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成長のカギは品揃え&在庫の強化
MonotaROの物流戦略

2022年02月08日/物流最前線

<棚搬送型ロボット「Racrew(ラックル)」>
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効果の限定的な自動化は意味がない

――  自動化を図るうえで注視しているポイントは。

吉野  自動化の際には、どこが無駄な作業なのかを注視しています。当社の物流センターでは、1日の作業時間のうち出荷に約6割、入荷に3割、在庫管理に1割がそれぞれ使われています。この時間の使い方の中でどこに無駄があるのかを探した際に注目したのが、ピッキング作業時の歩行にかかる時間です。出荷に6割と言いましたが、そのうち半分がピッキングにかかる時間で、ピッキングのさらに半分が歩行時間となっています。この歩行時間を削減できないかということで、日立さんの棚搬送型ロボット(AGV)によるGTP形式のピッキングを採用しました。

――  AGVの中でも日立のラックルを選定した理由は。

吉野  ラックルを初めて導入したのは2017年に開設した笠間DCです。導入の検討を始めたのが2015年で、その当時はまだAGVを本格的に扱っている企業は国内になかったため、そもそも選択肢もありませんでした。当時、世界でみるとAGVは既に何社かは開発、展開されていましたし、私も当社社長の鈴木と一緒に海外視察に行きましたが、当時は日本への導入実績はなく、アフターメンテナンスなどの課題もありました。

日立さんはAGVの機能や品質もそうですが、エンジニアリング力も信頼できたので、そこもラックルを選んだ理由の一つです。結果として、ラックルによってピッキングの生産性は3倍になりましたし、目安にしていた投資対効果もあったということで、笠間DCの次の茨城中央SCや、今春稼働予定の猪名川DCにもラックルを導入することとなりました。

――  今後立ち上げるセンターでもラックルを採用するのでしょうか。

吉野  笠間以降、ラックルでやってきましたが、2025年に開設予定のセンターではゼロベースで検討をしています。確かにラックルによって歩行距離は削減できましたが、天井高5~6mの倉庫でラックルによる棚搬送型のGTPピッキングを採用すると、どうしても倉庫の上半分の空間が空いて保管効率が落ちてしまう問題が生じるからです。

当社としてはこれからも在庫点数を拡大していく方針なので、そうなると保管効率も重要な要素となってきます。ですので、そういった制約を受けない新しい設備はないか、ピッキングの生産性を上げつつ高密度で商品を保管できる仕組みはないかと現在検討を進めている最中ですね。

――  日立グループにはアーム型ロボットを扱う企業もいますが、導入の検討は。

吉野  パレットへ荷物を積み下ろしする工程のロボットですね。ただ、先程もお話しましたが、自動化する際のポイントとしては全体に占める割合を注視していますので、現時点では効果が限定的、局所的にならないように、もう少し投資額と期待効果の見極めが必要と考えています。

自動化を検討する上でもう一つ重要になるのが、その工程を自動化した場合の効果が全体に波及するかどうかです。たとえ一部の工程が自動化できたとしても、センター全体のスループットが上がらなければ意味がありません。ですので、自動化するうえでは全体のスループットをどうやって高められるかを重視しています。

――  手段と目的が入れ替わらないようにしていると。

吉野  はい。勿論、生産性も重要ですし、結果としてのKPIでは目標管理をしていますが、どちらかというと、定義したサービスレベルを達成するためにやれることは何かを物流部門のメンバーにも考えてもらい、スループットを最大化する組織マネジメントを意識しています。設備投資するにあたってはその設備ごとにも生産性や時間あたりの出来高の目標を設定しますので、それに合わせようとはします。ですが、そこだけを求めると何のための改善なのかが分からないということが起こりがちになるんですね。「ここの工程の作業性を変えたいからここを機械化する、あるいはこの設備を導入する、仕組みを変える」といった事をするのですが、全体を見た時に本当にその改善活動がセンター全体の改善に繋がっているかというと、必ずしもそうなっていないケースというのが結構多くあります。ですので、センター全体のスループットを高めるということを常に意識していますね。

――  他社では入荷工程の自動化も進んでいます。

吉野  当社では入荷の自動化は進んでおらず、マニュアル作業中心になっているのが現状ですので、改善余地が大きな領域となっています。ここの部分については当社の力だけではなく、サプライヤーさんとも連携しながら改善を進めていく必要がありますね。

――  具体的には。

吉野  オーダーマネジメントシステム(OMS)と呼ばれる仕組みを今春から稼働する予定です。OMSとは、文字通りの注文処理の最適化ですが、お客様の注文に対して、リードタイムとコストが最適になる組み合わせを計算して、出荷拠点を決める仕組みになります。OMSでは当社とサプライヤーさんの在庫情報を連携すること、またサプライヤーさんに直接出荷して頂く仕組みが前提になります。これによって、これまでサプライヤーさんの物流センターから当社の物流センターを経由してお客様にお届けしていた注文が、ケースによっては、サプライヤーさんから当社のお客様に直接出荷をして頂くことになります。サプライヤーさんにとっても、当社にとってもムダなモノの動きを抑制できるという訳です。お客様にとって最適で、安く、早く商品を提供できる仕組みは、当社だけに効果が限定される庫内の自動化の取り組みよりも、サプライチェーン全体の改善につながると考えています。

――  自動化の考え方としては、最終的に完全自動化を目指すのでしょうか。

吉野  最終目標はそうかもしれません。今はまだ当社の物流センターでのピッキングや入荷の業務に対応できるような自動化システムが少ないので、そういったシステムが出てきた場合は検討していくことになります。最終的に人手は極力少ない方がいいと考えています。

――  コロナ禍で体調管理が重要です。健康維持のために気をつけていることは。

吉野  合気柔術の道場に通っていて、週に一度、9時から13時までの4時間稽古しています。私が当社に入社してからですので、かれこれ8年目になりますね。最初の1時間でストレッチをみっちりとやって、残りの3時間が実践の時間です。合気の技は力を使うとかからないので、最初のストレッチで敢えて体力の9割程を消費して、残り1割の力で3時間の稽古に耐えるということをしています。よく合気のことを人に話すと「気でハッて倒すんでしょ?」と言われることが多いのですが、実際にはそんなことはありません。相手からの攻撃があって、その力を上手く使い相手を倒す武道なんです。

――  始めたきっかけは。

吉野  息子がいるのですが、少しマイペースでおっとりしたところがあるので、はつらつさを身に着けてほしいと思い道場へ連れていったんです。最初、私は見学していただけだったのですが、翌週には私も稽古に出るようになり、今では息子以上にハマっていますね(笑)

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■プロフィール
吉野 宏樹 SCM・物流担当執行役 物流部門長
1997年4月:日本出版販売 入社
2006年9月:楽天 入社
2008年11月:シグマクシス 入社
2010年1月:楽天 入社
2011年3月:楽天物流 取締役
2012年7月:ロジフォルム 代表取締役社長
2014年1月:MonotaRO 物流部長
2014年3月:同社 執行役物流部長
2014年6月:同社 執行役物流部門長(現任)

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