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物流最前線 Top Interview
オペレーション革命を進め
グローバルに飛躍する

2020年03月31日/物流最前線

異業種参入もあり、今は危機感しかない

―― 根本的な問題の人手不足については。

中谷 まず、3PLのコンセプトですが、顧客がもし物流を自前でやろうとすると、一番困るのが人件費を固定費化しなければならないこと。これをアウトソーシングするということは、固定費を変動費にできるということです。これが顧客には一番のメリットになります。日立物流も同じで、請け負った仕事を自家社員だけで運営するのではなく、パートナー社員の比率を高めることで、固定費を変動費化していました。日本の経済界全体がやってきたことですが、流れが変わってきたのが、労働力不足が顕在化し始めた2010年ごろだと思います。物流センターで人が集まらなくなってきたのです。

―― トラックドライバーについても同様ですか。

中谷 トラックドライバーも同様です。今から見ればトラックを長年、無理な料金で走らせていました。物流業界全体が、運ぶモノがあればという気持ちで我慢していました。その潮目が変わったのが2010年頃。現実的に労働人口が減ってきていました。当社でも、パートナー社員が集まらなければ派遣社員や短期のスタッフを採用することになる。これまで長い付き合いをしてきた優秀なパートナー社員ばかりではなくなり、労働生産性は落ちます。こうした背景で2012年、2013年と業績はガクンと落ちました。

―― 優秀なパートナー社員がたくさんいたと。

中谷 そうですね。LOGISTEEDの原型じゃないですけど、機械化、ロボット化、自動化を進めようと思ったのはこの頃からですね。しかし、現場になかなか理解してもらえませんでした。成功体験が大きく物を言う時代で、私はそうじゃなくて、これは自分たちのオペレーション改革だと言うことを言いたかったのです。優秀なパートナー社員たちに依存したオペレーションはどこか必ず無理があると認識しなければならなかったわけです。

―― 人手不足解消のために、機械化、ロボット化、自動化はEC倉庫等で活発に採用されていますね。

中谷 そうですね。我々のWMSも相当早い時期に導入していましたからね。EC系の倉庫の場合はピッキングを含めて、多数の人たちを必要にしますから、自動化は急務です。

―― 現在、EC関係については好調という話を聞きます。

中谷 EC関係については、引き続き好調です。我々が危機感を持っているのは、人手不足もそうですが、物流業という産業領域を考えた時です。アマゾンという大手EC企業を見ればわかりますが、産業領域を越えて、すべてをカバーする企業が登場し始めたわけです。物流業界の根本であるトラック輸送そのものを変えていくような影響を与えています。大手宅配業者が撤退や値上げを行ったというニュースが以前ありましたが、大手宅配業者に替わってその下で請け負っていた企業と直接交渉するビジネススキームを作ってくると、これは脅威ですね。

―― 物流事業者が何をどこまでやるかという根本問題ですね。

中谷 トラック事業者は今までの守備範囲が侵されている感覚になるのです。我々がやっているのは3PLですが、一つ一つ日立物流が倉庫の場所を決め、適切なマテハン機器を導入し、自動化を押し進め、最小の人員で運営し、効率を高める提案をしています。その一方で、大手ディベロッパーでは、直接スタートアップ企業と組み、物流倉庫の周辺業務を取り込んだ形の提案をしています。保育園とか、食堂などを提供し、さらにはマテハン機器や物流ソリューションの提供も始めています。これまでスペースだけの提供だったのが、物流事業者のテリトリーだと思っていたところに、進出してきている。このままでは、物流事業者はジリ貧になると。

―― 規制緩和で物流事業者の業務の範囲が広がってきたと同様、上流、下流からの範囲も広がってきたと。

中谷 一方でそこまで深く考える必要はないという考え方もあります。物流事業といってもいろいろな業態があります。トラック事業、倉庫事業、宅配事業等様々です。結局、それぞれの物流事業を提供する役務は必要で、無くなりません。例えばアマゾンは物流センターを運営していますが、配送等では物流事業者の力を借りていますね。物流事業の役務だけで生きていけないことはないのですが、問題はそれだけで今後生きていくのかどうかという自身への問いかけですね。

―― これは危機感ということですか。

中谷 おっしゃる通り、まったく危機感しかないですね。野心も何もありません。どうにかしなければならないということで始めたのが、「LOGISTEED」なのです。

<LOGISTEED2021の図>
20200325hitachib21 520x326 - 物流最前線/トップインタビュー 日立物流 中谷康夫社長

<コア領域の強化・新たな成長機会獲得の図>
20200325hitachib22 520x327 - 物流最前線/トップインタビュー 日立物流 中谷康夫社長

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