3大都市圏以外にも物流施設は必要
―― さて、物流業界ではドライバー不足やラストワンマイル問題など様々な課題を抱えています。
坂口 少子高齢化を迎え、確実に労働人口が減りますので、そこは物流事業者さんと結構いろいろな手を打ち始めています。労働人口の不足は技術革新でロボットやIT、AI等のDXの力を借りるしかないと思いますね。物流施設でいえば、大手デベロッパーさんは自力でさまざまな手を打たれており、我々が関わるのは、新規の地域・場所に投資したい顧客とともに、開発していこうとするものです。倉庫内で稼働するロボットやAIに、IT機器をセットにし、タイアップで内覧会を開くと、全然集客が違いますからね。特に、首都圏、関西圏、中部圏では喜ばれます。一方、地方都市での開発では、北陸、東北、北海道でのテナント付けに力を入れています。
―― このところ東北、北陸等での動きが活発ですね。
坂口 金沢には我々の営業所があり、物流に関してもアンテナを張ってきました。Eコマースの伸張を考えれば、金沢にそろそろでき始めてもよいのではと考えたわけです。ある程度の人口もあり、十分やっていけると考えました。仙台にも東北を管轄する支店があり、今活発に進めています。
―― 金沢に決められた大きな要因は。
坂口 先進的物流施設が今のところないのが一つ。もう一つがその都市のポテンシャルですね。実は外国人の訪れる場所というのはポテンシャルが高いのです。金沢は外国人ツーリスト、特に西洋系の旅行者が多く訪れています。金沢は武士の町、武士の京都という位置づけで訪れているようです。そこから、温泉に入る猿で有名なSNOW MONKEY PARKや飛騨高山を巡るコースが人気のようです。産業的には厳しいとは思いますが、サービス業、観光業といったもので、さらにEC需要の伸張といったことで、需要はあるとみています。
―― 富山なんかはどうでしょう。
坂口 富山は、金沢まで1時間なんですね。通勤している従業員もいます。ですので、富山は金沢営業所が見て、新潟は東京から見ている形ですね。
―― 今後は地方への物流施設開発が進んでいくと。
坂口 そこはまさに賃料にかかっていると思います。毎年新規供給のレコードを更新するような勢いで物流施設が開発されていますが、これができているのは先ほど申した「適温相場」で、空室率が低いまま、なおかつ賃料上昇も緩やかで推移していることですね。金利が低いことも一因です。しかし、建築費や人件費の上昇が急激に進むと、施設開発のスピードは当然遅れるものとなります。我々は理想として、3大都市圏以外の地方にもEコマースの恩恵が届くべきだと考えていますが、やはり賃料が下がるとなると、開発のスピードも落ちるものと考えています。それを一番心配していますし、常に市場をウォッチしていきたいと思っています。
農林水産省/農産物・食品の流通は荷主と物流事業者との共同作業