東亜建設工業は1908年創業、川崎や鶴見等の京浜工業地帯の埋め立てや港湾整備から始まった会社だ。現在では、ゼネコンの一つマリコン(マリンコントラクター)大手の1社となっており、港湾関係の土木・工事にとどまらず、建築工事も含めて様々な案件を手掛ける総合建設会社となっている。同社が「倉庫」に目を付け注力し始めたのは約20年前。京浜工業地帯の埋め立て地に進出してきた企業の倉庫の建築が最初だ。以後、プロジェクトスタート時から同社の蓄積した技術とノウハウを反映させた独自の提案を行うことで、数多くの実績を積み重ねてきた。同社の秋山優樹社長は「今後は、一般倉庫、冷凍冷蔵倉庫にとどまらず、データセンターなどの領域も視野に入れている。さらに、冷凍冷蔵倉庫の海外展開にも注力する」と倉庫需要の拡大に大きな期待を寄せている。同社の今後の展開を伺った。
取材:9月7日 於:東亜建設工業本社
倉庫需要は旺盛、Eコマースが牽引
―― 新型コロナ感染が続いていますが、現在の御社の状況からお聞かせください。
秋山 国内では今の所感染者も少なく、工事の方もほとんどストップすることもありませんでした。一番心配したのはどうしても海の工事では船舶等で「3密」になることです。船の中だとクラスターにつながりかねませんからね。そのため特別な空気清浄機を導入しました。この部屋にも入れていますが、これを船の中の食堂等に設置しました。しかし、海外では前期の前半はほとんどの工事がストップしました。ロックダウンを行った国もあり、社員の安全を考え一時帰国させました。現在はワクチン接種に力を入れています。
―― 湾岸部のさまざまな工事に船を利用するということですね。
秋山 そういうことです。海の土木工事も多く、ポンプ浚渫船、トレーリングサクションホッパードレッジャー、高濃度軟泥空気圧送船、深層混合処理船、杭打ち兼起重機船、トレミー船など、用途に合わせて船舶を保有しています。
―― 海外では感染者が多かったのですか。
秋山 海外ではやはり多かったですね。弊社では海外50か国以上、主に東南アジア、中近東、アフリカに進出していますが、何かあった場合を考慮して近隣諸国の医療施設を調べたりし、態勢を整えていました。社員、工事関係者に情報を提示しながら工事を進めました。
―― 新型コロナ禍の今、経営上はいかがですか。
秋山 昨年は防災・減災を実現する国土強靭化政策が閣議決定され、5年間で15兆円の予算が付くということで、官庁建設関係は順調に工事入札が出件されており、コロナ禍の中、堅調に推移しています。一方、民間建設工事は、昨年のコロナ禍による停滞から、今期に入って企業活動が再開となり、第一四半期は上場企業が過去最大の利益を上げたということで、民間も回復基調と見ています。
―― 今期は前期に比べて回復傾向ということですね。
秋山 そうですね。しかし、まだまだコロナ禍は収まりそうにないですし、原材料等の高騰も続いており、このあたりの影響を受けるとやはり企業としては設備投資に慎重になるのではないかと危惧しています。当分先行き不透明感は増していくものと思っています。
―― 物流施設関係の状況はどうでしょう。
秋山 物流施設需要はEコマースの大幅な伸長や巣篭もり需要等もあり、まだまだ需要があると感じています。また、首都圏を中心とした道路網の拡充もあり、新規倉庫エリアも拡大しているものと考えています。今後も物流施設関係の投資状況は旺盛に推移するものと感じています。