労働環境の改善にも力を入れた。天井に大型シーリングファンを設置したことで、作業所内で夏は風を体感でき、冬は天井の暖かい空気を全体に行きわたらせる。
またエレベーターホールに休憩室を設け、どの階にも休憩スペースがあるようにした。
日販の大熊祐太 物流企画部長は「取次が現在抱える課題は業量減少や老朽化、維持コストの増加。人手不足など物流クライシスも加わり、書籍1冊当たりの物流コスト上昇が続いている」と取り組みの背景を説明する。
「単純作業はロボットに任せ省人化しつつ、人がやるほうが良いところと共存する。いま書店が様々な卸から仕入れている商品が、『日販に頼めば本も雑貨もまとめて来る』というようにしたい」などと話している。
■「N-PORT新座」概要
所在地:埼玉県新座市中野1-13-20
延床面積:2万5311m2(7670坪)
主要業務:文具雑貨商品等の保管および仕分け・出荷
出版社からの物流受託事業の拡張
他社からの物流業務受託(3PL)
日販/グループ物流再編プログラム第一弾、新座市に新拠点を開設