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物流の読解術 第5回/物流の価値-物流の本質を考える-

2023年07月28日/コラム

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「人と物」の相関性

交通の視点から、「人」と「物」を比較してみると、相関性と転換性という2つの関係が見い出せる。

第1の相関性とは、「人の交通が増える(減る)ことにより、物の輸送需要も増える(減る)、『正比例』の関係」である。

例えば、買い物客が多く集まれば、店舗の販売量も増え商品を運び込む量も増える。また、オフィスに人が多く集まるほど、書類やオフィス用品の搬入する量も多い。このように、「人の集中量」と「物の輸送量」の間には、相関性(正比例)がある。

相関性から考える課題

東京のある高層ビル(床面積約16万㎡、約40階建て)には、1日に乗用車は613台来るが、貨物車は672台である。ちなみに、関東一円に配送している冷凍食品の倉庫の貨物車の発着台数は1日250台前後なので、高層ビルの方が貨物車の到着台数が多いことになる。

もしも、8階建てのビルが40階建の高層ビルに建て替えられると、人も物も5倍集まるかもしれない。このとき、通勤や買い物を始め「人」は電車を利用できるが、オフィスや店舗に搬入する「物(日用品、食料品など)」は、ほぼ100%貨物車で運ばれる。

しかし、建物は高層化できても、道路や街路を2階建てや3階建てにすることは難しい。

よって、都市の高層化が進むほど配送車両も多くなるのだが、貨物車用駐車施設の整備や荷さばき対策は遅れている。

「人と物」の転換性

第2の転換性とは、「物の輸送が増える(減る)ことにより、人の交通が減る(増える)、『反比例』の関係」である。

たとえば、近年では、買い物に出かけるかわりに、商品を配送してもらうネット通販が急増している。このことは、「自ら出かけて、自ら商品を持ち帰る『人の買い物交通』」が減って、「ネットで発注し、自宅への『商品の配送(輸送)』」が増えていることでもある。

このように、「人の買い物交通」と「物の配送」の間には、転換性(反比例)がある。

転換性から考える課題

転換性の象徴でもあるネット通販は 書籍、家電製品、洋服、食事など、さまざまな場面で急成長している。そして、配送も店舗への大量一括配送から、オフィスや住宅への多品種少量の多頻度配送へとなっている。

これにともない使用する輸送手段も、普通トラック、軽貨物車、バイク、自転車、リヤカーなど多様化し、届け方先も店舗や住宅に加えて、駅配(駅の宅配ボックスへの配送)、コンビニ預かりなど、多様になっている。

「転換性」と「相関性」に合わせた物流対策

先ほどの、「流通センター以上にトラックがやってくる高層ビル」や、ネット通販やフードデリバリーの急増を考えてみれば、物流を流通センターや店舗だけで考える時代は、過ぎ去っているように思う。

だからこそ、「相関性(人が集まると物が集まる)」と、「転換性(買い物の代わりに物を運ぶ)」を、再度考え直すことも重要なことだと思うのである。

<人の交通と物の輸送の、相関性(左)と転換性(右)>
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