公正取引委員会は3月15日、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化に関する調査の結果を踏まえ、相当数の取引先について協議を経ない取引価格の据置き等が確認された事業者として、10社の企業名を公表した。
企業名の公表は、2023年5月から実施している特別調査の結果を受けて、取引価格が据え置かれており事業活動への影響が大きい取引先として受注者から多く名前が挙がった発注者を対象に、同年11月以降に実施した個別調査の結果をもとに行ったもの。
公取委では、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、発注者に価格転嫁に向けた積極的な協議を促し、また、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であること等を踏まえ、独占禁止法第43条の規定に基づき、その事業者名を公表することとしている。
今回公表された企業のうち、物流企業はSBSフレック、西濃運輸、日本梱包運輸倉庫の3社。物流業以外では、イオンディライト、京セラ、ソーシン、ダイハツ工業、東邦薬品、PALTAC、三菱ふそうトラック・バスの名前が挙がっている。
なお、公取委は企業名の公表について、独占禁止法または下請法に違反すること、またはそのおそれを認定したものではないとしている。
また、公表された企業については、社内全体に対して価格転嫁を進めるための方針を示していたものの、受注者との窓口となる各担当者への浸透が不十分だった事例や、調査対象期間中に一部の受注者との間で価格転嫁を進めていた事例、調査対象期間後に受注者との間で価格転嫁を行うための協議の場を設けた事例等が確認されたとしている。
公取委は、今回の個別調査の結果も踏まえ、独占禁止法Q&Aの考え方、特に、受注者からの価格転嫁の要請の有無にかかわらず、価格転嫁の必要性について価格交渉の場で明示的に協議する必要があることについて、さらなる周知を行っていくなど、引き続き、取引の公正化をより一層推進する観点から、適正な価格転嫁が可能となる取引環境を整備するための取組を進めていくとしている。
社名が公表されたことに対する物流3社のコメントは以下の通り。
『SBSフレック』
当社は、すべての取引先に対して対等公正な取引関係を構築し、事業目的をともに遂行するパートナーとして互いに発展すべく取り組んでおりますが、今回の件を真摯に受け止め、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分の取引価格への反映の必要性について明示的に協議するとともに、取引先の皆さまとの一層の信頼関係構築に努めてまいる所存です。
『西濃運輸』
当社では、2020年7月に発表した「パートナーシップ構築宣言」の中で価格決定方法について、「下請事業者から協議の申入れがあった場合には協議に応じ、労務費上昇分の影響を考慮するなど下請事業者の適正な利益を含むよう、十分に協議する」とし、専用のホットライン窓口も設置し、対応をしてきました。しかしながら、その対応が十分に浸透できていなかったことを深く反省し、お詫びを申し上げます。今後につきましては、適正な価格転嫁の実現に向けて法令等の周知を社内外に徹底し、公平な取引関係構築の強化をしてまいります。
『日本梱包運輸倉庫』
当社としましては、今回の公正取引委員会のご指摘を真摯に受け止め、今後取引先企業様との価格協議を積極的に進める一方、社内で関係法令を周知させる等の再発防止策に計画的に取り組み、取引先企業様のみならず地域社会の皆様方からも更に信頼される企業を目指して参ります。