特別インタビュー 坂村 健氏/東京大学大学院 情報学環教授

ビッグデータ解析とオープン化がイノベーションを生む

<坂村 健氏>
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―― ビッグデータ解析の重要性とは。
坂村 現在では、一昔前と比べて、膨大なデータを解析・分析するためにコンピューターというものがあります。人間が解析・分析するには限度がありますが、コンピューターは人間の何倍もの速さで、処理してくれます。データは多ければ多いほど確率的に正確さを増しますし、そういうことを実行することで、これまで見えてなかったことにも気づくことになるのです。人工知能やディープランニング、強化学習などが注目を集めているのも、その一環です。また別に関連するけどあまり話題になっていない重要なターム(学術用語・言葉)があり、それは「オープンデータ」と呼ぶものです。

―― オープンデータとはインターネットなどを通じて誰でも自由に入手し、利用できるデータの総称ですね。
坂村 例えば、物流倉庫ですと、その大きさ、レイアウト、容量等は設計段階で分かっています。このデータにプラスして、倉庫内での人間の動きやモノ(荷物)の処理スピード、移動距離、トラックの移動と停車時間等のリアルなあらゆる情報をセンサーを通じて入手し、ビッグデータとして解析・分析するのです。すでにいくつかの企業では実際に運営していますが、棚の位置はここで良いのか、人間の配置はここでいいのか、人数は適正か等を分析するのが、最近の流れですね。でも、これを一企業、一業界でやるだけでは、クローズドなシステムに終わります。専門家以外にデータを提供してもしょうがないと考えるか、もしかしたら我々の気付かない新しい発見があるのではと考えるか、です。

―― それらのデータは会社の重要データとして普通公開しませんね。
坂村 そうでしょう。そこで考えてほしいのが、インターネットです。インターネットはオープンな環境であったればこそ、現在のような情報通信技術を生み出したわけです。LANのような閉じられた社会の中だと、今日のようなネット社会の到来は来なかったはずです。今まで、1人の人間が考え付かなかったことでも、大勢の人間が考えられるオープンな環境が今最も重視されているのです。新しいイノベーションを生む起爆剤となるのです。

―― 一企業、一業界で考える時代ではないと。
坂村 物流倉庫のデータにしても、普通は企業秘密ということで表には出ませんね。でも、これをオープンにして、他の企業、他業種の人が見れば、あるいは一般の人が見れば、とんでもないアイデアが出ることもあります。このとんでもないことがイノベーションそのものなのです。とくに、物流業は製造業とも、流通業とも、一般コンシューマーとも密接なつながりがあるわけですから。今のところ、お互いが「関係はあるけど関係はない」的な関係です。全産業がもっとコミュニケーションを活発にして、積極的に業務改善なり売上倍増などを目指すべき時なのです。

―― 製造業のIoT化では、ドイツが進んでいると聞きます。
坂村 特に進んでいるかどうかには異論もあると思いますが、ドイツが進めている製造業に向けたIoTの利用という「インダストリー4.0」構想では一つの工場、一つの企業の枠を越えてドイツ全体、そして世界にまでネットワーク連携を広げようとする動きもあり、ここで遅れを取ったら産業競争力で致命的ということで、日本でも官民合わせて取り組もうという動きになっています。しかし、そこで重要なのも原材料から小売業までのモノのバリューチェーンでのデータのオープン化です。系列の枠を超えてトヨタのカンバン方式のようなことをやろうと言うのが、インダストリー4.0の本質で、その意味ではある部品がいま物流中で何個どこにあるとか、いつごろ届くかというデータを皆で共有することが大事になります。

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