物流最前線 Top Interview
オペレーション革命を進め
グローバルに飛躍する

2020年03月31日 

協創パートナーとエコシステム(経済圏)拡大

―― 「LOGISTEED」を自社で開発するのは大変なのでは。

中谷 我々はいろいろなパートナーと協創しています。大企業からスタートアップ企業まで様々です。我々は、エコシステム(日立物流経済圏)という見方をしていますが、これは何かというと、現在の日立物流の売上高は7000億円規模です。単純に考えれば7000億円の経済圏です。一方、業務提携で結ばれている企業は例えばSGHが1兆円、近鉄エクスプレス(KWE)が5920億円、これら以外の様々な企業を合わせると5兆円くらいの規模になります。これは大きな意味があるのです。

―― 企業規模の拡大ということですか。

中谷 企業規模の拡大というよりは、あくまでも経済圏の拡大ということです。企業規模の拡大の話はその後に生まれてくるものです。お互いの会社にはサプライヤーもステークホルダーもいます。それら同士がもし結びつけば、もっともっと大きな経済圏になると思います。むしろ、資本でガチガチの関係だと、この経済圏は作りにくくなると思います。

―― 日立物流はセンコン物流とも提携していますが、この間、センコン物流は富士ロジテックHDとも提携しましたが、同じ出資者になりますね。

中谷 そういうことです。今は顔の見えない株主同士ですが、ステークホルダーとしての関係をつうじてつながってくれば、さらに広い関係が生まれてきます。そういう関係を大切にしたいと思っています。我々は自社の足りない機能については貪欲なのです。一方、相手が強い分野においては、相手に委ねることで業績を伸ばしてもらう。エーアイテイー(AIT)のときも、日中間ビジネスでは、AITのほうが当社よりもバイイングパワーが強かった。そこで日新運輸の株式をAITに譲渡したわけです。一方で、AITの株式の20%を持つことで当社のビジネスにも寄与します。例えば、米国でAITがやっていたオペレーションは全て日立物流が担うようになっています。

―― 直近では、日立ライフから梱包・倉庫業の部分を引き継ぎ新会社「日立物流東日本流通サービス」を設立しました。

中谷 これまでは日立が製品を作り、それを日立ライフが梱包して、日立物流に渡すと言う流れでした。これを日立物流に一本化したわけです。一手間が省けますよね。また、パレネットという会社も連結子会社にしています。日立オートモティブシステムズから譲り受けたのですが、自動車部品が動けばパレットも動きますからね。小さくて目立たなくても、日立物流にとって足りないピースは確実に埋めていっています。

―― 一方で、自社事業の底上げのための活動もしていると聞いています。

中谷 実は、「VC21(Value Creation & Change)」という活動を全社でやっています。本格化したのは2016年です。ビジネスコンセプトであるLOGISTEEDを実現していくためには、トップダウンとボトムアップの両方が必要です。そして現場に改善マインドがないと、うまくいきません。きっかけは、あるとき、社長の言っていることがどこまで伝わっているかというアンケート調査でした。社長の言った内容が、例えば上級幹部20人のうち1人が聞き漏らしていると、次のクラスになると75%、さらに次のクラスになると半分、そして一般社員に、と先細って伝わってしまうわけです。

―― 何か工夫しているわけですか。

中谷 これまでのように、会社理念とか、行動指針だけではなく、これに成功要件として「現場力×見える化」を加えました。VC21は、現場力で改善を図る試みで、褒める文化や対話caféなどを取り入れて「わたくしごと化」する、つまり腹落ちした状態で日々の改善を生産性向上につなげるという活動です。発表会等も行っており、社内報でも、さまざまな工夫を凝らした発信を進めています。新年号では、ニューイヤー駅伝とLOGISTEEDの進捗状況を絡めたSNS風のページで発信しています。さらに、漫画などで、より分かりやすく伝えるようにしています。

<統合するときはお互いに世界に飛躍するときと語る中谷社長>
統合するときはお互いに世界に飛躍するときと語る中谷社長

企業統合は世界に大きく飛躍する時

―― さて、2020年の日立物流の方向性は。

中谷 先ほどのエコシステム(経済圏)の続きですが、まずAITについては、日中間フォワーディングについてはさまざまな問題で今年前半くらいは苦戦するはずです。しかし、これが回復した後には、日立物流の現場につないで、シームレスなサービスを目指します。その意味でもAITへの期待は高まります。一方、SGHとは順調に積み上げができていると思います。

―― SGHについては統合時期の話が話題になります。

中谷 SGHと提携したときにお互いのゴールはどこか、確認しあったのですが、それは間違いなく原点はグローバル市場でどう展開していくかと言う点です。日本の市場に留まっていたのでは展望が開けないという危機感を共有しています。日本だけを収益源としている限り、長い目で見ると非常に厳しいということです。1社だけでは力不足なので、その時に統合も1つの選択肢として初めてでてくるのです。

―― 統合ありき、という考えではないと。

中谷 海外に投資するということは中途半端なことはできません。持続的な投資ができるかどうかです。それに耐えられる企業の経営基盤が必要になります。これは日立物流だけでは限界があります。少なくとも年間の営業キャッシュフローが1000億円くらいないと継続的に安定的に海外に投資はできません。今はお互いの経営基盤強化の時なのに、話題がどうしても統合の話に流れますね。まずは、両者で海外において目に見える効果を実現することが先決です。それが確認できてからの話ということになります。

―― 統合形態も色々あると思いますが。

中谷 そうですね。しかしガチガチの統合にはならないと思います。ホールディングスという形もあるでしょうし、先ほどのエコシステムのようにもっと仲間が集まるかもしれません。自分たちもこのグループに入ったら良いと考える企業があれば私たちは拒みません。そのくらい、大きな器をもっていないと、グローバルでは戦えないと思っています。今はお互いのエコシステムを大きくすることに全力を傾ける時期だと思っています。もしかすると、海外のプレイヤーが入ってくるかもしれません。グローバル市場で戦うには、やはり5兆円程度の規模が必要です。

―― 狙いはグローバル市場ということですね。

中谷 日本企業がなかなかグローバル化できないのは1社で頑張ろうとしているからです。SGHとの協業もお互いの本当の目標はグローバル市場なのです。お互いが世界に大きく飛躍しようとする時こそが統合するタイミングではないかと思います。そのときは単純に今のメンバーだけじゃないかもしれませんね。

―― 壮大な計画ですね。

中谷 グローバルベースの会社にしていこうというのはSGHとの最初からの共通コンセプトでしたからね。

―― 今後の動向が楽しみです。さて、このようなことを考えているとストレス等も溜まるのでは。

中谷 週末はいつもゴルフをやっています。スコアは100前後です。一打一打に一喜一憂しながら、さまざまな話をしながら自然の中を歩き、風呂に入り、ビールを飲み、反省会をすることで、胸襟を開いた話し合いになり、長い間話すことで、その人となりをよく理解できますからね。ストレスも消えますね。そのほか、音楽も大好きで、クラシックから数字や坂がつくグループまで何でも聴きます。そのほか、ボールペンやシステム手帳といった文房具に凝っていた時期もあります

―― 最後になりますが、ニューイヤー駅伝残念でした。

中谷 元旦から陸上部を応援することで、社内がまとまりやすいという点はあります。資本提携以前は、SGHだけには負けるな、とハッパをかけていましたが、今は、どっちもがんばれ、と応援しています。両社でワンツーフィニッシュができればこれ以上嬉しいことはありませんね。

<中谷社長>
中谷社長の写真

■プロフィール
日立物流
中谷 康夫(なかたに やすお)氏
1978年(昭和53年) 4月 入社
2006年(平成18年) 4月 執行役 国際営業本部長
2008年(平成20年) 4月 北米代表 日立トランスポートシステム(アメリカ)社長
2012年(平成24年) 4月 執行役専務 グローバル経営戦略室長
2013年(平成25年)4月 代表執行役(現在) 執行役副社長
2013年(平成25年)6月 取締役(現在) 執行役社長(現在)

1978年日立物流入社。20代の多くをアフリカをはじめとした海外での重量品輸送に従事。
国際営業本部長、北米代表、グローバル経営戦略室長等を歴任し、2013年6月代表執行役社長に就任。2019年4月、中期経営計画「LOGISTEED2021」をスタート。

<前へ 1 2 3 4
関連キーワード:

最新ニュース

物流用語集